ちちぶ天狗 -3ページ目

ちちぶ天狗

埼玉県の秩父に天狗がでるそうな

5月25日は、小島の29歳の誕生日だった。

Kちゃんから「嫁に譲りたくないから、誕生日は私に頂戴ね!」と言われていた。

もちろん小島もそのつもりだった。

 

小島はKちゃんから前もって「誕生日にどこか行きたいとこある?」とか「何食べたい?」と聞かれた。

Kちゃんと過ごせるなら、本当にどこでもよかった。

そして、本当に何でもよかった。

だから「お任せで!」とだけ言った。

こういう返答が一番困るのは小島も重々わかっていた。

けれど小島は、Kちゃんが考えるプランを味わいたいという気持ちが強かった。

 

小島の誕生日に2人は、ちょっとお洒落なイタリアンの店に入った。

小島は普段、中華ばかりでイタリアンを食すことがない。

いつも小島が食べたい料理を注文していたのだけれど、この日ばかりはKちゃんに注文を任せた。

そして小島なら絶対注文しない洒落た料理が出てきた。

 

小島は後にこう語っている…

「あの時の料理は、どれもおいしかった!」

 

 

小島は次の日が仕事だったので泊まりができなかった。

なので食事を済ませてから、Kちゃんが運転する車でドライブをした。

行き先もKちゃんに任せていたので、小島はあえて「どこ行くの?」とは聞かなかった。

 

車はどんどん山を上がって行った。

山の頂上まで来るとKちゃんは「着いたよ!」と言った。

 

そこは夜景の綺麗なところで地元のデートスポットであり、霊が出ると有名な場所だった。

小島は1度車で通ったことがあったけれど、立ち寄ったのはこの時が初めてだった。

 

少し歩くと展望台があったので、2人でそこに向かった。

歩いている時に「いるいる」とKちゃんがボソリと言ったので「やっぱりカップル来てる?」と小島が言うと、「いや…霊が…」と返ってきた。

小島は、あえて聞かなかったことにした。

 

展望台に着くと誰もいなくて、小島とKちゃんの2人だけだった。

そこから見える景色はとても綺麗で、2人はしばらく眺めていた。

 

「今見えてる町はどこの町かな!?」

 

「えっ!?やっぱりトシは方向音痴だね(笑)私の住んでる町だよ(笑)」

 

「し、知ってたけどな…」

 

「ハイハイ…

トシ…産まれて来てくれて…私に出逢ってくれてありがとう。

誕生日おめでとう」

 

Kちゃんはそう言って小島にプレゼントを渡した。

 

「ありがと!凄い嬉しいけど…それを態度に出すの凄い苦手(汗)

本気で喜びたいから…家に帰ってから開けていい?」

 

「バカなの!?今すぐ開けて!」

 

「あっ、はい(汗)」

 

小島が箱を丁寧に開けると、Kちゃんが着けているのと同じ『スント』というブランドの時計が入っていた。

小島は、Kちゃんが着けているのを見ていて「カッコいいな!」と思っていたのですごく嬉しかった。

 

「オソロじゃん♪ほんとありがと!」

 

「同じ時計をしてると本当に同じ時間を生きてる気がしない!?

だからトシには絶対この時計をあげたかったの!」

 

「同じ時間ね…Kちゃんが言うと確かにそんな気がしてきたわ!じゃあピッタリ時間合わせようよ!」

 

「え~面倒くさい(笑)」

 

「お前そういうとこあるよ(怒)」

 

「はい出た~お前呼ばわり!罰金1000円ね!」

 

「えっ?いつからそんな法律が(汗)」

 

 

小島は後にこう語っている…

「Kちゃん性格がネジ曲がってるから取扱い説明書が欲しかった(笑)」

 

と言いながらも「幸せな誕生日だった。」とも言っている。

 

そして小島は、今もKちゃんからもらった時計と同じ時計をつけている。

もう4代目になってしまったけれど…

 

 

 

つづく

Kちゃんの誕生日から数日後、小島が「車を買う」と言うと「私も行く!」とKちゃんは言った。

小島は、車にまったく興味ないので、ついてきて来てくれるのはありがたかったし、何よりKちゃんと一緒に選べるのがうれしかった。

 

小島は、お金がないので安い中古車を探しながら2人でドライブをした。

2件目の中古車屋で「18万!」と大きな文字で書かれたシャコタンのオルティアという車があった。

小島は、そのシャコタンのオルティアが気になった。

 

どうして気になったかというと…

まず値段が安い。

そして車内が改造されていて、小島が足を伸ばして寝れるほど後部座席が広かった。

最後に「今時シャコタンってダサい気もするが…俺が乗っていたらオモロイ感じになるかも(笑)」だった。

 

小島がKちゃんに「この車どう?」と聞くと「カーセックス専用車って感じ(笑)」と言った。

「なるほど!そういう使い道もあんのか!?おし!これにしよう!」とわずか10分でシャコタンに決めてしまった。

それから契約をして納期に2週間ほどかかると言われた。

そして小島がKちゃんを家まで送って帰る途中に、こんなことをKちゃんから言われた。

 

「カーセックス出来るからって理由で車選ぶのほんとアホだよね(笑)トシらしいけどさ(笑)

でも私…カーセックスなんてしないよ!」

 

「えっ!?そうなん!?じゃあ何のためにあの車選んだんよ~(汗)」

 

「知らないよ~そんなのぉ~(汗)」

 

小島は後にこう語っている…

「結局…後にその車でカーセックスするんだけど(笑)

したらしたで…ケーちゃんは興奮して凄い乱れっぷりだったけど…それは内緒の話…」

 

 

 

そんなシャコタンのオルティアも納車されて、小島が1人で運転していた時に交通事故に巻き込まれてしまった。

それは小島が信号待ちをしていた時のことだった…

 

「キィーーー」というブレーキ音が聞こえた瞬間、小島は強い衝撃を受けた。

小島はブレーキを踏んでいたけれど、吹っ飛ばされて勢いよく小島の前の車に突っ込んだ。

小島の車は、玉突き事故の真ん中の車になった。

 

小島は、シートベルトをしていなかったのでハンドルに胸を強く打ちつけていた。

胸も痛かったけれど首を一番痛めてしまった。

 

小島は、とりあえず車から降りて、突っ込んでしまった前の車の人の様子を見に行った。

20歳前後の若い男の子2人組で、幸いどこも痛めていないようだったので小島はホッとした。

 

そして小島の車に突っ込んで来た車に駆け寄ると、出てきたのは黒人とアラブ系の間くらいの顔の外人だった。

小島は「うわぁ面倒くせ~」と思った。

そんな嫌な予感を持ちながら話しかけてみると、予感通り「ん?何語?」と思う聞いた事のない言葉で小島に何かを言っている…

 

「これは俺では処理しきれん!」と思った小島は、警察に電話をして、それから保険会社に連絡を取って警察が来るのを待った。

その間にKちゃんにも一応電話を入れておいた。

Kちゃんはビックリして色々言っていたけれど、追突してきた外人がその間も小島にずっと話かけてきたので、Kちゃんに「ゴメン後で連絡する!」と言って電話を切った。

 

小島に話が全く通じていないのに、それでも外人は延々と話し続けた。

小島はイライラしてきて「シャラップ!」と言った。

が、それすら伝わらず、怒っているのか謝ってるのかすらわからない言葉を外人は発し続けた。

 

あまりにしつこいので、小島はジェスチャーを交えながら…

 

小島「youフレンドジャパニーズいる?」

外人「・・・」

小島「youフレンドテレフォン日本語トーク出来る奴いる?」

 

すると黒人が「オォ!」と言って携帯で電話をしはじめた。

「やべ、奇跡的に通じたで!」と玉突きの先頭の若者と喜んでいると、電話をしていた外人が小島に「電話を代われ」とジェスチャーしてきた。

小島が電話を受け取り「もしもし」と言うと、早口で何語だかわからない言葉が聞こえてきた。

「お前もかい!」と小島はツッコんで電話を切った。

 

その後警察が来て、外人はどうやら保険には入っているようで、あとで保険会社の方から電話があると小島は言われた。

そして警察は小島に外人の免許証を見せながら、

「この人…スリランカ人だね。

それで名前は…長いな…

んーと、簡単に言うと…アマラソーリアさんという人ね。」

と教えてくれた。

 

その時、小島はKちゃんの姿を見つけてビックリした。

Kちゃんは、小島の電話で飛んできたのだ。

そしてKちゃんは、とても怒っていた。

 

「事故した奴、どれ!?」

「いや、大丈夫だからさ…それに事故した奴知ってどうすんの?」

「ぶっ飛ばす!!」

「いやいやいやいや(汗)、俺はほんとに大丈夫だからさ、Kちゃんとりあえず落ち着こうか(汗)」

 

と、事故も大変だったけれど、Kちゃんをなだめる方がもっと大変だった。

けれど、そんな強気なKちゃんも小島は好きだった。

 

その後修理に出したシャコタンは、ノーマルの車になって帰って来た。

「この車…ノーマルだとこんなダサかったんだ…」と小島がガッカリしている姿を見てKちゃんは笑っていた。

 

 

 

つづく

4月に入ってすぐにKちゃんの誕生日があった。

小島はプレゼントにウルフマンブラザーズのネックレスを用意していた。

 

その日はKちゃんが買い物したいと言うので群馬県の高崎へ行った。

小島の行きつけのセレクトショップで、お互い似合いそうな服を探しては試着をして楽しんだ。

 

小島は、Kちゃんに一番似合ったデニムのオールインワンを買ってあげた。

そしてオールインワンのポケットに用意していたネックレスをこっそり忍ばせておいた。

 

Kちゃんは「トシにもなにか買ってあげたい」と言ったけれど、小島は「来月は俺の誕生日あるから、そん時に買ってよ!」と断った。

小島は、Kちゃんの毎月の薬代が結構な額だと聞いていたので、出来るだけKちゃんにお金を使わせたくなかったのだ。

 

 

 

その日夜、いつものプレハブのホテルでKちゃんはオールインワンを着て小島に見せてくれた。

小島は、わざとブカブカのサイズ選んだのだけれど、すごい似合っていて可愛いと思った。

そして小島は、ポケットに忍ばせていたネックレスにいつ気づくかワクワク、ドキドキしていたのだけれど、Kちゃんはポケットに手を入れないので一向に気が付かない。

 

「ぴったりの服ならポケットに何か入っていたら違和感があってわかるけど…ブカブカだから全く気づかないのか?そういえば女の子は普段ポケットに手を入れて歩いたりしないか…全然ポケットに手を入れようとしないな…」

 

そんなことを考えているうちにしびれを切らした小島は、携帯でKちゃんの写真を撮りながらカメラマン風に「いいよ!もう一回笑顔頂戴!すごくいいよ!じゃあ次はポケットに手を入れてみようか!?」と小芝居を演じた。

そこでKちゃんは、やっとポケットに何かあることに気が付いた。

 

Kちゃんは、ポケットからネックレスを取り出して小島からのプレゼントだとわかると、まるでおもちゃを買ってもらった子供のようにはしゃいで小島に抱きついてきた。

Kちゃんの喜ぶ顔を見たら小島も嬉しくなった。

 

小島は喜び方が上手ではない。

心ではすごく喜んでいても、それを言葉や表情に出すのがとても苦手だった。

だからKちゃんの溢れんばかりの喜び方を見て「プレゼントって、俺はもらうより、あげるほうが好きなんだ!」と思った。

 

そして大好きな人の喜んでいる姿を見て、小島は言葉にできない幸せを感じていた。

 

 

 

つづく

「私にとってセックスは命を削る行為なの…」

その言葉通り、セックスしたあとのKちゃんは全身の力が抜けてグッタリしてしまった。

しばらく1人では起き上がる事も出来ない状態だった…

 

「…大丈夫?」 

 

「うん。大丈夫だよ。」

 

「起き上がる?」

 

「もう少し…このままで…今、とっても幸せな気分だから…」

 

 

 

それから2人は、月に2~3回ペースで会っていたけれど、小島はKちゃんの体の事を考えて月に1回しかセックスはしなかった。

 

3月28日に2人は久しぶりに昼間からデートをした。

小島が「どこに行きたい?」と聞くと「桜が見たい!」とKちゃん言ったので、地元にある青雲寺の日本最古とも言われている しだれ桜を観に行くことになった。

 

2人は星雲寺をゆっくりと歩いた。

Kちゃんは、以前交通事故で左半身麻痺になっている。

リハビリのおかげで麻痺はなくなったけれど、少し左足を引きずる歩き方になっていた。

なので普通の人のように早く歩けない。

 

小島は、もちろんKちゃんのペースでゆっくり歩く。

Kちゃんは、いつも「ごめんね…私こんなんで…」と謝った。

そんな時は「なんで謝るの!?Kちゃん何も悪くないじゃん。なんかゆっくり歩く方が時がゆっくり流れてる感じしてお得感ない!?てか今度足の事で謝ったら罰ゲームね!」と小島は言った。

 

その日は天気の良い休日だったこともあって観光客がたくさんいた。

桜もほぼ満開でちょうどいい日に来たと2人で喜んだ。

そして樹齢600年のしだれ桜の下のベンチに座った。

 

「トシが言ってた通りで凄いしだれ桜だね~、他の桜とオーラが違う…見れて良かった。連れてきてくれてありがとね。」

 

「この桜…好きで今まで何回も観に来てるけど…今年は特別だな!」

 

「なんで?」

 

「隣にKちゃんがいるから!」

 

「言うと思った(笑)」

 

「…なんか…ムカつく…」

 

「うそだよ。 

…また観にこれるかな~」

 

小島は、その後しばらく黙って桜を見上げていた。

その時、小島は自分でも何であんな行動を取ったかわからなかったけれど、ベンチから立ち上がり、しだれ桜の真下に行って福山雅治の『桜坂』を歌い出した。

 

小島は歌が上手いわけではない。

どちらかと言うと音痴の部類に入ると自分で思っていた。

周りには観光客もたくさんいて、「あの人どうしたの?」「ウケる!」といった声が小島の耳にも入ってきて心が折れそうになった。

けれど小島は、最後まで一生懸命歌い切った。

そんな小島をKちゃんは、目をそらさず見ていた。

 

歌い終わった小島は、顔から火が出るほどの恥ずかしさが込み上げてきて「俺はいったい何がしたかったのか?」とわけがわからなかった。

ベンチに座って聞いていたKちゃんが、小島の方に歩いて来て…

小島を抱きしめて「ありがと…」と言った。

そして帰りに出店で焼きまんじゅうを買って帰った。

 

小島の運転でKちゃんを家まで送って帰る途中、Kちゃんが「ところで…なんで急に歌いだしたん?」と聞いてきた。

小島は「あれからずっと考えてるんだけど…なんで歌ったのか…わからないんだよね…」

 

しばらくの無言の後…

2人同じタイミングで吹き出して笑った。

 

 

 

つづく

2人が会える日は決まっていて、小島の奥さんのナツが週1回の夜勤の日だった。

 

そんな中、Kちゃんから「チョコケーキ作るからバレンタインデーに会える?」とメールが来た。

小島は急いでナツの出勤表を確認してみると、ナツの夜勤の日ではなかった。

 

小島の職場は地元のガソリンスタンドなので出張はない。

社員旅行、自衛隊時代の同期会等々、色々な方法で2月14日の日に泊まれないかを考えたけれど、どれもすぐバレてしまうことばかりだった。

 

小島は、泣く泣くお断りのメールを送った。

「ごめん…その日は無理なんだよね…他の日だったらいつ会えそう?」

するとKちゃんから「私の作るチョコケーキは2月15日になると消えて無くなってしまうのです。嫁さんにチョコもらって食べればいいよ!トシは。」と意地悪なメールが送られてきた。

 

そんなことがあって2月13日に妹的存在のミズエが小島の家に来た。

バレンタインなので大きなチョコホールケーキを作って持ってきてくれたのだ。

「彼氏のために作ったんだけど…失敗しちゃって(汗)お兄ちゃんにお裾分けね!」という余計なひと言付きで。

 

しばらく小島とミズエが話をしていると、仕事に行っているナツから電話がかかってきた。

「今日夜勤の人が体調悪くて帰っちゃったから代わりに今日夜勤になった」という内容だった。

 

小島は「そっか、そりゃ大変だな…お前も体調崩さないように気を付けてな!」と心配している旦那を装っていたけれど、心の中ではガッツポーズが止まらなかった。

 

小島は、すぐさまKちゃんに電話をかけた。

Kちゃんは「急すぎてケーキは作れない…」と言ったけれど、小島は正直ケーキなんてあってもなくても構わなかった。

ただただKちゃんに会いたかった。

 

小島は、こうしちゃいられないとミズエに事情を説明して「さっさと帰れ~」と追い返した。

ミズエはプンプン怒っていたけれど、小島が「今度Kちゃんに会わせてやっから」と言うと「やったぁ~カラオケ行こ~♪」と喜んだ。

が、この時約束したカラオケでKちゃんがブチ切れすることになるのだけれど、この時の小島はまだ知るよしもなかった。

 

 

それから小島は、お泊まりの準備をしてKちゃんを迎えに行った。

泊まりということで、コンビニでお酒やお菓子を買って前に行ったプレハブ型のホテルへと向かった。

 

小島は、Kちゃんがお酒を飲めなことをホテルに入ってから聞かされた。

その時に運動だけでなく、アルコールが入っても命が危険になる病気だと知った。

 

Kちゃんから「トシは遠慮しないで飲んでね!」なんて言われても小島はとても飲む気にはなれなかった。

だから「1人で飲んでもつまらんし酒はもって帰る」と言うと…

「そっか!でも飲むか、飲まないかは、これを見てから決めて!」と言って、Kちゃんは持ってきたバックを手に取り風呂場へ消えて行った。

 

しばらくして戻って来たKちゃんは「ジャーン!」と言ってキャバクラで着ているドレス姿で現れた。

小島がソファーで呆気にとられていると、名刺を差し出して「Kです。」と言って小島の隣に座った。

 

「お客さん何にしますか?」と完全にキャバクラコントに入っているKちゃん。

「お姉さん…綺麗だね。ドレスも似合ってるよ!」と乗ってあげる小島。

 

1時間ほど、そのキャバクラコントは続いた。

Kちゃんはケーキを作る時間がなかったので、高級そうなチョコレートを持ってきていて、コント中に自然な流れで小島はそれを頂いた。

 

夜も更けてきて「そろそろ風呂に入ろうか」という話になった。

一緒に入るか、別で入るかで2人の意見が別れた。

結果、小島の意見の別々で入ることになった。

 

小島は後にこう語っている…

「なぜ別々か?って…そりゃ恥ずかしかったから(*/∀\*)」

 

小島が先に入り、浴衣でソファーに座ってKちゃんが風呂からあがってくるのを待った。

小島は、たばこを吸って気持ちを落ち着かせようとしていたけれど、心臓がずっとバクバクしていた。

 

小島は後にこう語っている…

「後々…この時なんでこんな緊張したかを考えたが…

初めてだったのかもしれない…本気で好きな人とセックスをするのは…

以前大好きだったアイとは結局セックスはしなかったし…

なので…初体験のようなドキドキで…たばこを日本最速のスピードで吸い切っては…また火を付けを繰り返してた(笑)」

 

シャワーの音が止まって扉の開いた音が聞こえた。

体を拭いているのかしばらく音がしなかった。

それからドライヤーの音が聞こえた…

 

小島の息子は、腹にめり込むくらいギンギンに勃起していた。

そして小島の頭の中には、「落ち着け!息子よ!落ち着け!」と言い聞かせている自分と、その横で「立つんだ~ジョー」と叫んでいる丹下団平がいた。

 

小島がそんな1人コントを頭の中でやっていると「ガチャ」とドアが開いて、Kちゃんが浴衣姿で顔を隠しながらあらわれた。

そして「からだ見られるより…スッピン見られる事の方が緊張する」とブツブツ言いながら小島の隣に座った。

 

小島は、顔を隠しているKちゃんの手をゆっくりほどいて顔を見た。

小島は「化粧しているときより可愛い…」と思ってしまった。

それを正直に女性に言っていいものか小島が迷っていると、その間に耐えきれなくなったKちゃんが「なんか言え~」と軽くビンタをされた。

 

「俺はスッピンの顔の方が好きだよ」と小島は正直に言った。

 

「キャー恥ずかしい!!」と照れるKちゃんが可愛くてたまらなくなった小島は、Kちゃんをお姫さま抱っこしてベットまで連れていった。

 

2人が布団に入って抱き合っていると「さっきから固いものが当たるんですけど…見てきていい?」とKちゃんは言った。

そしてKちゃんは、布団の中にもぐって小島の浴衣がまくられた。

Kちゃんは、すぐにごそごそと戻ってきて「今まで粗チンと言って…ごめんなさい。」と謝った。

 

そして小島もKちゃんの浴衣を脱がせた。

Kちゃんの大きなおっぱいが現れると「今まで…貧乳って言ってごめんなさい」と小島も謝った。

 

小島にとって、こんなに幸せなセックスをしたのは初めてだった。

 

 

 

つづく

小島はKちゃんから1月7日までは連絡が取れないと言れていた。

ところが1月2日にKちゃんから電話がかかってきた。

「トシに会いたくて…いてもたってもいられなくて…だから帰って来ちゃった…明日とか会えないかな?」とKちゃんは言った。

小島は喜んだ。

 

そして2人は、1月3日に2度目の時を過ごした。

その日は、小島にとって特別な日になった。

 

小島はその日、仕事が休みだったので昼間から会うことになった。

けれど2人は、どこへ行くかで揉めた。

 

その理由は、小島が「じゃあ、○○へ行く?」と提案すると、Kちゃんが「そこは彼氏の友達がよく行ってるから危険だな…」というやり取りを何度も繰り返したからだ。

小島はいくつも提案するけど、どこも危険と言われて「じゃあ行くとこないじゃん!そんなに会うの怖いのなら今日だって会わなきゃよかったじゃん!」とふて腐れた。

Kちゃんは、それに対して「ごめん(汗)トシと2人になりたいの!だから彼氏の友達が居そうな所だと…気が散っちゃうからさ(汗)怒んないで…じゃあホテルに行こ!?」と言った。

 

いつもの小島ならKちゃんの提案は喜ばしい事なのだけれど、この時ばかりは悩んだ。

なぜならKちゃんは、走るだけでも命にかかわる病気を抱えているからだ。

だから小島はホテルへ行ってもセックスが出来から意味ないと思った。

何よりホテルで2人きりになって我慢出来る自信が小島にはなかった…

そして小島が我慢出来なくなった時、それはKちゃんの命にかかわる…

 

とはいえ、他に行くところもないので、結局ホテルに行くことになった。

コンビニで飲み物を買って、プレハブ型のホテルに入った。

そのホテルには、こたつがあってテーブルの上にはミカンが置いてあった。

小島が「なんか落ち着くなこの部屋(笑)」と言うと、Kちゃんが「田舎ならではだね(笑)」と言って2人でこたつに入った。

 

小島はこの日、今の正直な気持ちをKちゃんに伝えようと決めていた。

そして、そのタイミングを見計らっていた。

しばらく取り留めのない話をしているとKちゃんが「もっとそっち行っていい?」と言って小島が抱っこする形になった。

 

小島はドキドキした。

Kちゃんのシャンプーの香りだろうか…すごくいい匂いに小島のドキドキはさらに高まった。

そんなドキドキしている小島にKちゃんが「いい背もたれが出来た!」と言って小島に体重をかけてきた。

 

もはやどう振舞っていいかわからなくなった小島は、とりあえずこたつのミカンに手を伸ばそうとした時…

突然Kちゃんが「トシ…ごめん。私、トシの事好きになっちゃった…」と言った。

 

「えっ、ちょっと待った(汗)

え~、このせっかち女が(汗)

言うの早ぇ~よ(汗)

俺が先に言おうとしてたのに!」

 

「そうなん!?じゃあ早く言ってよ!」

 

「え~ムードが…」

 

大きな声で笑うKちゃん。

 

「んーと…俺は結婚してるから…言うべきじゃないと思うんだけど…

Kちゃんを好きな気持ちが止められません。どうしたらいいでしょうか!?」

 

「私さ…学生の頃からほんと男選び下手でさ~ヤり目の男ばっかり近寄って来てたんだよね…

それで、ヤったらポイされて、本気で好きだなって思ってた人はネズミ講の幹部でさ…

騙されて300万円借金背負わされて、その頃事故で左半身マヒになっちゃって…

絶望してるときに今の彼氏に出会ったの。

病院で知り合ったんだけど…彼氏、会社の機械に指挟まれて指を3本切断しちゃってたのね。

お互いリハビリで励ましあってる間に付き合う事になって、初めてまともな男だったんだよ。

優しいし、9年経つけど、今でも変わらず私を好きでいてくれる。

とってもいい人で、あの人居なかったら私、とっくに死んでたと思う。

凄い大事な人なの…でもね…でもトシは今まであった人と全然ちがうの…

うまく説明出来ないけど…日を追うごとに好きと言う気持ちが強くなって…

トシの言葉を借りると好きと言う気持ちが止まらないの!ほんとにどうしたらいいんだろうね…」

 

「・・・」

 

しばらく2人とも無言だった。

 

小島が黙っていたのは、嬉しすぎて泣きそうだったからだ。

 

Kちゃんが「ん?今なに考えてるの?」と聞いてきた。

 

「何も…ただ我慢してるだけ!」

 

「ん?我慢?何を我慢してるの?」

 

「キスを…」

 

「なんで我慢してるの!?」と言ってKちゃんからキスをしてきた。

 

そして「ごめ~ん、我慢出来なかった~(笑)」と言っていつもの大きな声で笑った。

 

そして、どれくらいかわからないほど2人は何もせず、ただ抱きしめ合った。

小島は「抱き合うだけで、こんなにも人は幸せな気分になれるんだ…」と思った。

そして「今の自分の世界を全て捨てて…Kちゃんと2人で生きてみたい…」とさえ思った。

 

小島はKちゃんを家に送る車の中で、ずっと気になっていたけれど聞けなかった事を聞いてみた。

それは「Kちゃん身体はセックスは出来るの?」という質問だったのだけれど、たとえセックス出来ないと言われても小島は平気だと思っていた。

なぜかと言うと、今日ホテルで抱き合ってキスをしただけで味わえたあの幸せな感情があれば十分だと感じたからだ。

だから小島はKちゃんに聞くことができた。

 

「ちょっと言いずらいんだけど…聞いていい?」

 

「何?」

 

「Kちゃんの身体はセックス出来るの?」

 

「うん。出来るよ。」

 

「そっか…ん!?出来るんかい!」

 

「あー話してなかったね(笑)

でも正確にはトシとなら出来るよ!だね。」

 

「俺とならってどういうこと?」

 

「私にとってセックスは命を削る行為なの…だから彼氏とも5年はしてないよ。

でもトシになら命削られてもいいかなって思えるからさ。」

 

「あの~逆に凄い手が出しづらいんですけど~」

 

「あっ(怒)!ヤりたくないの!?」

 

「いえ(汗)ヤりたいです。すごく…」

 

「素直でよろしい(笑)

次、会うときが楽しみだね♡トシ♡」

 

小島28歳、1月3日の出来事だった。

 

 

 

つづく

2人は駐車場が見える窓際の席に座った。

小島がKちゃんにメニュー渡すと、Kちゃんはメニューの向きを反転させて、

「私、病気のせいであまり食べれないのね。

だからトシが食べたい1番と2番を注文して。

ちょっとずつもらって食べるから!」

と言った。

 

そして料理が届くと分け合いながら食べた。

2人が何気に外の駐車場を見ていると、1台の車がバックで出ようとしている所だった。

小島が「あっ!ぶつかりそう!」と思った瞬間、バックしていた車が別の車のフロントに勢いよくぶつかった。

 

小島が「あ~あ~」と言いながら、どんな奴が降りてくるんだろ?と思って見ていると、ぶつけた車はアクセルを踏んで逃げてしまった。

 

するとKちゃんが、テーブルの上に置いていたアンケート用紙とエンピツを持って急いで何やら書き出した。

書き終わると、その紙を小島に渡して「今逃げて行った車のナンバーをメモったよ!」と言った。

「えっ、あの一瞬で記憶したの?スゲー!Kちゃんお手柄だね!ちょっと行ってくるわ!」と言って小島は駐車場へ向かった。

 

ぶつけられた車の持ち主は気づいていないようで、駐車場には現れなかった。

なので小島は店員を呼んで事故の説明をして持ち主を探してもらった。

 

ぶつけられた車の持ち主は20代前半の若い女の子で、かなりへ込んでいる車を見てショックを受けていた。

小島は女の子に「一緒の連れがナンバーメモったんで、警察に被害届け出せばすぐ捕まると思うよ!」と言ってメモを渡した。

それから小島は、前もって買っておいたKちゃんへのクリスマスプレゼントを自分の車に取りに行ってから店内へ戻った。

 

小島は、Kちゃんにプレゼントが見つからないように席に着いて渡すタイミングを見計らった。

そして「ここだ!」というタイミングでKちゃんにプレゼントを差し出した時…

「先ほどはどうもありがとうございましたm(__)m」と車をぶつけられた女の子がお礼に来た。

 

流れを遮られた小島は、プレゼントを持った手をとりあえず引っ込めた。

その一瞬で状況を把握したKちゃんは、小島の間の悪さがツボだったようで、笑いながら女の子に「いえいえ(笑)大丈夫ですよ(笑)」と言った。

女の子は、2人に何度も頭を下げながら立ち去った。

 

しばらく笑っていたKちゃんが少し落ち着くと、

「どうする?さっきのは見なかった事にした方がいい?(笑)」と言ってきた。

小島は「いいよ(笑)渡すタイミング失敗したけど…はい!クリスマスプレゼント!」と言って渡した。

 

プレゼントを受け取ったKちゃんの第一声は「ごめん…」だった。

小島は「やっぱりプレゼントとかは彼氏がいるから受け取れないか…」と思っていたら、

「ごめん…私、何も買ってきてない!」だった。

小島は少しホッとして「そんなん気にしなくていいよ(笑)俺があげたいと思ったから買ってきただけだからさ!」と言った。

 

「開けていい?」

 

「うん。どうぞ」

 

「ん?キーホルダー?何で2つ?」

 

「俺も同じキーホルダー持ってんのよ!あんまりお揃いのとかって今まで持ったことないんだけど、よくわからないけど、ケーちゃんとは一緒の使いたいって思ったんよ。

ん~、ほんとなんで2つなんだろ(笑)」

 

「ありがと…嬉しい…ほんと嬉しい。大事にするね!」とKちゃんは喜んだ。

 

店を出てからも2人は、小島のオンボロ車の中でKちゃんの帰る時間まで尽きることなく話をした。

小島は、その時にKちゃんから「明日から年が明けて7日までは彼氏の家にいるから、メールも電話も出来ない…」と言われたのがショックだった。

 

2人が初めて会った日、12月25日は、小島がKちゃんを好きになった日になった。

 

それはKちゃんも同じだった。

 

 

 

つづく

小島は、12月23日に都内に行く予定があった。

Kちゃんと会う日が25日のクリスマスだったので、都内に行ったときにプレゼントも買うことにした。

 

小島の好きなウルフマンブラザーズというブランドのキーホルダーを、自分のとKちゃんのをお揃いで購入した。

↑ウルフマンブラザーズ キーホルダー

 

その後、小島はバウンティーハンターというブランドのパーカーを買いにショップに寄った。

その店にバウンティーのキャラクターキーホルダーが800円で売っていたので、それも5つ買った。

↑バウンティー キーホルダー

 

このキャラクターキーホルダーは、お土産感覚として買った物で、Kちゃんや、その頃遊んでいた高校生のミズエにもあげるつもりでいた。

 

ミズエは、小島とエッチなチィちゃんの関係が終わった翌日に小島に接近してきた女の子だ。

ミズエとチィちゃんは友達で、ミズエは小島に近づくチャンスをずっと狙っていた。

というのも、ミズエの近くには、好きな所に連れて行ってくれて、お金もだしてくれる人がいなかったからだ。

チィちゃんから小島の話を事あるごとに聞かされて羨ましいと思っていたのだ。

そのことをミズエは正直に小島に打ち明けて仲良く遊ぶようになった。

ただチィちゃんとは違って、体の関係は無いお兄ちゃんと妹みたいな関係で楽しく過ごしていた。

 

そんなミズエにあげたキーホルダーが、後々、Kちゃんをブチ切れさせる引き金になるのだけれど、この時の小島はそんなことになるとは思いもしなかった。

 

 

 

話を戻して、12月25日…

 

Kちゃんが住んでいる町と小島の住む町は、車で1時間半くらいかかる。

なので、中間くらいの距離にあるファミレスで会うことになった。

 

その当時の小島は、亡くなった近所に住んでいたおじいさんがのオンボロの車をもらって乗っていた。

小島は、車に全く興味がない人で「乗れれば車なんてなんでもいいや!」と思って乗っていたのだけれど、Kちゃんと会う日は、オンボロの車で会いに行くのが恥ずかしいと思った。

「今、車検に出してて~」とか「今修理に出してて~」など「この車は俺のじゃないよ」という事にしようかと迷ったけれど、結局正直に「俺の車です」と言うことした。

 

小島は、ファミレスの駐車場に着くと、Kちゃんが乗っていると言っていたモビリオの車を探した。

モビリオは1台しか停まっていなかったので、「これかな?」と思って、その車の横に自分の車を停めた。

小島がチラッと横を見ると、隣のモビリオからKちゃんらしき女性がこっちを見ていた。

 

それと同時に小島にメールが届いた。

「隣に今来たのはトシ?」

小島が「そだよ!」と返信すると…

「緊張し過ぎて体調悪い…帰っていい?」と来たので…

「大丈夫!俺も緊張でウンコ漏らしてるから!」と返した。

そのメールを見たKちゃんは、車の中で手を叩いて笑っていた。

 

そんなやり取りをした後、やっと2人は車を降りて初めてのご対面となった。

小島は、会う前に自分なりのKちゃんの顔をなんとなくイメージしていた。

電話でたまに出た汚い言葉遣いや元ヤンキーという情報からキツめの顔をイメージしていたのだけれど全然違った。

特にKちゃんの目の優しさが印象的だった。

 

Kちゃんが小島を見た第一声は「トシ思ってたよりなんかデカイ(汗)」だった。

それに対して小島は自分の股間を触り「えっ!?ズボンの上からでもわかっちゃう!?」とボケると、静かな駐車場にKちゃんの大きな笑い声が響いた。

 

Kちゃんが「いやいや(汗)顔がデカイって言ったの(笑)」と笑いながら言うので、小島は「第一声が顔デカイって失礼じゃない?(笑)」とツッコむと、Kちゃんはまた大きな声で笑った。

 

そして2人は、ようやく店の中に入った。

 

 

 

つづく

小島は、Kちゃんから電話番号とメールアドレスを教えてもらった。

そして何回か自己紹介程度の会話をメールでした後に電話で話すことになった。

 

小島から電話をしようと思っていたのに、せっかちな性格のKちゃんが先に電話をかけてきた。

小島が「電話代は俺が持つよ!」と言ってすぐにKちゃんにかけ直した。

 

2人にとって初電話は、あまりに楽しくて3時間話した。

そこでわかったKちゃんの情報は…

 

・小島より2つ歳上の30歳

・9年付き合っている彼氏がいる

・今までいろんな業種で働いてきたけれど、今はキャバクラで働いている

 

小島も2年前に結婚して嫁と2人で暮らしているということ、そしてガソリンスタンドで働いていることなどを正直に伝えた。

するとKちゃんから「お互い相手いるんじゃ会ったりしたらダメだね~てか…休みの日は彼氏ん家にいるからどっちにしろ会えないんだけどね!」と言われた。

 

Kちゃんは、モバゲーで出会いを求めていなかったし、そもそも彼氏とも仲がよかったので求める必要もなかった。

モバゲーでは、自分が調べたことや勉強したことを日記を通して人に伝えているだけだった。

そんなKちゃんが2年ほどモバゲーをやってきて、はじめて連絡先を教えた男が小島だった。

 

電話は、とにかく話が盛り上がった。

漫画のワンピースがお互い好きで「自分が悪魔の実を食べるとしたら何の実がいい?」の話題では特に盛り上がった。

元ヤンキーだったKちゃんは、会話が盛り上がってくると、ちょいちょい言葉使いが汚くなる。

小島がそれを指摘すると「うっせーな粗チンがよ~(怒)」と小島の事を粗末なチンコ呼ばわりする。

小島も負けじと「だまれ貧乳!」と言い返す。

けれど本気の喧嘩ではなく、お互いぶざけてディスりあっていた。

そのやり取りが小島にとって、すごく楽しかった。

 

Kちゃんは、自分が幼い時から病気を抱えていることも小島に伝えた。

小島は、病気について詳しくなかったので細かく聞いてみた。

けれど小難しい話が苦手な小島は、細かい症状を1度聞いただけではほとんど理解出来なかった。

それでもKちゃんが言った「一生走れない体」という言葉を聞いて、「走ったりするだけで死んでしまうかもしれない大変な病気を抱えているんだ…」ということはわかった。

 

小島は、気取らず何でも話してくれて、会話のリズムも合うKちゃんと話しているうちに会ってみたい気持ちが強くなっていった。

そして思い切って「1度会って食事をしよう!」と提案した。

「会ったりしたらダメだね~どっちにしろ会えないんだけどね!」と言っていたKちゃんも、3時間もしないうちに小島と会ってみたい気持ちの方が大きくなっていた。

 

そしてKちゃんは、12月26日~1月7日までは彼氏の家に行く予定となっていたので、12月25日のクリスマスに2人は会う約束をした。

 

 

 

つづく

小島は28歳の12月8日に、Kちゃんという女性と知り合った。

 

きっかけは2か月前に別れたエッチな高校生のチィちゃんだった。

モバゲーというアプリに日記を書けるコーナーがあったのだけれど、チィちゃんは、その日記コーナーではちょっとした有名人で、たくさんフォロワーもついていた。

なぜチィちゃんが人気だったかというと、高校生なのに自分のおっぱい写真も一緒に投稿していたからだ。

 

そんなチィちゃんから「トシくんの話面白いから、モバゲーの日記で書いてよ!」と言われていた。

なので、小島は何となく日記を書いていた。

 

ある日、小島はこんな日記を書いた…

 

「大事にしていたジーンズがとうとう破れてしまい…

履ける状態ではないので、いよいよジーンズともお別れをしますが…

ほんとに世話になったので家の庭に埋めて…ジーンズの墓を作った!」

 

そして埋めたジーンズの写真も一緒に投稿したところ…

 

「リーバイス66モデルの前期じゃないですか!?

そのジーンズいい色落ちしてますね!

大事にしてた気持ちわかります。

でもそれだけ大事に思われて、履き潰してもらえたので…ジーンズも喜んでいますよ!」

 

とコメントをしてきたのがKちゃんだった。

 

小島は、女の人には珍しくジーンズに詳しいので、そのコメントにビックリした。

そして小島も気に入っていた色落ちを褒められたので、Kちゃんに対して良い印象を持った。

なので小島は、Kちゃんの日記も読んでみた。

 

Kちゃんは「戦争の悲惨さ」「原爆の怖さ」「犬の殺処分」等々を自分で調べて勉強して、少しでも多くの人に知ってもらう活動をしていた。

 

小島は、動物のことを書いていたKちゃんの日記を読んで、昔飼っていたポピーのことを書きたくなった。

そしてこんな日記を投稿した…

 

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俺が産まれた5月25日。

ちょうど同じ日に我が家で飼っていたシェパードのウイリーが仔犬を産みました。

何匹か産まれたけど一匹だけを残して他の家にあげちゃったと言っていました。

その一匹の仔犬の名を「ポピー」と名付けました。

なので…ポピーと俺は同じ日に産まれた兄弟みたいなもんです。

 

シェパードは頭も良く、体長も大きな犬の種類ですが…

他のシェパードに比べてもポピーは異常なほど大きかった。

なので、親父が作った檻も8畳ほどのものだった。

 

小学生になる前からポピーの世話は俺が担当で毎日の餌やりに、休みの日には檻の掃除も欠かさなかったし、ポピーの身体もよく洗ってあげてた!

とにかく利口で俺が学校から帰宅中に匂いでわかるのか?

自分で織を開けて俺を必ず迎えに来るそして自ら檻に入る!

(ただし鍵はかけることは出来ない)

家族には絶対吠えないが、知らない人が家に訪れる時は「ポピー」と家族の誰かが言うまでは吠え続ける!

 

そんな利口なポピーが1度だけ俺に吠えた事がある。

俺が覆面レスラーのマスクを被って急に檻の前に行ったときだけは吠えた。

俺がマスクを取り「ポピー俺でした(笑)」と言うと…申し訳なさそうに「クゥーン」と鳴いた!

 

俺とポピーはいつも一緒だった。

家に帰ると飯の時間までポピーと話すのが日課だったし、学校では一度に泣いた事がなく、威張っていた俺も…家で親父に殴られたりして泣いているとき慰めてくれるのはポピーだった。

 

俺が中学生になった頃にはポピーはだいぶ弱ってしまって、歩くのも困難になった。

さらに緑内障で目が見えなくなった。

 

その頃から、夜になると…痛いのか寂しいのか毎夜鳴く事が多くなった。

俺が檻に入ってポピーの体を撫でてあげると泣き止んだ。

もう長くは生きれないのはわかっていた。

だからせめてポピーが苦しまないよう、寂しくないように、俺は毎日ポピーの側にいた。

「ポピー痛いとこないか?大丈夫!俺が最後まで側にいるからなぁ!必ず看取るからなぁ!」って声をかけ続けた。

 

俺が中2の6月26日の朝、母に起こされたが…母は泣いていた。

「ポビーが呼んでも動かないの…もうポピーダメかもしれない」と。

俺は飛び起きてポピーの元に行った!

「ポピー」俺が声をかけると「グ…クゥーン」と反応した。

だが…一生懸命立とうするが立ち上がることも出来ない。

目も見えないで俺を探すが見つける事が出来ない感じだった。

いよいよかと胸が苦しくなった。

 

その日は野球大会の準決勝、決勝だった。

俺は親に休んでポピーの側にいると告げたが、チームのみんなに迷惑がかかるからと試合に行ってきなと言われた!

俺は檻に入りポピーの背中をさすりながら「すぐ帰って来るからなポピーそれまで絶対死ぬんじゃねぇぞ」そう言うと「クゥーーン」と鳴いた。

俺には行ってらっしゃいに聞こえた!

 

試合中に母が応援に来ているのに気付いて近寄ると母は「トシが学校向かってすぐ息引き取ったよ…ポピー死んじゃったよ…」と言いながら泣いていた。

家に帰ってポピーの檻にはもうポピーはいなかった。

俺は檻の中に入って叫ぶように泣いた。

 

「ごめん…ごめんポピー…ずっと側にいるって言ったのに…ごめん…寂しい思いさせてごめん…いつも一緒にいてくれてありがと…

俺の事好きになってくれてありがと…俺も大好きだったよポピー…

最後のクゥーンは行ってらっしゃいじゃなくサヨナラだったんだね…

いつかはこうなる日が来るのはわかってたけど…

でも、それでも寂しいよ…ポピーいないの嫌だよ俺…」

 

檻の中でいつまでも泣いてる俺を姉ちゃんが迎えに来て、姉ちゃんと抱き合ってまた泣いた。

 

ポピーそっちでは昔みたいに走りまわってるかい?

目は見えているかい?

俺の事…覚えていてくれるかい?

俺もだいぶ変わってしまったけど、それでも俺が死んだら迷わず迎えに来てくれるかい?

ポピー…今でもお前に会いたいよ。話す事が山ほどあるんだ!

 

あれから一度もペットを飼えない。

ポピーが大好き過ぎて…別れが辛すぎて…

 

ポピー 今でも変わらずお前の事が大好きだよ。

 

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日記を投稿するとKちゃんから「泣いちゃった。素敵な日記です。」とコメントが届いた。

 

小島とKちゃんは、それからも日記のコメント欄でやり取りを何回か繰り返した。

短いやり取りの中に、小島には言葉では表しにくい何かをKちゃんに感じていた。

そして小島は、思いきってKちゃんの連絡先を聞いた。

 

 

 

つづく