スケバングループの首領だったナミ(梶芽衣子)は手下を痛めつけたヤクザの矢島を誤って殺してしまい刑務所入り。にも関わらず矢島の妻・冴子は減刑嘆願書を提出してくれた。その恩に報いるべく三年後出所したナミは東京へ向かう列車の中で大和田興業に追われていた紳之助(梅宮辰夫)と妙な形で遭遇。銀座に着いたナミは父の友人でビリヤード店主・原田の厄介に。冴子は体を悪くして銀座で経営していたクラブを大和田興業に乗っ取られてしまって…。

 

 日活から東映に移籍、『女囚さそり』シリーズ主演でブレイクした梶芽衣子。だが本来梶芽衣子は引退した藤純子の女任侠路線を引き継ぐ後釜として東映に移籍入社したのだという事を、俺はさっき初めて知ったのだ。その移籍第一弾シリーズとして企画されたのがこの『銀蝶』シリーズで、本作と同じ年に二作目『銀蝶流れ者・牝猫賭博』が製作されている。70年代中期に千葉真一と志穂美悦子の空手アクション作品を連発して存在感を示した山口和彦が監督を務め、山本英明とのコンビで『不良番長』シリーズの脚本家として知られる松本功が山口監督と脚本を共作。共演は渡瀬恒彦、梅宮辰夫、小山明子など。歌唱シーンで五木ひろしも登場。

 

 ナミはホステスの口入れ屋・隆次(渡瀬恒彦)の紹介で冴子の友人・佳代がママを務めるクラブ『ブロンコ』にホステスとして入店、契約金や稼いだ金は殆ど名乗らずに冴子に渡した。しかしブロンコにも大和田の魔の手が伸びており、店の権利書を不法入手してブロンコに嫌がらせを開始。紳之助は佳代の恋人で隆次の兄貴分でもあった。佳代を助けてブロンコの為に身を粉にして動いていたナミだが、彼女の前科がホステス仲間にバレた上に大和田の引き抜きで多くのホステスがブロンコを去っていった。大和田の卑劣なやり方を止めるべく原田はビリヤードの心得があるナミにブロンコの権利書を取り戻すべくビリヤード勝負を提案する…。

 

 五木ひろしが登場する事もあり東映が60年代後期から70年代前半にかけ製作していた『夜の歌謡シリーズ』を彷彿とさせるテイストがあり(梅宮が良く出演していたし)。ヒロインの名前はさそりシリーズと同じなのは偶然か? ただ梶芽衣子のキャラはさそりと違って能弁で珍しいミニスカ姿まで披露(ビリヤードシーンで際どい太腿露出も・笑)。そんな猥雑感ありつつも最後は藤純子ばりに和服姿に着替えて殴り込み。同行役が後にチンピラ役として才能開花する渡瀬。ただ時代は現代である事もあり、一台パトカーが来て梶と渡瀬を連行するだけ…と任侠映画にしてはちょっと侘しいエンディングであった。東映B級映画好きの人向き作品だろう。

 

作品評価★★★

(ブレイク直前の梶芽衣子を拝めるという意味では貴重な作品。渡瀬にしても同様の事が言えるだろう。悪役の南原宏冶は確か『修羅雪姫』シリーズでも梶に叩き斬られていた記憶が。由利徹の出演があったりして典型的なB級映画路線ロードをひた走る山口監督なのであった)

 

映画四方山話その599~今年観て良かった作品ベスト10(初見作限定)

 

『ピンクの豹』(63年 監督ブレイク・エドワーズ 主演デビッド・ニーブン)

 

『フレンチ・コネクション2』(75年 監督ジョン・フランケンハイマ― 主演ジーン・ハックマン)

 

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14年 監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 主演マイケル・キートン)

 

『散歩する霊柩車』(64年 監督・佐藤肇 主演・西村晃)

 

『新・男はつらいよ』(70年 監督・小林俊一 主演・渥美清)

 

『ガントレット』(77年 監督&主クリント・イーストウッド)

 

『ともだち』(74年 監督・澤田幸弘 主演・阿部仁志)

 

『私たちのハァハァ』(15年 監督・松居大悟 主演・井上苑子 大関れいか 真山朔 三浦透子)

 

 

『アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17年 監督クレイグ・ガレスピー)

 

『バイス』(18年 監督アダム・マッケイ 主演クリスチャン・ベール)