広い駐車場で野良の女の子と男の子が一生懸命生きていた。

生後3ヶ月くらいから1年半の間に2匹は結ばれて3回の出産。
自然淘汰されたのか?

最初は1匹の真っ黒な男の子。
4ヶ月くらいに会えた。空ちゃん。

2回目は2匹。白にグレーのブチのある女の子と
白いソックスを履いた茶トラの男の子。
3ヶ月くらい?夢ちゃんと海ちゃん。

3回目は2ヶ月?6匹のグレーぽい仔猫たち。

駐車場デビューが早くなったのは
私が駐車する場所が隠れ家に近くなったからだ。
人目に触れずに仔猫を運んで来れたから?

立体駐車場の登り口と降り口の間に
7台置ける駐車スペース。
クルマ避けのすぐに金網があり中は給水機の様な
設備があり配水管が外の溝に通る穴の回りが
出入り出来る通り道になっていた。
その中に仔猫たちが隠れていた。

私が駐車すると風ちゃんが呼んで仔猫たちが
すぐにクルマの下に。
空ちゃんと一緒に食べている。

この時は仔猫のパパの陸ちゃんは居なくなり
2回目の夢ちゃんと海ちゃんは
私の家族になっていた。

食料確保の営業担当の風ちゃんに代わり
子育てしていたイクメンの陸ちゃんを亡くした
風ちゃんにとって
空ちゃんは心強い長男だったが6匹の子育ては
真冬に並大抵な事ではない。

そのためか同時に妊娠可能な夢ちゃんもいて
2匹を私に託したのだろう?
2匹は避妊手術をしてわが家に馴染んで暮らしていた。 
ママに邪険にされて此処が居場所と覚悟したのだろう?

7台が満車の時は向かい側の5台の所へ駐車する。
此処はすぐ横に機械室のような小屋があり
此処も隠れ場所だった。
奥へ行くと従業員入り口があり
そこまで植え込みが続き
此処でも仔猫たちが隠れて遊んでいた。

風ちゃんたちの本当の隠れ家は屋上にあった。
奥の従業員入り口の方が
立体駐車場の降り口だったが風ちゃんは
降り口から登って 登リ口から降りていた。

凄い野良の知恵だ。
立体駐車場の登り降りは一車線でも
左寄りに運転している。
クルマが通り過ぎる時に安全の為に
空きのあるすれ違う方向の端を歩くのだ。

夜遅く仔猫をくわえて登り口の
カーブを降りてくる風ちゃんを見た。
仔猫が一人で隠れ家に帰ろうとしたのか?
下に引っ越して来たのかわからないが?

地上と屋上を仔猫をくわえて往復するのは!
しかも6匹!かなりの重労働だ。

そうして手塩にかけて育てた6匹の仔猫が
突然居なくなった。

冬の寒い時期に仔猫が暖かいフロントの
エンジンに入り込んで鳴き声で気づいて
助けたという話を聞いた事がある。

とても冷え込んだ夜だった。
そういう事かもしれない。
どうぞ優しい人に保護されていますように。

仔猫がタイヤに登って遊んでいるのも見ていた。
仔猫たちの強運を祈るしかない。

風ちゃんは空ちゃんと一緒に仔猫を呼んで駐車場を
捜し歩いていた。

そして あの日。
空ちゃんを置いて風ちゃんだけ連れて帰った。

1ヶ月通ったがいつもの場所で待っていた空ちゃんが
姿を現さなくなり置いてある物も食べた形跡が無い。

それ以前なら他の野良猫や野良犬が食べていたが
もうほとんど姿を見る事は無かった。
捕獲箱も片付けられていた。  

1ヶ月目の最後の日に風ちゃんを連れていく。
以前のように助手席のドアを開けると元気に なった
風ちゃんが駐車場に降りた。
空ちゃんを捜して連れてきてくれる?

風ちゃんは住み慣れた場所を静かに歩いたが
すぐにクルマの中に戻った。
空ちゃんの生活圏では無いのだろう?

私は最後に屋上に上がった。
この屋上の降り口の傍の機械が並ぶ向こうに
いつも風ちゃんは姿を消した。
でもドアを開けても風ちゃんは降りなかった。

此処での生活は厳しいものだったと思う。
そして家族はもう居なくなった。
此処は風ちゃんの居場所では 無くなった。

おうちに帰ろうか?
夢ちゃんと海ちゃんが待ってるね。  

~    ~    ~    ~    ~    ~    ~
6匹の子育て中に2匹の姿が見えなくなった事が
あった。
風ちゃんが従業員入り口に行く道の側溝の辺りを
ウロウロして私を見てる。
傍に行くと仔猫の鳴き声が聞こえる。    
側溝の中からだ。どうしよう?
側溝の穴から落ちたのだろう。
それほど小さい時だった。
思い切って蓋を開けると中にいた。
しかし深さが50センチくらいあって届かない。
風ちゃんも覗き混むが思案顔。
とっさに私はお店の中に飛び込んで
スノコを捜す。
2枚組の30センチ×60センチくらいのがあった。
これを側溝の中に立て掛けた。
裏を上に向けると梯子になる。
風ちゃん!言う間もなく飛び込んで
1匹くわえて連れ出す。
空ちゃんが植え込みで仔猫たちと居る。
2匹目の時に風ちゃんが私を見て
ありがとう?
姿を消した。 

私は地べたに這いつくばってホッとしていた。
8時頃で従業員さんが不思議そうに横を通る。
嬉しさで恥ずかしさも何も無かった。
慌ててスノコを片付けて側溝の蓋を戻した。
必死で蓋を開けたが戻す時は結構重かった。

実に変なおばさんである。