引っ越し先を探していた大学生の海斗(桝田朋弥)は、同級生の正樹から紹介された格安物件のアパート部屋に引っ越すが、オカルトに詳しい友人の悠介から大丈夫かと思わせぶりな電話をもらって不思議に思う。引っ越し当日童貞の海斗に見せつける様に、隙を見て部屋内で年上の恋人・祐里香とSEXをおっぱじめる正樹。部屋には女性と思われる前の住人の遺品めいた物があり、祐里香に気味が悪いから捨てなさいと言われるが、海斗は全く気にしなかった…。

 

 前回取り上げた『発情物語 幼馴染はやり盛り』と全く同じ経緯を辿った作品。元々はテレビの助監督をやっていた本作の監督が自主映画として撮ろうとした企画を、相談を受けた、先日逮捕報道があった某セクハラ認定監督に『大蔵映画』に持ち込んだらと勧められ、ピンク映画として製作される事になったが最初の上映はR-15版、その後成人映画として『淫美談 アイコノシタタリ』と改題されて公開。今回観たケーブルTV版では『色情霊~カノジョノシタタリ』と再々改題。訳アリ物件に住む事になった男を襲う悲劇…。主演のなつめ愛莉はAV女優を経て、現在は変名しYou Tuberとしても活躍してるとか。べテランフリー俳優の川瀬陽太も出演。

 

 夜海斗は悪夢にうなされる。夢にはチラリ見た祐里香の乱れ姿も登場し、海斗は意識しない内に奇行に走っていた。深夜悠介がそっと様子を伺いにアパートの表に。翌日大学で悠介に引っ越したらと勧められる海斗だが、昨晩の奇行の事は全く記憶に無し。帰った海斗は突然部屋に現れた謎の女(なつめ愛莉)に魅入られる様に誘われベッドで交わり、それは連夜続いた。大学に姿を現さなくなった海斗を心配した正樹と祐里香はアパートを訪れるが応答は無し。海斗は女との愛欲にどっぷり浸かり、それから逃れられないでいた。窓から覗いた正樹、祐里香、悠介は一人で「エアーSEX」している海斗の姿を見て仰天。善後策を考えるが…。

 

 R-15ヴァージョンで濡れ場シーンが短縮されている事を考慮しても、本作はエロそっちのけでホラー演出に拘っている。粗末なアパート部屋が舞台なのでどうしてもチープに感じてしまうけども、後半のエロ映画を完全逸脱した、訳あり部屋に憑りついた女悪霊対除霊師のバトルシーンはなかなか観せる。かの『エクソシスト』ばりのホラーメイクを施したなつめ愛莉のなりきり熱演もさる事ながら、普通ならお笑い草なオカマの除霊師を大真面目に演じきる川瀬陽太に、映画の出来云々を越えて感動してしまった俺。あり触れた青春散歌話が多そうなピンク映画界にこういう異色の作品がもっと増えれば、ピンク映画業界も活性化するのでは…と思う。

作品評価★★★

(正直ピンク映画というより自主映画レベルの規模だが、それでも劇場映画デビューの夢を適えた本作の監督にとっては感無量であったろうな。海斗のオカルト好きの友人に扮した石橋侑大は、ATG映画『君は裸足の神を見たか』主役で俳優デビューした石橋保の息子だとか)

 

付録コラム~7年ぶりの映画館

 

 県庁所在地に市にある映画館の前をたまたま通ったら「このブログをやってる立場上スルーするのは許されない作品」が上映されていた。そこで7年ぶりに映画館に行く事を決意。

 7年の月日は長い。最後に行った映画館は『神保町シアター』で、シネコン系映画館となると更に久方行った記憶もなく、もしかして10年ぶりぐらいになるかも? 東京を離れてからは生活上の問題で映画館などに行く事など不可能になり、もう二度と行く事ないかもと思ってもいたが、幸せか不幸か時間的には余裕がある生活になり(やっぱり不幸?)、更に低料金で映画を観れる身の上にもなってしまった。トホホ…。

 その映画館は繁華街にあるアーケード商店街の端っこにある。ど田舎のシネコンなんてどんな物かと入ってみると、新宿のシネコンを十分の一ぐらいにスケールダウンした様な塩梅。一応8スクリーンあるのだが新宿のそれみたいに各階に分れているはずがなく、商業ビルの2階のワンフロア―に固まって存在。俺が行ったのは平日の4時半という、マトモな社会人は殆どいない時間帯(その時間のみの1回上映であった)。上映時間に集まった観客らしき人は7、8人ぐらいか。賑わったシネコンしか経験した事がなかったので、こんなんで映画館経営など成り立つのかなと他人事ながら心配になってくる。土曜日曜だと違うのかな?

 前から3番目ぐらいの座席で映画を観た。以前に比べて字幕はやたら大きく感じ、更に昔と違い映像の下部分に出てくるので、確かに読み易くもある。久々の映画館だしもっと違和感を感じるかな…と思っていたのだが、長年の映画館通いの習性で直ぐに馴染んでしまい、やっぱ大スクリーンで観るのはええのう…とごく当たり前の事を感じてしまった。当然観た映画の感想も二割増しぐらいの高評価になる?

 今回をいい機会にしてボチボチ映画館通いを再開しようと考えてはいるのだが、何しろ日本で1、2を争う文化過疎地な県故、今回みたいに観るべき映画(観たい映画)が常時上映されているとは思い難い。別の場所にあるミニシアターでは『PERFECT DAYS』を上映していたみたいだが、結局観ずに終わった…。