ウジン(ソ・ジンブ)は息子のジホと二人暮らし。妻のスア(ソン・イジェン)は一年前病気で亡くなったが、亡くなる寸前ジホを心配させない為「雨の降る季節に戻ってくる」と言い遺していた。ジホはそれを信じ梅雨になったから母が帰って来ると信じ、そう書かれている妻がくれた絵本を毎日読み返している。ある雨の日ウジン母娘は廃線になった鉄道のトンネルでスアを発見。驚愕するウジン、狂喜するジホ。だが彼女はウジン親子の事を全く覚えていなかった…。

 

 03年に発表された原作小説がベストセラーになり翌04年に竹内結子、中村獅童の共演で映画化された『いま、会いにゆきます』。だが俺はこの手の「よみがえり物映画」に食傷気味だったのでパス、未だに観ていない。翌年にはTV版も製作された程だから多分大ヒットしたんだろうな。その作品が韓国で18年になってリメイクされた。そのタイムラグはなんだろうな…と思ったりもしてしまうが。イケメン俳優のソ・ジンブが主演、何とヒロイン役は先日『頭の中の消しゴム』で観たばかりのソン・イジェン! その作品から十年近く経っているのだが相も変らぬ美しさ。日本では韓国より一年遅れての公開になったが、話題になっていた印象はないけど…。

 

 取り敢えずスアを自宅に連れ帰ったウジンは、記憶を失った彼女に結婚するまでの馴れ初めを語る。スアの通う高校に水泳特待生として転校してきたウジン。優等生のスアに一目惚れするが敷居が高くて告白する勇気がない。ウジンの友だちになったホングに後押しされたが結局卒業まで親しくなる事はなかった。別々の大学に入った二人だったが、ボングの叱咤もあり漸くスアとデートに漕ぎつける事に成功。ブスッとした表情だったスアだがそれでも再度の約束に漕ぎつけ、二度目のデートで二人の仲は急接近して恋人関係に…。そんな回想を聞いたりして親子と一緒に暮らすスアは、記憶を取り戻さずともウジンを愛し始めていた…。

 

 日本版を観ていないので正確な比較はできないが、韓国映画風にアレンジしているらしい。主人公の親友役はこの作品のオリジナルキャラでいかにも韓国映画らしい三枚目。突然出現した現在のヒロインの心の動きと、主人公が彼女に出会うまでの回想ストーリーが並行して描かれ、梅雨が終わりヒロインが姿を消す下りになって現在と過去が重なり合う事に。その顛末を文章化するのはかなりややこしく『頭の中の消しゴム』みたいなストレートに理解できる「純愛」ではないのだが、ヒロインの選択に儚なさを感じ得ずにいられない所は『頭の中~』同様で、その儚さの味わいが日本映画の白々しい難病物などの「純愛」と異なる部分だと思うな。

作品評価★★★

(現在と過去が同時進行的に描かれる語り口は『世界の中心で、愛を叫ぶ』の影響が強い様にも思うけど、幸せと悲しみは隣り合わせ的な世界観は嫌いじゃないよ。配信ドラマ出演で今は日本でも人気沸騰中のソン・イジェンの大人女性演技にも、また惹かれる所はあったな)

 

映画四方山話その591~竹内結子

 竹内結子といえば『いま 会いにゆきます』に限らず「よみがえり物映画」のヒロインの印象が強いから、正直個人的にはそんなに興味がある女優ではなかった。そんな彼女が個性を発揮し始めたのは『サイドカーに犬』(07)辺りからか。妻が家出した家庭に入り込んできて破天荒な行動を繰り返しつつ一家の娘と心を通わせてゆくという役柄はそれまでの清純派演技とは全く違う物で、多分『いま~』で共演した中村獅童と結婚~出産~離婚による私生活での出来事がある意味女優としての彼女を吹っ切れさせた…との推測もできる。この作品で彼女はキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞をゲット、新境地を開いたと言えよう。

『チーム・バテスタの栄光』(08)『ジェネラル・ルージュの凱旋』(09)の、一見頼りなさげに医療トラブルを調査する厚生省の役人(阿部寛)とコンビを組む昼行燈的な内科医役も良かった(原作小説ではこの役は男性だった)。彼女にとっては初の三枚目的なキャラでもある。

 朝のNHKテレビ小説『あすか』(99)出演以降はTVでも主演、ヒロイン格での出演が当たり前になったが、あいにくTVドラマは全く観ないのでテレビドラマでの彼女はどうとか語る資格はない。そんな好感度女優になると映画出演も段々無難な作品が多くなっていった印象で、まあCMなどに多数出演してる所属プロダクションの稼ぎ頭としてはあまり冒険は出来なくなった…という所か。

 そんな中『クリーピー、偽りの隣人』(16)では家族内の生活に侵入して洗脳殺人を繰り返す狂気の殺人者(香川照之)に洗脳されそうになる、幸せな様で何処か拠り所を探しあぐねている主人公の妻に扮した。こういう個性が強い監督(黒沢清)の作品に出演するのは初めての事であり、本人としても40代に向けて女優として新たな展開を考えていたのかもしれないけど。

 出演作は多いのだが、この手の王道ヒロイン的な女優と俺の映画嗜好とはやはりズレがある様で、「映画女優竹内結子」について俺が語れる事は数少ない。報道では自殺の動機は不明と伝えられていたが一人暮らしではあるまいし近しい人には必ず思い当たる事があるはず。事件性はないので真相は発表されず闇の中のまま終わるのであろう。今一度ぶっ飛んだ竹内結子の演技を見たかった。