最近『週刊プロレス』の誌面を女子プロ関連記事が飾る事が多い気がする。新型コロナウイルス禍によって多くの男子の団体が興行停止状態に陥った事もあり、男子プロレスの話題が乏しいという台所事情もあったのかもしれないが、一時女子プロレスと言えばどうしても暗い話題になりがちだった事もあり、この様な流れでも女子プロレスがそのイメージを払拭する事に繋がるのなら歓迎すべき事であろう。

 そんな中元レジェントプロレスラーの一人、「デンジャラス・クイーン」の異名を取った北斗晶が『アッセンブル』という組織を立ち上げ女子プロレス人気の底上げに一肌脱ぐ事になったとの記事が。北斗晶といえば90年代女子プロレスブームの立役者の一人で、元々は『全日本女子プロレス』のトップを狙えるベビーフェィスだったのが、途中からおっかないメイクを施しヒール色も打ち出した個性派レスラーに変身、団体対抗第一戦となる93年4月2日横浜アリーナ大会で神取忍との血みどろの戦いを制した事で、事実上全女子レスラーのトップに君臨した。

 その後も現役レスラーながら同じレスラー・佐々木健介と結婚。全女退団後は長与千種が起こした『GAEA JAPAN』に入団、02年まで現役生活を続け引退後はマネージャーとして夫のレスラー仕事を支えながらTVで「鬼嫁キャラタレント」として定着、ただ自前で行っていたプロレス団体経営は上手くいかず、夫の現役引退(14年)以降はタレントに専念する形でプロレス界とは関係を断っていた。

 とはいっても苦楽を共にした同期との交流は続いていた様で、今回の組織立ち上げも全女同期の現役レスラー、堀田裕美子のデビュー三十五周年興行への協力話が新型コロナウイルス禍と重なってしまったのがきっかけだったと言う。「ひとつの団体が興行を打つのも困難な現状を、現存する団体が協力して乗り越えて行こう」という意図を反映すべき為の組織であり、新団体ではないし現役復帰もないと北斗は断言しているとの事。

 北斗晶の知名度は女子プロレスラーOBの中でも抜群である。その名前を宣伝材料に女子プロレスの人気の底上げを図ろうとするやり方に異議はないし、現役復帰なくともマネージャーみたいな形での復帰ならあり得るのではないかと俺は予想する。

 記者会見の席には長与千種を始めとする女子プロレス界のビッグネームが顔を並べ壮観ではあったが、その顔ぶれはそれこそ90年代のプロレスブームまでの人で占められていた事には複雑な思い拭い去れない部分もある。禁断の対抗戦に手を出してしまった女子プロレス界は、対抗戦が一段落した後それを超えるインパクトが打ち出せず凋落の一途を辿ってしまった。新たなスター選手不在が長与を始めとするレジェントレスラーのプロレス業界復活や現役生活の延長に繋がっており、何のかんの言ってもリングに上がる事はいつまで経っても捨てがたい魅力があるのだろう。

 しかしプロレスブーム以降のスター選手の不在は女子プロレス業界の小粒化に繋がり、21世紀に入ってずっとその様な状況が続いている。現在WWE女子レスラーのトップにいるASUKA(旧名・華名)に至っては、日本の女子プロレス界からつまはじきにされた末海外でチャンスを掴んだのだ。そういうプロレス界特有の閉鎖意識を打破する様なアイディアを、期待したいのだが。

 

 その一つのアイディアとして、興行と同時進行でプロレスラー養成塾みたいなのを立ち上げ、そこで逸材とされた新人をアッセンブル加盟団体がドラフト会議で指名する…とか。それとは別にスカウトみたいな形で逸材を一本釣りするのもいいだろう。ここ数年アイドルグループ『SKE48』の松井珠理奈がやたらプロレス番組及びマスコミに登場している。彼女はTVドラマで『ハリウッド JURINA』というレスラー役を演じた事があり以来プロレスに熱中。彼女は近々SKE48を卒業予定だが正直アイドル村を出て芸能界でブレイクできる程のスキルはないと俺は思う。いっそ彼女を本職レスラーにスカウトしデビューまでの密着映像をネットで流せば、それなりの話題を呼ぶデビューになると思うのだが。

 彼女の鬼コーチ役は堀田裕美子が適役。今はどうだか知らぬが彼女は全盛期のAKBオタだった。同じ48グループ出身の秋元康溺愛メンバーだと判れば、彼女の指導(しごき?)にも一層熱が入るという物。そんな風に従来のやり方ではなく女子プロレスを盛り上げてくれる事を北斗晶に期待したい。