会社の上司と不倫関係だったスジン(ソン・イジェン)は不倫相手と駆け落ちの約束をしていたが、裏切られ失意のどん底に落ちる。そんな娘を気遣って建設会社社長の父は気晴らしに建設中のビルの現場視察にスジンを同行させる。そこでスジンは作業員のチョルス(チョン・ウソン)の姿を見てハッとした。不倫相手に裏切られた夜、スジンはコンビニで間違えてチョルスの買ったコーラを飲んでしまったのだ。或る日仕事で店舗の改築を担当する事になったスジン…。

 

 日本で公開された韓国映画としては空前の大ヒットになった『パラサイト 半地下の家族』(19)。それ以前に一番日本でヒットした韓国映画が本作。時代は韓流ブーム真っ盛りの頃で本作もそのブームに乗って大ヒットしたと言えるのだが、今回調べてみるまで本作の原作が日本のテレビドラマだったとは全く知らなかった。読売テレビ制作で01年に放映された『Pure Soul~君が僕を忘れても』(主演・永作博美)がそれで、日本公開の時には永作が記者会見の為来日した監督と主演のチョン・ウソンに花束を渡したとか。その後日本で再リメイク版のドラマが制作されたり朗読劇として定着したり、ラブストーリーのスタンダードになった模様だ。

 

 父に改築業者を紹介してもらうスジン。現れたのはチョルスだった。思わず隠れてしまったスジンだがチョルスはあの時の事を覚えていた。その直後ひったくりに遭ったスジンのバックを取り戻してくれたチョルス。それをきっかけにスジンの心はチョルスの虜になり、二人は晴れて恋人同士に。建築士を目指しているチョルスを励ますスジン。父はスジンが恋愛している事を察し恋人に会わせてくれと言いチョルスと食事の席で顔を合わせる。しかしチョルスは結婚には消極的だった。ショックのあまり失神してしまったスジンを見て、難色を示していた父も承諾して二人は結婚。建築士にも合格し二人の未来はバラ色かと思えたがスジンの健忘症が…。

 

 主人公とヒロインが出会い結婚に至るまでの流れはかなりベタなのだが、結婚してまもなくヒロインの病気が若年層アルツハイマー症だった事が判明。記憶が錯綜した結果、不倫相手と破局した事も忘れ自宅に招き入れているヒロインをの姿を目撃した主人公の慟哭が痛ましい。しかし主人公は諦めず姿を消したヒロインを探し求め、彼の記憶を失ったヒロインを、二人の周囲の人々の協力を得て呼び戻すラストシーンが感動的。韓流ブームという時の勢いが味方した部分もあるのだろうが、意外と洗練された映像感覚はストーリーのベタさを幾分も和らげてくれる。そして何よりもヒロイン役のソン・イジェンのチャーミングさに見惚れてしまったな。

作品評価★★★★

(若年性ではないけどアルツハイマー症は俺にとっても他人事じゃないテーマなので…。記憶は新しい物から消えていくという事は、感動のラストシーンがあっても何れヒロインは主人公の事は忘れてしまう。そのはかなさが日本人受けするのだろう。米国映画にはないセンス)

 

映画四方山話その586~実刑では復帰が難しい新井浩文被告

 今回の作品の主人公を見て新井浩文を思い出した…と書くと色々問題がありそうなのだが、個人的所感なのであいすません。すると偶然にも新井浩文被告の二審判決のニュースが。懲役四年の実刑判決だった。

 被害者とは和解が成立したというのが弁護側の拠り所だったが、それでも原告側が告訴を取り下げていないのは、被告の謝意は認めたけどその行為自体を許すのとは別問題という事だろう。しかし弁護側の主張は無罪。法律に感じてはど素人の俺だが「無罪」って事は被告には何の落ち度がないと言ってるのと同じに思える。検察側との温度差はかなり大きいと言わざるを得ない。よう分からんけど弁護側が被害者に精神的及び肉体的な苦痛を結果的に与えたと認めた上で、被告には悪意がなかったとして執行猶予付き刑を望む…というのならまだ検察側との歩み寄りがあった様に思えるのだが。

 今までも逮捕歴があるタレント、芸能人、歌手などが復帰を果たしていると言っても、彼らは実刑は食らってはおらず、懲役を経験した人が第一戦に復帰した…という例は聞いた事がない。今の流れのまま裁判は進めば最高裁で刑期は短くなっても実刑判決は免れないだろう。それも含めた上で出所した新井被告に復帰のお膳立てをする映画人はいるのかな? まあVシネ業界なら多分話題性含みでオファーはするだろうけど。でもそれだとちょっと哀し過ぎるね。ともかく最低でも執行猶予がつかない限り新井被告の映画界復帰は絶望的だろう。