
ダントツで名前が挙がるのは、このお方ですな。
先般、とある生徒から『好きな科学者と嫌いな科学者は?』と聞かれて、「好きなのはリーゼ・マイトナーとロザリンド・フランクリン、嫌いなのはダントツでジェームス・ワトソン(笑)」と即答した。
勿論、この本の主人公であるマリー・キュリーもリスペクトすべき一人だ。たまたま女性科学者を列挙したが、男性科学者でも独創的なアイデアや鋭い理論・分析、可能性を示す存在はあまりにも多い。(なので、女性だから、というのはミドリカワの意図ではない。いつぞやの記事で別の女性科学者ネタの本を出したように、ストーリー的には圧倒的に女性科学者のほうが面白いとも思うが。)
ジェンダーの問題、とりわけフェミニズムのアイコンとされることも多い彼女らではあるが、もっと奥深い時代背景や民族問題(祖国と呼べるものの有無も含めて)も絡みながら築かれた業績たちはあまりにも華々しい。が、この本の解釈にある、偉人伝にありがちな『苦労を乗り越えた美談』として扱われるのではなく、冷静に、皮肉にもその障壁と偶然が重なったからこそ成し遂げ得たという見解も納得がいくものだ。
『平凡な真実』として本文にもあるとおり、「それが芸術であろうと科学であろうと、熟慮と直観、理性と感性といった、正反対の要素が共に必要」であり、欲しくもない名誉を寄越しては「喜べ」「感謝しろ」という強要は求めていない。
(それでも、名誉を求める人は何処にでもいるもので。手に入れることが目的とすることもよくある話だが。)
純粋科学として向き合うことがベースにありながら、無機質に神格化されるよりも人間的なストーリーとして業績を知るのも科学史の楽しみのひとつ。
登場人物も豊富で、冷静な機知にあふれる描写は、科学史関連の書籍のなかでも読みやすくて示唆に溢れている。
これも、手元に置いておきたい本の一つだ。