ある受験生の話
「数学ビル」は12階立てで、1~6階が小学生、7~9階が中学生、10~12階が高校生の棟です。
とある2月に塾の門を叩いた中学2年生は、4階(四年生)の力しかありませんでした。学校の成績はいつも一桁台前半。
私の塾では、学力ではなく、がんばってみようという気持ちで受け入れを決めますから、無事入塾はできました。
彼は大胆にも、8階(中学2年生)の「連立方程式を解けるようになる」を目標にしました。
4階から8階。開きは4階。つまりは4年分。
4月。中3生になり、ビルの登り降りを繰り返します。
目標はしっかりしています。但し、距離はかなりあるのです。これを達成したら、すごいことです。
7月の夏期講習中。
ところがこの生徒はついに目標を達成します。
私を本当に驚かせたのは、そのあとです。
この少年はそこに安住せず、
それから9階(中学3年生)に登っていきました。
入試直前の1月。
学校で、
定時制高校ですら行けないだろうから通信制の学校に行きなさいといわれていた少年は
今ではどうにか都立高入試の計算問題は解けるようになっていました。
図形や関数は飛ばして、計算に専念させよう、と私は考えました。ここまでできるようになっただけでも、素晴らしい努力だったと思います。
ところがこの生徒は、図形もやりたいというのです。
志望校にした全日制の商業高校に入るには、あと20点(!)は必要だというのがその理由でした。
すでに、2月頭になっていました。
その情熱に打たれたことと、
20点を加えるにはどうしても図形に手を出さないわけにはいかないこと、
その両方があって図形を教えることにしました。
推薦入試は不合格。
あとは、実力勝負に出るしかない。
走りぬいた1月、2月。
3月1日、都立高校一般入試の発表。
合格者に、この生徒の名前が入っていました。
