2016年。東海テレビ報道部内で社員ディレクターの土方から、東海テレビ開局60周年番組で報道部に密着取材するとの説明があったが、殆どの部員は何も聞かされてはおらず非難集中。撮影は一旦中止になったが上層部の仲介で再開。ベテラン記者澤村慎太郎は学生時代からジャーナリズムに興味があり、自分もそれを目指したが今はスポンサー要望の取材ばかり。そんな澤村がとある高層マンション反対運動に纏わる事件で「共謀罪」が適用されぞうとの話を聞き…。

 

 1ローカルTV局の枠をはみ出し意欲的なドキュメンタリーをTV放映に留まらず、劇場版も次々製作して公開する『東海テレビ』。本作は『やくざと憲法』(15)を撮った土方宏史ディレクターによる監督作品。フジテレビ系列である愛知県の東海テレビ開局60周年記念にTV放映されたドキュメンタリー番組の劇場版。視聴率戦争に明け暮れるTV業界で、各々の立ち位置からニュース番組制作に関わる報道部員たちの姿をカメラが捉える。TV放映から劇場公開まで一年半もの時間があり、取材対象となった報道部員から本作製作側への批判も根強くあったが、その一方でTV界全体の話題にもなり、他局のTV関係者でも本作を観た人は多いとか。

 

 逮捕された人の冤罪を信じ原稿で共謀罪の是非を問うた澤村だが、フジテレビに合わせニュースでは「共謀罪」というワードは使用不可になった。社員の減少と残業時間を減らす為の手段として契約社員制度が実施される。渡邊雅之は制作会社から一年契約でニュース番組のレポーターとして出向。だが慣れない仕事に失敗続き、契約は更新されないのではと不安を抱える。社員アナウンサーの福島智之はニュース番組のキャスターだが、編集スタッフの不手際で本番中に謝罪。以前にも同じ事がありネットで番組が再度炎上。視聴率不振が原因で長年務めて来たキャスター降板が決まり、その後番組の街ブラコーナーのレポーターに格下げ?

 

 社会科見学で東海テレビを訪れた小学生たちに「テレビ局の仕事の一つは権力の監視」を挙げる報道部員だが、そうは問屋が卸さない現実が赤裸々に描かれる。分刻みで発表される視聴率やフジテレビとの兼ね合いで原稿を書いても初志の形で放送されず、諦観じみた言葉も漏らす澤村。渡辺は常に自信なげな笑みを浮かべ見るからに頼りない。結局契約が延長される事は無く…と、TVドラマとかで描かれるTV局スタッフの「正義感」とかけ離れた倦怠感が本作全体に漂う。敢えて裏側にキャメラを向ける事でテレビの現状炙り出す視点と共に、演出者は撮影の裏側も観客に晒し、ドキュメンタリーという形式の賛否をも問いかける所が凄い。

 

作品評価★★★★

(地上波TV局がはっきりした主張をできない根本的な原因は、民放TV局の実体が広告代理店業である事。TV局にとっての真のお客様は視聴者ではなくスポンサー様な訳。視聴者との個人契約で好きなTV局の番組を観るシステムが確立しない限り、テレビ業界に未来はない) 

 

付録コラム~愛は日本テレビを救えない

 日本テレビ夏の恒例番組『24時間テレビ』に関してのアナウンサー「ミトちゃん」のTV謝罪に批判が殺到している。俺も批判意見に賛成。募金の金をチョロまかしたのはミトちゃんではない。そんな直接事件に関係ない人に謝らせて、肝心の責任者は表舞台に出ないで済まそうとする最悪のやり方は『セクシー田中さん』問題の時と同じだ。ホント日本テレビの首脳部は腐っている。

 そもそも地方の系列局の事とはいえ、最悪の不祥事を犯した時点で募金なんか集める資格は日本テレビにはない。それでも募金を必要とする人がいるというなら、いっそぺナルティーの意味も含め日本テレビが毎年集まる募金分の金額を然るべき所に寄付したらいい。その位酷い過ちを日本テレビはしてしまった。

 スタジオジプリが考えたという今年の24時間テレビのテーマコピー「愛は地球を救うのか?」も、今頃良くこんな寝言みたいな問いかけ言ってられるなと思う。正直言いたくないけど、愛で地球を救える可能性があるなら何故世界の大国が、本気で非戦闘員をも巻き込むイスラエルのガサ地区武力攻撃を止めようとしない? イスラエル軍は自国民の人質まで攻撃の巻き添えにして殺していると聞く。こういう連中にも「愛」が通じるのかね。

 今年の24時間テレビのテーマは当然能登地震の被災者を勇気づけようという事になるんだろうが、序に元ジャニタレで今は何とかいう事務所の所属タレントにガサ地区の戦闘区域に飛んでもらい最前線レポートをやってもらいたい。そこで彼が「もう無益な人殺しは辞めるべき」と」とか発言したら、若者たちも今より多少はガサ紛争に興味を持つだろう。毎年ジャニタレはMCやって24時間テレビで美味しいトコ取らしてもらってたんだから、たまには何でもやります的な男気を見せてくれよ。戦争は確かに恐怖だが、故ジャニーズさんに●●●を狙われる可能性も、戦争に負けない位恐怖だったはず。

 今年も寝苦しい酷暑の夏がやって来る。となるとまた狂った奴がロクでもない事をやらかしそうな予感。愛だの感動だのと綺麗ごとを売りにする前に、日本テレビはそういう一触即発な現実を直視した上での番組作りを心がけて欲しいもの…とか言っても、聞く耳なんかなさそうだな…。