タイピストの敬子(西恵子)と同僚の三木(和田浩治)とは敬子の親も認める恋人同士だが、体を求めてくる三木と一線を越える決心がなかなかつかないでいる。或る日出勤途中の電車の中で痴漢に遭った敬子をとある中年男が助けてくれた。会社に着いた敬子は彼が長い海外赴任から帰国したばかりの加納部長(二谷英明)だと知る。以来敬子は加納の事が気がかり。三木に聞くと加納は妻子のある身ながら平気で浮気を繰り返すプレイボーイだというのだが…。

 

 本作の主演・西恵子の名は特撮ドラマ『ウルトラマン』シリーズ好きなら知らない人はいないだろう。第五作目となる『ウルトラマンA』で超獣と対決する超獣攻撃隊『TAC』の女性隊員・美川のり子を演じた事で有名。ただその前は日活に在籍していたとは今回の作品で初めて知った。丘みつ子、沖雅也などと同時に青春スターとして売り出されたらしいがニューアクション路線に走った日活では出番が少なくテレビ方面に転向する事に。本作は最初で最後の西恵子の主演作。女性週刊誌の読者体験手記から構想を得て、歳の離れた中年男に恋してしまった若い娘の選択を当時の風俗を混じえて描く。人気歌手『ヒデとロザンナ』初め有名人が出演。

 

 遣り手の加納は退社後も仕事関係で動く事が多く、敬子は彼の商談で使う書類をタイプしたりして親しくなっていく。敬子はプレイボーイである事を隠そうとしない加納の態度が悔しいのだが、妻子持ちの彼に体を許す勇気はない。いっそ忘れられないものかと三木を誘って休日デートに出かけたりもしたが、三木の性欲剥き出しな態度に接すると余計加納の事が恋しく思えてしまうのだった。それが面白くない三木は反加納派閥の上司に組して加納の行動を見張るスパイとなる。わざとらしくつれない振りをして妹の友人の娘を加納にあてがったりもした敬子だが滔々想いを抑える事ができなくなって、ある雨の夜加納の自宅へ足を向けてしまう…。

 

 ナイスミドルな男に心を奪われてしまったヒロイン。そのひたむきさと共に同僚BG(ビジネスガール)の姿も点描され作家志望の夫を抱え子供産むのもままならない女、対照的に先輩OLの男を平然と寝取る奔放女など、当時の「昭和元禄」に照らし合わせた人間模様も語られるが、新人だった西恵子の緊張感いっぱいの演技と、それを取り巻く風俗描写が終始ちぐはぐというか、無理に今風気取ろうとする演出はややハズい感じ。後の都知事(青島幸男)が「女なんて暴力的に犯されるのが好きなんだ」と超セクハラ発言したり、「さそり」(太田雅子=梶芽衣子)が自ら男に体を委ねたりするシーンはお宝的見どころだが、映画としては大した事ない。

 

作品評価★★

(思わせぶりなタイトルやストーリー展開など、日活ではなく大映が濫作していた添え物B級映画に近いテイストを感じた。その意味では後の『ダイニチ映配』の登場も違和感はなかった…という事だろうか。丘みつ子の初主演作も本作と同じような「性典物」だった記憶があるなあ)

 

映画四方山話その633~ウルトラマンA第四話『三億年超獣出現!』

 

 西恵子、ウルトラマンAとなると俺の脳裏に浮上してくるのがウルトラマンA第四話『三億年超獣出現!』(監督・山際永三 脚本・市川森一)。西恵子扮する美川のり子隊員がこの回の主役だ。美川隊員は高校時代の同級生で今は人気漫画家の久里虫太郎(清水紘治)から同窓会をやるからと言われ、彼が一人で住む洋館へと向かう。行ってみると同窓会は嘘で呼ばれたのは美川隊員だけだった。実は久里は高校時代美川隊員が好きでラブレターを出したのだが読まれもせず返された(美川隊員はその事を覚えていない)。それを恨みに思い続けていた久里がデパートで偶然美川隊員に再会したのをいい事に今回の凶行を思いついたのだ…。

 高校時代の屈辱体験が人間社会への怨みに繋がり、地球を破壊すべき久里が考案しで描いた漫画の中の超獣が「ヤプール」のテレパシーとシンクロする事で現実に現れる…というストーリーはさておき、美川隊員の監禁場面が凄い…というかエロい。久里は緊縛の心得もあるらしく屋根裏部屋で睡眠薬を仕込んだジュースで眠らせた美川隊員を逆エビにうつ伏せ状態で縛り上げる。何故か美川隊員が履いていたはずのストッキングは脱がされて素足、ミニワンピースはめくれあがってもう少しでパンティ見えそう。気が付いたが身動きできない美川隊員に結婚を迫る久里。美川隊員の貞操は正に危機一髪…。

 少年向けドラマとは思えないSM嗜好の演出。実際美川隊員は拘束されているのだから久里が思いを遂げようとすれば簡単にできそうな物だが、久里は同時進行で自分が編み出した超獣を操る(ペンで超獣が街を破壊するシーンを描けば現実にもそうなる)事にも懸命になっており、それが自滅へと繋がってしまうのだが…。

 

 久里虫太郎(日本三大奇書推理小説の一つ『黒死館殺人事件』を書いた小説家・小栗忠太郎をもじった名前)を演じた清水紘治の好演というか狂演というか、それもまた特筆もの。清水紘治はウルトラシリーズに縁が深い鬼才・実相寺昭雄お気に入りの俳優で、彼の主演に固執したばかりに実相寺はメジャーの東宝で作品を撮る機会を逸した事もある。

 それにしても実相寺が監督したウルトラセブン第12話が放送を封印され、こんなアダルティックなシチュエーションがある作品が普通に放映され子供でも観れるというのだから不思議だ。実際俺が観た時もういいオッサンになっていたが、それでも興奮した。という事はリアルタイムで観たら…と考えたりもする。

 ちなみに西恵子は『ウルトラマンA』以降は昼メロドラマの分野でアダルトな女優(これはエロい意味ではない)として活躍していた様だ。