2009年、アメリカD1でドリフトボックスを導入したときがありました。
ドリフトそのものにまつわる、「基準のあいまいさ」を排除しないと、
アメリカではできない!と現地の主催者が強く訴えたからです。
日本のD1では使いにくいが、公平性を重んじるアメリカの大会ならば
可能性があるかもしれない。我々はそう考え、使用を許可しました。
ところがやっぱり問題がおきちゃった。
「ドリフトボックスはラインや迫力は見れないので、
『角度』『速度』を審査します。それ以外の項目は人間が審査します」。ここまではOK。
しかし、ドリフトボックスがはじき出した、
角度と速度をもとにしたという点数がまったく理解できないものだったんだよねー。
単純に言うと、「かっこ悪い走りなのに高得点が出る」という問題です。
誤解している人も大変多いので、ドリフトボックスについてちょっと説明します。
ドリフトボックスは「GPS」「ヨーセンサー」の2つの計測器から成り立っています。
(当初「Gセンサー」が入っていると誤解されたのが、そもそもの問題の出発点なんですが)
当初のドリフトボックスによる審査はこの2つの計測機を利用して
「横加速度」「速度」が高ければ高いほど高得点が出るように設計されていました。
算出方法
「速度」GPSの時計情報と位置情報から割り出す
「横加速度」速度2乗÷GPSの移動距離から割り出した回転半径
単純に角度を求めていけば、速度は遅くなるはず。
だからその掛け合わせた数値の一番いいところを高得点とするのが
当初のドリフトボックスの考え方だったんだよねー。
結果的にこの考えに基づいた審査は
インチョロのラインをスピン寸前に抜けていくのが高得点という結果になってしまいました。
逆に、これに気づいた選手はそのとおりの走りをして上位通過。
一方いつものスタイルでドリフトをした野村謙選手は予選落ちに。
なんであんな走りがよくて、この走りがだめなんだ!と各方面から不満続出!
さらには計測不良のため、もう一回走行してくださいなどなど、
走行管制オペーレーションもうまくいかず、
完全に審査が崩壊してしまっていました。
結局、このときの悪い印象が、今日まで尾を引いちゃったんだよね。
いわゆるドリフトボックス否定論です。
以後、ドリフトボックスはどのぐらい角度が出たか、
どのくらいの速度だったかを確認するためのセッティングツール、
データロガー的な使われ方をすることになりました。
その後、ドリフトボックスに対してはD1スタッフの中でも、
非常に懐疑的な見方が大勢でした。僕もその筆頭でした。
「機械でドリフトが測れる訳がない! という意見です。
それがどうやってDOSSの審査にたどり着いたのか?
以後また明日……
アメリカD1のドタバタはビデオOPTION193号に収録されていますので興味のあるかたはどうぞ!