1789年6月フランス革命前夜。フランスとスペインの国境近くで貴族の馬車を襲って金品を巻き上げる怪盗「黒いチューリップ」。標的は富裕層ばかりなので庶民からは義賊と祭り上げられている。その正体はギヨーム伯爵(アラン・ドロン)。貴族間ではプレイボーイとして有名で、ヴィゴーニュ侯爵のコルデーヌ夫人など多くの女性と関係し、憲兵隊長のラ・ムーシュ(アドルフォ・マルシラック)はやっかみもあり黒いチューリップ=ギヨームだと主張するが、誰も耳を貸さない…。

 

『太陽がいっぱい』(60)で大ブレイクしたアラン・ドロンの人気を当て込み製作された活劇アクション。アレクサンドル・デュマ・ペールが1850年に発表した同名小説を大胆脚色し映画化したフランス、イタリア、スペイン合作作品。戦前から活躍した大ベテランのクリスチャン=ジャック(監督作品はブリジット・バルドーとクラウディア・カルディナーレ共演の『華麗なる対決』しか観た事ない)が監督。八面六臂の活躍をする義賊の誰も知らなかった真実を描く。イタリア出身でハリウッドでも活躍したヴィルナ・リージ、チャップリン監督作『ニューヨークの王様』(57)に主演した英国出身のハリウッド女優ドーン・アダムスなどの共演。70ミリフィルムで撮影された。

 

 ある日ギヨームはラ・ム―シュの罠にハマって正体を見破られ片頬を斬られて窮地に陥る。逆にラ・ム―シュを罠にハメ何とか他の人間には正体バレバレずに防いだが、傷のせいで隠れ家から動けない。そこで田舎暮らししていた双子の弟ジュリアン(アラン・ドロン)を呼び寄せ自分の身代わりに立てる。ジュリアンは兄=黒いチューリップと知って喜ぶが、ギヨームには救民の意図は無く、単なる装飾品欲しさの強盗だった。ややガッカリしたジュリアンだが、それでも兄の指示に従う。でもマトモに乗馬すら出来ない始末で、落馬した所を結婚式直前の革命派シンパ・プランタンの娘カトリーヌ(ヴィルナ・リージ)に手当され、庶民の温かさを知って…。

 

 アラン・ドロンが大泥棒でプレイボーイの兄と、純情で正義感に溢れる弟のニ役を演じ分けるというのが本作の売り。女たらしだったギヨームがいきなり真っ当な人間に変わってしまった事で、手を付けていた女たちが呆気に取られる様がまあまあ面白い。馬にも乗れない程運痴だったジュリアンが、映画後半では当たり前の様に剣の達人になっているのは、映画ならではの嘘として許すべきなのか…。結局正体がバレ処刑される事になってしまった弟に対し兄が…の下りは想定内で、もう一捻りしたどんでん返しが欲しかったが、スター主導の娯楽映画としては過不足ない出来栄えではある。ラ・ム―シュ役の俳優の間抜けキャラな助演貢献も大きい。

 

作品評価★★★

(アラン・ドロン主演でなくちゃ成り立たなかった作品。奔放なイケイケ男と絵に画いた様な好男子を演じる事で、一本の作品で二人分のアラン・ドロンが楽しめちゃう。ヒロインヴィルナー・リージは老け顔でちょっと華が無いが、ドロン目当ての女性ファンにはこのくらいがいい?)

 

 付録コラム~芸能人がワイドショーのコメンテーターをする理由

 俳優(今も?)の高知東生が「俺に言われたくないかもしれないが、芸能人はワイドショーのコメンテーターをやるのは辞めた方がいい」とSNSでコメント。まあ辞めた方がいいと思うのは芸能人に限った話ではないけどね。

 何故政治や経済の専門家ではない芸能人がワイドショーで重宝されるのかについて考えてみたが、取り敢えずの結論としては「一般市民の視聴者の目線と近いコメントをしてくれるはず」以外には考えつかない。ただそもそも芸能人は「庶民」なんかではないという根本的な矛盾がある。勿論ディレクターからはそういう風なコメントお願いしますと言われてはいるんだろうし、高知が指摘する様に台本めいた物が事前に用意されているのかもしれない。だがらといって全て台本通りにトークするとヤラセ感丸出しだから、当然自由に発言してもらう部分もある。そうなるとつい気が緩んで(というか、本音丸出しで)「上から目線」的な発言をし、結果的にはSNSなどで炎上を招く…という流れになってしまうのだ。

 まして石原良純、長嶋一茂といった何一つ金銭的不自由なく育った人間に庶民目線など土台無理。人口比率か実人数なのかは分からないけど、今や日本は世界で二番目に富裕層の人口が多い国だそうだ。良純、一茂のワイドショー起用は、そういうセレブ層の代弁者としてワイドショー制作側は考えているのか?

 

 富裕層ではないと思うが「ほんこん」も酷い。そもそも本業のお笑い芸人としての評価でも、俺の周囲で「ほんこんが面白い」と言った人は過去一人もいなかったが。そんなほんこんのコメンテーターぶりはTVで観る限り、はっきり言ってオヤジの酒飲み談義レベル。俺も酩酊状態で聞いてる分にはいいかもしれないけど、ワイドショーという場は言うまでも無く素面限定。そんな所で酒のつまみ程度の物言いを偉そうに聞かされてもなあ…って思う。

 調べてみるとほんこんはちゃんと事実関係を調べずにSNSでデマレベルの事を発信し、二度ほど訴訟騒ぎになっている(一度は実際に訴えられて敗訴)。これだけでもワイドショーの「素人コメンテーター」にはふさわしくはないのでは?

 まあどんな人間にも思った事を発言をする権利があるのだから、どんな暴言だろうが勘違い発言だろうが、それは一応自由。ただその場所を選んだ方がいい…という単純な話である。