親父の勲章 最終話
彼にとって親父さんのようになってしまうのが人生最低で最悪のことだったのです。
それが彼の心の中でまるで“おばけ屋敷”のように恐怖の象徴になっていました。
(このおばけ屋敷をなんとかしないと...)
「少し親父さんのことを考えてみましょうか?」
「何だかイヤな感じがします。親父のことを考えると同じようになってしまいそうで」
「でも、親父さんを理解することで今の状況を抜けることができるとしたらどうでしょうか?」
「私もそんな感じがしてきました。親父を理解することが必要かもしれない...」
「では、イメージを使って親父さんを理解してみましょうか?」
「えっ、イメージを使うんですか? そんなことできるんですか?」
「出来ますよ。ここには親父さんはいませんから、貴方の記憶とイメージを使うんです」
「たしかに親父はここにはいませんもんね(笑)」
「では、軽く目を閉じて... 深呼吸をして... リラックスして... 親父さんの若いころをイメージしてください。貴方が小さかったころの親父さんです。どんな親父さんが見えますか?」
「一生懸命働いてる親父が見えます... もうクタクタなのに.... 頑張ってる...」
「なぜそんなに一生懸命働いてるのでしょう?」
「わかりません。何故だろう?」
「イメージでその親父さんに『何故そんなに頑張るのですか』って聞いてみてください」
「・・・・・・・・」
「親父さんは何てこたえますか?」
「こっ、子供がいるんだ。あの子の為に頑張らなきゃいけないって...」
(彼は親父さんの愛を感じて泣いていました)
「親父さんにどんな息子になって欲しいですかって聞いてみてください」
「大きな会社に就職して、りっぱな男になって欲しいって言ってます」
「そうですか、貴方がりっぱになることは親父さんの夢だったんですね。だからイイ学校にも行かせてあげたくって一生懸命頑張ってるんだ」
「そうです。知っていました... イヤっ忘れていました」
「今の貴方がその若い親父さんを見て、何か言ってあげたいことってありますか?」
「あります! あります!」
「言ってあげてください」
「お父さんありがとう、お父さんありがとう、お父さんありがとう!」
彼は親父さんに感謝という勲章をいっぱいあげたようです。
もう親父さんはおばけ屋敷ではなくなりました。
そして彼は今も大きな会社で働くべく頑張っていますが、それはもう親父さんを攻撃する為ではなく、 親父さんから夢のバトンをもらったイチロー選手のように晴れ晴れと仕事に向き合っています。
念願の彼女もできたそうです。
彼は親の心を理解して、本物の親になる準備をしはじめたようです。
最後まで読んで下さりありがとうございました♪