正直、結構な大人になるまで、人の「死」に触れることなく生きてきた。
お葬式には何度か行ったことはあるが、中高生の頃だったし、何も分かっていなかった。
ちなみに全くの他人の。
親戚とはほとんど会わずに生きてきたから、人の死を身近に感じたことは無かった。
ドラマで誰かが無くなったシーンがあっても、ピンと来なかった。ドラマでなくなっても他の番組で見かけるんだから。
しかし、母がなくなってから、人の死、生き物の死についてどういうことなのか、少し理解ができた気がする。
どういうことなのか、肌身に染みて感じた。
ついこの間まで、歩いていたはずなのに、話をしていたはずなのに、性格も明るかったはずなのに。
動けなくなり、うつになり思考がマイナス方向へ向いていた。
そして、死んでしまうなんて思いもしなかった。
起き上がることも、口を開くこともない。
あの日以来、人は次の瞬間どうなるか分からないんだと、思うようになった。
危険を感じるものからは身を遠ざけるようになった。「公共の乗り物も、いつどうなるか分からない」と心の中で思いながら乗るようになった。
赤ん坊や小さい子は、なんて非力なんだろう、と考えるようになった。
母がなくなって以来、いつも命の重みを感じている気がする。