崩壊寸前のソビエト連邦の化学兵器工場に006ことアレック(ショーン・ビーン)と共に侵入した007ことジェームズ・ボンド(ピアーズ・ブロスナン)。指令通り工場爆破に成功したがアレックはソ連軍に囚われたまま見捨てる形に。その九年後。ボンドは崩壊後のロシアで暗躍する犯罪組織『ヤヌス』の調査の為モナコへ。そこでヤヌスのメンバーで元ソ連空軍パイロットのゼニアをマーク。ゼニアはボンドの仇敵であるウルモフ将軍と共にNATOの戦闘ヘリコプターを奪う…。

 

 今年10月に25作目の新作が公開予定の『007』シリーズ。俺が初めてこのシリーズを観たのは77年の『私を愛したスパイ』が最初でボンド役はロジャー・ムーア。メインのボンドガールは現在リンゴ・スターの奥さんのバーバラ・バックだった。それからもう44年も経ったけどスクリーンの中のジェームス・ボンドは演者を代えながらも現在も諜報活動に励む一方で万年モテキ生活を送っているのであった。今回観たのは第17作目でこの作品からジェームズ・ボンド役はティモシー・ダルトンからピローズ・ブロスナンにチェンジ。ニュージーランド出身のアクション派監督のマーティン・キャンベルが監督を務めショーン・ビーン、イザベラ・スコルプコらの共演。

 

 ゼニアとウルモフはヘリコプターでロシアの秘密宇宙基地に侵入、ソ連時代に開発された秘密兵器『ゴールデンアイ』の起動キーを奪いそこで働いている職員を皆殺しにしたが、コンピュータープログラマーのナターリア(イザベラ・スコルプコ)は奇跡的に生き残り基地を脱出。それを知ったボンドはゴールデンアイとヤヌスの正体を求めてロシアに飛ぶ。一方ウルモフは国防大臣から秘密基地に生存者がいた事を知って驚く。ナターリアは同じプログラマーのボリスも生き残っていた事を知り彼と連絡を取るが、ボリスは実はヤヌスの手先でナターリアは囚われの身に。ボンドは元CIAメンバーと元FBIメンバーのコネでゼニアとの接触に成功するが…。

 

  ジェームズ・ボンドと地球制圧をも企てる犯罪組織との対決。007シリーズのコンセプトは単純に言えばかの仮面ライダー対ショッカーと同じ構図なのだ。冷静に考えればそんな巨大組織の存在など現実には殆どリアリティーがない様に思えるのだが、それがアナログ時代から続くスパイアクションの王道ではある。ソ連崩壊~その後の時代設定の下、ボンドはロシアからキューバへと舞台を移しながら闘い続ける。白昼誘拐したヒロインを乗せた車をボンドが戦車を操り追跡する下りがアクションシーンの白眉。戦車がこんなにスピード出る物とは思わんかったが。ボンドガールとの色事は清楚系インテリ美人とサディスティックな悪女の二本立て。

 

作品評価★★★

(ボンド役のブロスナン始め馴染みの薄い役者ばかりの中、唯一馴染みがあったのは60年代から米国映画のアクション映画などで活躍していたジョー・ドン・ベイカー。調べてみると本作を含めて007シリーズには三度出演。レギュラー陣ではない人としては最多出演なのでは?)

 

映画四方山話その616~2020年キネマ旬報日本映画ベストテン~その②

 前回に続きキネ旬ベストテンに選定された作品のチェックをしてみよう…という事で。

 第6位『37セカンズ』。日米合作作品で米国で映画製作を学んだ女性監督のデビュー作とか。デビュー作でいきなりベストテン入りとは次作のプレッシャーは相当な物になりそうだが…。障害者であるヒロインの成長ストーリーらしい。こういう設定だと綺麗ごとになりがちなのだが、そうはなっていない所が長所であると思われる。確かにこういう非商業的な企画は日本のメジャー会社では御法度なのだろう。多分某24時間テレビみたいな事しか出来なさそうだからね。

 第7位『罪の声』。この作品については俺も事前に知っていた。あの「かいじん21面相」が起こした事件をモデルにした小説の映画化で、あの時の脅迫電話に使われた子供の声の主に注目したストーリー。監督は佳作『ビリギャル』の土井啓泰で小栗旬と星野源の共演だから話題になって当然の作品ではある。まあ今回のベストテン作品の中では一番のエンタメ系だと言えるのかも。ちなみに事件当時俺の友人に「ビデオの男」とそっくりな者がいたのを思い出す。

 第8位『喜劇・愛妻物語』。これも内容は多少知っている。『百円の恋』の脚本家・足立紳が書いた自伝的小説を自ら監督した作品で主人公は売れない脚本家…って超ベタな設定。そんなダメ夫と彼を尻に敷いている妻の物語なのだが、主演が濱田岳っていうのがちょっと引っかかるというか、一時期濱田岳出演作を数多く観ていた時期があり、やや彼のキャラクターに飽きてしまった所もあったので。その意味でいかにもってなキャステイングがどうかなと思うけど。

 第9位『空に住む』、高層マンションに住んでいるヒロイン(多部未華子)の再生ストーリーらしい。監督は一時映画マニア間では特に評判が高かった青山真治だが、ヒロインが多部未華子だったり岩田剛典が共演したりしてるので決してマニア向けに製作された作品ではないと思う。その部分で青山真治の作家性との兼ね合いはどうなっているんだろうという興味と不安が相半ばする部分は否めない。ただ脇役陣が特に豪華なのでその点では観てみたいと思うが。

 第10位『アルプススタンドのはしの方』。ピンク映画から身を起こしエロ系Vシネなどで実績を積んできた城定秀夫の異色青春ストーリー。データーを見てみると小品にも関わらず製作委員会方式で製作されている。それだけ資金集めに苦労したという訳か。出演者も無名俳優ばかりだし普通なら埋もれてもおかしくない作品が話題になりベストテン入り…という事は、それだけ見どころがある作品かと思ってしまうし、こういう小品にエール送りたい気持は常にある。

 

  現在の俺の生活事情では映画館に行く事は殆ど不可能で、今回のベストテン作品も『日本映画専門チャンネル』などで放映されるのを待つしかないのだが…。古の邦画の方に愛着がある事は否めない俺だが、それでも日本映画の新作方面にも出来るだけ気を配って接していきたとは思っている原達也なのです。