十和田湖畔でドローンを飛ばしていた道夫(細川佳央)。操縦を誤ってドローンは歩いている男の頭の上に転落。急いで駆け寄るとその男は幼馴染の輝雄(櫻井拓也)だった。取り敢えず家に連れて行く道夫。輝雄は父が腰を悪くして農作業が出来ないというので二年ぶりに帰郷したのだ。ひとまず実家へ行く事にした輝雄だが両親が交接の真っ最中だったのでまた道夫宅に戻って来る。やはり道夫の幼馴染・雅美(川上奈々美)は自宅で道夫との思い出の品を見つけ…。

 

 成人指定のピンク映画がTV放映される場合はRー15ヴァージョンになり、タイトルも改題される。だが中には先行してR-15版で劇場公開するケースもあり、紹介する時はどのタイトルで紹介すればいいのかと迷うな。本作の場合は特集上映用に『サイコウノバカヤロウ2~青森純情編』のタイトルで劇場公開~『発情物語 幼馴染はヤリ盛り』としてR-18版で再上映~『幼なじみ 発情てんこ盛り』と再々改題されてTV放映。ピンク映画一筋・竹洞哲也68本目の監督作品で、17年公開『『レンタル女子大生 肉欲延滞中』(原題『サイコウノバカヤロウ』)の続編に当たるらしい。ヒロインの川上奈々美は元AV女優&ストリッパーとして活動していた。

 

 輝雄は「自分レンタル業」を自称しており、道夫の父・義春は自分が勤める役場観光課の仕事の為に輝雄をレンタル。雅美は義春の部下だった。都会生活に敗れUターン後は引きこもりになっている道夫に恋してる雅美。輝雄は観光PRのCMのディレクターをやる事に。すると街頭でアイドルパフォーマンスをしていたアラサー熟女が売り込んできて呆れる輝雄。翌日義春に呼ばれて役所の一室に顔を出す輝雄。するとそこにいたのは雅美のみで自ら衣服を脱ぎ挑発、呆気に取られる輝雄の上に…。予想外の展開にウハウハな輝雄。でもそれは妄想に過ぎなかった。道夫も輝雄たちの仕事に加わってくれる事を期待したが、そういう気配は無くて…。

 この監督の作品を観るのは初めて。多分本作の様な青年コミック誌漫画ぽい作風を持ち味にする人で、ハングリーな毒性は無い。自閉的になってしまった親友を、実質的主人公である「輝雄」が、親友の恋人「雅美」と共に立ち直らせようとするストーリー。輝雄の濡れ場は全て妄想上の事として処理され、現実では親友を裏切っていない(雅美とSEXしない)設定が特徴。輝雄は所謂「いい人キャラ」なのだが演じる櫻井の、癖のある芸風は正直やや苦手であった。R-15版にする為に濡れ場を大幅に短縮、それ以外のシーンを付け加え編集されているのだが、結果的にその分冗長になってしまった感否めず。本来成人ヴァージョンで観るべき。

 

作品評価★★

(櫻井拓也はピンク映画とインディーズ映画中心に活動してきた人だったが、本作撮了後に急逝したとの事…。アラサーだった川上奈々美始め出演する女優は年齢高め。冒頭の屋外ロケの風景なんかは美しく、閉鎖的なピンク映画状況を打ち破らんとする気概は感じられたが)

 

付録コラム~1971年の榊原るみ

 俺が小学生から中学生になる時期、一番気になっていた女優は榊原るみだったかもしれない。多分最初はホームドラマとかで見たんだろうが、キュートな容貌と愛くるしい笑顔がまるで太陽の様に輝いていて、マセガキだった俺でもTVで彼女を観て心がキュン!とさせられた物である。

 

 1971年の榊原るみは彼女にとって重要な3本の作品に出演した。まず円谷プロウルトラシリーズ第4弾である『帰ってきたウルトラマン』。地球防衛軍『MAT』隊員で、かつ帰ってきたウルトラマンでもある郷秀樹(団次郎)の恋人・坂田アキ役。『ウルトラセブン』のモロボシ・ダン&アンヌ隊員とは違い、最初から郷の恋人として設定されていた。少年向けドラマとしては画期的なシチュエーション。怪獣に襲われたりして再三ピンチに遭うが、帰ってきたウルトラマンに救われたりして、益々郷との絆を高めていくアキであったが…。

 

 次にゴールデンウィ―ク公開の映画『男はつらいよ・奮闘篇』。シリーズ第7作で青森育ちのオツムの弱い純情娘・花子役。騙されて働かされていたバーを逃げ出しラーメン屋で寅さんに救われ、彼の勧めで「とらや」の居候となり、とらやに帰って来た寅さんと再会。無邪気に「寅さんのお嫁さんになる」と言い、寅さんは満更でもない(とらやの人々による「オツムの足りない者同士結婚し、子供が生まれたら大変な事になる」という、当時でもヤバい発言があるけれど)、結局恋バナも花子の求愛はオツムは弱い故の冗談とされ、彼女は郷里へと帰っていくのだ。

 

 最後は秋の改編より放映開始されたTVドラマ『気になる嫁さん』。婚約者が急死した坪内めぐみ(榊原)を巡る、彼女の義兄になるはずだった連中の恋の鞘当てをも織り込んで描かれるホーム・コメディ。テレビドラマ史的には「キング・オブ・ホームコメディ」石立鉄男誕生となった記念すべき作品だが、野郎目線では可愛い、性格良し、ちょっとH(スカートが短か過ぎてパンツ見えそう)の三拍子揃った榊原るみを鑑賞する為のドラマであった。毎年の様にケーブルTVで再放送されており、その人気は不朽レベルである。

 結果的にはこの3本が榊原るみの女優としての代表作になってしまった。そのイメージが強過ぎて、映画では『男はつらいよ』『気になる嫁さん』のキャラクターの延長線上を求められてコメディ作品中心の活動となり、TVドラマでは脱清純派を目指した様だが役柄に恵まれなかった。後年熟女年齢になってから映画でヌードシーンを披露したが、正直やらない方が良かったと思う。

 僅か1971年限定ではあっても輝いていた榊原るみ。それだけで俺の裡ではレジェンドアイドル女優なのだ。惜しむべくは『気になる嫁さん』との兼ね合いもあって、『帰ってきたウルトラマン』を兄役の岸田森共々途中降板になってしまった事(ドラマ内で死亡)。去年の団時朗(団次郎から改名)の葬儀の際、榊原るみも出席し他の出席者と一緒に泣きながら『帰ってきたウルトラマン』の主題歌を合唱したという。帰らざる1971年の想い出…。