2011年5月8日、J2第11節vs岐阜。
ヴェルディGK26柴崎貴広。

放送でもかなりフィーチャーされ未勝利も何度も紹介されていた。あの放送で柴崎を初めて見た視聴者は柴崎がいかに苦労人か再三聞かされた格好で負ければ土肥という狂暴な男にどうにかされちまうようなそんな演出に見えた(過言か)。幸い柴崎はそんなメイクミラクルを自分の手で演出してみせた。失点シーンこそ飛び出し上を突かれるという半端な判断だったが(まぁ出なきゃならない場面ではあったけど)ビッグセーブも飛び出し、この試合に賭けた男の決意を垣間見ることで視聴者にいろいろ伝わったのではないか?
柴崎が11年間で初めての勝利を味わうのにクリアしなければならなかったジンクスは3つある。

ジンクスその1
「16年ぶりの長良川勝利を!」。

私のデータ『VERDY Proud Stadium (スタジアム別)』を参照してもらいたい。

93長良川・1試合・1勝・0敗
95長良川・1試合・1勝・0敗
97長良川・1試合・0勝・1敗
98長良川・1試合・0勝・1敗
09長良川・2試合・0勝・0敗・2分
長良川・6試合・2勝・2敗・2分

鬼門長良川たる所以はこれまで勝ったことがないということ。「これまで勝ったことがない」は語弊がある、2勝とあるからだ。が、お気づきのように1993年(V川崎 2-1 名古屋)、1995年(V川崎 1-0 名古屋)ともに戦った相手は名古屋、当たり前だがFC岐阜相手ではない。当然だが1997年(V川崎 0-1 名古屋)、1998年(V川崎 0-1 名古屋)ともに同上の名古屋相手に連敗。つまり6試合のうち2勝2敗は10年以上前の試合。岐阜がJリーグに参入したのは2008年、ヴェルディはJ1に属したため初対戦はJ2に降格した2009年のこと。名古屋と最後に対戦した1998年Jリーグから11年ぶりの長良川でのリーグ戦(天皇杯では1998年に本田技研工業と対戦し勝利したり2003年に天皇杯で名古屋に勝ってはいるがヴェルディの長良川での公式戦開催はそれを最後に2009年まで6年間ない)。2009年は3クール制だったが2試合は長良川で組まれた。初戦はスコアレスドロー、第3クールの
3回戦は1-1のドローとなった。
記憶に新しい昨年の開幕連敗、ようやく初勝利を挙げたのは長良川球技メドウである。このスタジアムは長良川競技場から北に200mほど離れた言わばセカンドスタジアム。
岐阜を相手にしてヴェルディは勝ち点3を長良川競技場で挙げたことはない。これまで「岐阜を相手に」勝ったことがない「スタジアム」と補足しよう。
2003年に名古屋を破り天皇杯で勝利は奪っているがリーグ戦だと1995年以来勝利はないスタジアム。
岐阜を相手にしたヴェルディの戦績は
3勝・0敗・2分・7得・1失・差+6
と無敗、相性は悪くない。
16年ぶりの長良川勝利を。明日は期待したい。(以上5月7日投稿)

というわけで長良川16年ぶり、長良川での岐阜相手にも初勝利!また今シーズン初勝利、+柴崎初勝利とケツさんに怒やされるからあまり書かないほうが身のためか(笑)面識ないからいいけど。ジンクスはいつか崩すためにある。前半だけなら諦めましたけど(笑)
岐阜相手には無敗キープ。ホームゲーム(第20節 7/9味スタ)も無敗キープしなきゃ。

ジンクスその2
「土肥のためにも柴崎初勝利を!」

私のデータ『空白の7年11ヶ月~GK26柴崎貴広~』を参照してもらいたい。

0-1 横浜FM(02)
1-5 京都(02)
0-1 大宮(04:J2 横浜FC)
0-5 G大阪(04:天皇杯 横浜FC)
1-2 熊本(10:J2)
0-1 北九州(10:J2)
0-1 熊本(11:J2)
1-2 愛媛(11:J2)

柴崎がこれまで公式戦においてプレーした試合は以上8試合だけである。そのいずれも敗戦であり3月6日vs熊本戦のスカパー放送内でも触れられたが確かに柴崎が公式戦で勝ったことはない。
このうちヴェルディでは6試合プレーし12失点を喫している。1試合平均で2失点、これが多いか少ないか説明する必要もない。失点しなければ無得点でも負けはしない。ただ失点しないというのもこれは難しい。熊本戦では根占のシュートがDFに当たり柴崎は逆を突かれ愛媛戦でもPKの読みは当たるが届かなかった。GKに責任ある失点もよくあるが柴崎が致命的なミスを犯した失点って今シーズンは見当たらない。もちろんDFとともに守るゴール、連帯責任といえばそれまでだが。
土肥はいない今、ヴェルディのゴールマウスに立つ資格を有するのは3人。新井、菜入を推す声も聞く。ただ彼らを推すサポーターも柴崎の奮起を願っての辛口である。FC東京時代も含め公私ともに親しいはずの土肥の無念をチカラに柴崎は殻を破かねばなるまい。
土肥のためにも、もちろん柴崎自身のためにも、そしてヴェルディのためにも、柴崎初勝利を!
(以上5月7日投稿)

放送でも再三に渡り土肥負傷と柴崎のコメント、そして柴崎ジンクスは述べられた。ある種柴崎は恵まれなかったようでかなり恵まれておりそもそも11年間『カチ』のないGKを雇い続けた3クラブ(ヴェルディ、横浜FC、FC東京)のスカウティングは無能ではない。いずれもプロクラブでアマチュアクラブを経由しないつうのもサッカー選手としてかなり恵まれてるわけで。彼の素質、天性のセンス、恵まれた身体能力に価値を見出だしたからこそ契約を結んだわけで。もちろんそこに絶え止まぬ努力をする柴崎だからこそ契約を延長するわけで。その付加価値はファンサービスにも表れて、人柄を悪く言うやつはいないわけで。その価値を勝ちでガチでさらに付加つけたわけで。座布団没収されそうなくらいわけわからんわけで(笑)
おめでとうございます、柴崎貴広選手。ブログにもコメントしたわけで。


ジンクスその3
「柴崎を攻撃の起点に2得点以上奪え!」

引き続き私のデータ『空白の7年11ヶ月~GK26柴崎貴広~』を参照してもらいたい。

個人的な印象だが柴崎は相手のクロスなどをキャッチしたあと必ずハンドスローで味方に預ける。もちろんそれが悪いと言うわけではない。実際土肥もハンドスローが多く、最終ラインから繋いでいくのがヴェルディのボールポゼッションを高めるのは理解している。足元から繋ぎ相手ゴールまで確実にマイボールで攻める、そのスタンスは好きだし相手ゴールを陥れるのならばそれでいい、いやそれがベストだと思う。
ただ柴崎が先発した熊本戦、愛媛戦とチームはゴール欠乏症に悩まされた(鳥栖戦、FC東京戦もだけど)。相手がしっかりブロックを作りヴェルディ自慢のポゼッションサッカーを封じられたといえば攻撃陣の課題ではある。だが考えてみれば果たして柴崎がバントキックした回数ってどれくらいだろうか?きちんと集計していないので印象でしかないがかなりの確率で最終ラインに手渡しているはずだ。ヴェルディのカウンターはやはり遅い、手数をかけるから仕方ないのかもしれないが1パターンといえばそれまでだろう。そしてそこでのミスパスが命取りの失点も多い。
他のクラブを見ると思うがやはりシンプルに攻める時間もあっていいと感じる。90分のうち5分でも1分でもいいシンプルに攻めることも得点を奪うきっかけを増やせるのではないか?高さがないからと足元で繋いでばかりが能ではない。「攻撃の起点はGKから」ともいう。柴崎がバントキックで前線に供給することもチャンスを増やすことになるだろう。平繁がFC東京の守備網を錯乱したのもシンプルに裏を狙ったからだと思う。相手DFが見誤って思わぬ棚からぼた餅があるかもしれない。
前置きが長くなったが柴崎が出場した試合で味方はすべて1得点以下である。これは偶然か必然か。そもそも失点してしまえば2点以上いれないと勝ちはない、イコール失点しなきゃいいんだが前述のように難しい。
味方が2点以上奪ってない、やはりGKから始まる攻撃だからこそ、柴崎は攻める必要があると思う。GKは無失点に抑えても、得点を奪うのは基本フィールドプレーヤー。GKが勝ちたいならば、起点になるべき。私の持論、私見です。
「柴崎を攻撃の起点に2得点以上奪え!」
(以上5月7日投稿)

先制を奪った時点でこの読者は思い出してくれただろうか?2点目の重みを。
それから約20分後、柴崎はまたも勝利に必要なボールをその手に触れれぬまま、ゴールネットに吸い込まれるのを見届けてしまった。(もちろん懸命に手を伸ばしたのは知ってます)
だが失点する前も後も明らかにこの日の柴崎は違った。キャッチしたボールをハンドスローで味方に渡す仕種は見せたが冷静にボールを抱き寄せ敵が周囲から離れたのを確認しまるで土肥のように時間を使った。リードしてからはまだ立ち上がり10分にも満たないなかの土肥焦らし、とても紳士のスポーツには似つかわしくないプレーだがそこは万国共通のフットボール、汚いも何もルールさえ守れば問題はない。しかし試合の頭に先制したチームが如実にやる焦らしは見ていて気持ちがいいものでもない。だが柴崎の脳裏にはこれまでプロに入りベンチで見続けてきた菊池、本並、高桑、義成、菅野、小山、吉原、土肥などのプレーを自分なりに分析し盗んできた成果が今日の柴崎貴広というプレースタイルなのでしょう。土肥もどき焦らし(もっとエグいし土肥焦らし)は今後も柴崎の代名詞になるだろう。
如実に変わったのは焦らしもあるが必ず転がし右足で平繁や井上目掛けてフィードしたことにある。これまでならばケツさんや前田さんの指示か知らないが必ず福田、土屋、深津、森、あるいはボランチにハンドスローで渡していた場面もリードの有無に関わらずフィードしていた。前述のようにそれがマイボールでなくなり無駄になった場面も多々あったがそれでも結果的にラインを押し上げ、必然的にポゼッションを高めた時間帯もあった。押し込まれた時間帯でも前線で孤立していた平繁や井上に少なからず活気を与え、疲れていたDFラインの回復を促した。
前半は2点目が遠く、引き上げる柴崎にも満足感はなかったにせよ、試合終了後にフラフラと歩いていた姿は精魂使い果たした大男であった。
試合は勝った、しかし内容はまだまだ。J2優勝なんて夢の夢、ただ柴崎だけはもう負けないでしょう、試合に負けても自分に負けない。
だからこそ平は2点目を柴崎に、飯尾が3点目を天にいる土肥(あのシーンだけなら死んだように見えた)に捧げたのだ。
土肥が病室で中継を見ていたかは不明だが伝え聞くぐらいはできたはず。その結果を聞いて柴崎を呼び出すことに変わりはない。それが「おめでとう」か「なぜ完封しなかった?」かはわからんが、病室に入る大男は自信に満ち溢れた表情で土肥にデカいツラできるだろう。
ただ一つまだジンクスがあるならば

「柴崎貴広は完封したことがない。」

これは次節に達成してもらわないと困る。



最後に柴崎ブログより

やっと勝てました。
サポーターの皆さんの笑顔が見れて本当に よかったです。
「勝ち」って本当良いですね!
今日は忘れられない日になると思います。
本当にありがとう。
次はホームゲーム。
連勝目指して頑張ります!
今日もたくさんの応援ありがとうございました!


「やっと勝てました」
「今日は忘れられない日」
短いメッセージにすべてが詰まっている。
これからが柴崎にとって修羅場に変わりはない。