PMS(月経症候群)の影響で気分がふさぎ突然他人に厳しい態度を取ってしまう美紗(上白石萌音)。そのせいで大卒後に入社した会社を二か月後に退職。その後はバイトを転々としていたが三年前から子供用工作玩具を作って販売する「栗田科学」に就職。社長(光石研)も他の社員も美紗の持病の事は承知済み。それでもある日PMSの時に口数が少ない後輩社員・孝俊(松村北斗)の、炭酸水のペットボトルの音が気になって、つい強い口調で詰ってしまい…。

 

『キネマ旬報』2022年日本映画ベスト・テンでベスト1に輝いた『ケイコ 目を澄ませば』(22)から二年ぶりとなる三宅唱の新作。瀬尾まいこが20年に発表した同名小説を、三宅監督自身が共同脚本を兼ね映画化。精神的な疾病を抱えた二人の若者が、病気に向かい合って立ち直ろうとするヒューマンストーリー。21~22年放映のNHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でも共演済みの、元ジャニーズ系グループ『SixTONES』のメンバー・松村北斗と上白石萌音がW主演で再共演。今やスター脇役?の光石研、三宅作品は『playback』(12)、『密使と番人』(17)に次いで三度目の出演の渋川清彦、元モデルで99年から女優として活躍するりょうなどが共演。

 孝俊は美紗の過剰な態度で、初めて彼女が自分と同じ様に精神的な病を抱えている事を知る。孝俊は元エリートサラリーマンだったが突然パニック障害を発病して退社。先輩社員・辻本の紹介で栗田科学に入社したが、本心では一日も早く元の会社に復帰したいと思っている。数日後今度は孝俊が仕事中に発作を起こし、早退するので美紗がアパートまで付き添う事に。家に送り届けた時美紗は自分がPMSである事を孝俊に告げた。電車にも乗れない孝俊の行動範囲を広げさせようと、美紗は使っていない自転車をあげようとするが、孝俊は断る。その時孝俊は自分で散髪しようとしていて、見兼ねた美紗は私が切ってあげると言い出して…。

 

 40年前ぐらいまでは一般的に認知されていなかった病を抱えた二人。美紗は病気の為に入社した会社を辞めざるを得なくなり、孝俊はエリート社員の座を失った。そんな二人が相互の病気を理解し牛歩ながらもそれを克服していこうという姿が描かれるが、二人の間には「友情」があっても決して「恋愛」にはならないのが本作のミソであろう。作為的な描写を避けドラマは日常性の積み重ねの中から産まれてくるのだという、三宅監督の演出テーゼは本作でも貫かれている。得難い友達を得たのにも関わらず、美紗が新たな場所へと旅立っていく姿が淡々と描かれているのも、却って気持ちが良かった。ただ「映画」としてはかなり地味である。

 

 作品評価★★★

(今回の作品は初日興行の土曜日に映画館で観たが、観客は俺を入れても7人。わざわざTVの人気者を起用しても動員効果が望めないのでは、気鋭の新人俳優を起用した方がベターと言っては酷だけど…。ちなみに俺は「上白石萌音」と「上白石萌歌」の違いが判らない)

 

付録コラム~監督クビにするだけで変わるモンではない

 不振を極める『西武ライオンズ』の松井稼頭央監督の休養が発表された。はっきり言って「クビ」だ。ライオンズGMの渡辺武信が監督代行を務めて今シリーズは乗り切ると思われるが、80年代の西武ライオンズの黄金期をリアルタイムで知る世代としては、寂し過ぎる現状ではある。

 実は昨シーズンから俺はTV中継でしばしば見受けられる、松井監督のベンチで見せる笑顔が気になっていた。ピンチを切り抜けたピッチャーやチャンスに好打した野手を迎え入れる彼の笑顔には、勿論邪心はない。でも試合が劣勢の時でも笑っていていいのか? 監督たる者少なくとも負けている試合では、もっと選手に対して厳しい態度の一面を見せていかないと、指揮官としての面目が立たないのではないか…そんな事を俺は常々考えていた。

 でも今すがに今シリーズになってからの散々たる成績に、その笑顔は松井監督からほぼ消えていた。去年から問題視されていた打撃陣の層の薄さは、新入団した外人が「害人」化した時点で1軍半レベルになった。「おかわり君」の個人的な成績は賞賛すべきだとは思うが、彼が未だに4番を打っているようではどうしようもない。

 

 そもそも本来FA権を獲得してなかった山川に、無理やり理屈つけてFA権を与えた球団フロントの考えが理解できない。山川本人もまさか今シーズンにFA移籍が実現するとは露ほどに思っていなかったのでは? フロントとしては山川みたいな「汚れ」はさっさとお払い箱にしたかったんだろうが、チームの現場サイドでは絶対必要な選手。フロント陣とはともかくも選手間に山川と特にわだかまりがあった様には見えなかったし、山川の希望を100%受け入れライバル球団にくれてやるなんて正気の沙汰ではない。せめて今シーズンだけでも山川を4番打者としてライオンズに在籍させるべきだった。百歩譲って放出するとしても、FA権無しなら讀賣とかのセリーグ球団相手にトレードして、代わりにそれなりの好打者をゲットできたかもしれないのに。

 西武ライオンズは投手王国という看板も危うい。エースのロン毛部長・高橋光成が未だ0勝、平良が負傷離脱で3本柱の内2人が機能しておらず。今井は楽天戦に登板すれば勝ちを稼げるかもしれないが、他の球団にも通用するかは未知数。かつこの3人は近い将来大リーグに移籍する事は確実。その後釜の投手育成まで今のフロントが長期的に考え、手を打っているとは思い難い。近い将来西武ライオンズは投手陣ダメ、打撃陣もダメな長い氷河期に入ってしまう可能性がある。

 何れにしても、今の西武ライオンズには希望的な観測は皆無。渡辺監督代行は今から巻き返せるなどと超呑気な事を言っているが、早くも自力優勝が消えた今、現有戦力でリーグ優勝できる可能性は、次の衆院選で立憲民主党が政権与党になるよりも低い。潔く「自分たちは最弱」と認め、3年後ぐらいのAクラス入りを目標に、若手選手を積極的に起用して経験を積ませる方針に変えるべき。それもできないと言うなら、ホリエモンにでも球団売ってしまえ!