私は人生の中で、2人の人殺しと住んだり、付き合ったことがある。
成人して間もない頃、出所してきて半年のアイツと、あるバーで隣同士になった。
その頃、家庭が崩壊していた私には、帰る家などなく、あの頃の私は最低限の身の回りのものだけを持ち
少量の麻薬2~3種類と自分の肉体だけでこの世を渡っていた。
バブルの終わり頃。日本全体が狂喜乱舞していた時代が間もなく幕を閉じようとしていた頃、
OLもサラリーマンもシャブをくらっていた。
今とは違い、まだ麻薬をヤクザから購入するのが常識だった時代。
今日の寝床を探して誰かを探す。いなけりゃいつもの男がいる。でも誰か新しいのを探したかった。
バーのカウンターで隣に座っていたアイツは向こう隣の女と言葉を交わしていたが、ある時、
私に飲み物を与えてきた。 「もしよければご馳走させてください」 好みでもない男だった。
キザな感じがしたし、例えていうなら油っぽいイタリアンな感じの男。
人生の時間を潰すだけしかその場所に腰かけていなかった私は、誰でもいいから話し相手が欲しかった。
「あ、私なんぞに・・・有難うございます。いただきます。」
他愛もない話がはじまった。何を話したかなんて覚えてない。 面白い話なんてした記憶はなかった。
20歳そこそこの女が、40近い男となんて話が合うわけがない。
その時の時間を溶かすことが出来ればよかったのだ。
何を話したのかも覚えていないのに、帰る家のなかった私は、数時間後にアイツの家に居た。
体を鍛える器具が2つ置いてあった。 そういえば、もの凄くいい体格をしている。
玄関には螺鈿の調度品、寝室には掛け軸、その脇には・・・数本の日本刀がかけてあった。
この部屋は・・・大人の趣味なのか・・・??? それにしても不思議だと思った。
その夜、確か・・・アイツは私に指一本触れずに同じベッドで寝た。
その時にはじめて気がついた。アイツの体には全身刺青が入っていた。和彫りだった。
「明日、僕に協力して欲しいんだ。僕が洋服を買いに行くから一緒に来て欲しい。それでその服が
似合うとか似合わないとか言って欲しいんだ。店員だとお世辞ばかりだからね」
どうでもいいことだったけど、帰る家がないんだから仕方ない。
こいつの家にしばらく厄介になるにはしょうがないかと思った。
めんどくさい男の家に転がりこんだもんだな・・・・・こいつヤクザか・・・・・・・
まぁ、どうでもいいやと、目を閉じた。
お盆前から、過去を書くと申し上げておりましたが・・・・・何から書いていいものかと悩んでおりました。
思いついたものから書いていけばいいやと・・・やっと書く気になれました。
これからの文章には、非合法的なものや暴力、裏稼業の人間たちの話が出てくると思います。
プライバシー保護のために個人名は変えて書きますが、これからお話しするのは紛れもない
『私』という一人の女が通ってきた道でございます。 長くなると思いますので、小分けに書きます。
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