元名保安官として知られたジャッド(ジョエル・マクリ―)だが年老いた今は往年の面影もない。そんな彼に銀行が仕事の依頼を。シェラ山中で金鉱が発見され掘り当てた金を預ける為に銀行に出張要請があり、元名保安官の経歴からジャッドに白羽の矢が立ったのだ。黄金を預かっての帰り道は強盗襲撃などの危険が予想される。そこでジャッドは日当10ドルで同行者を雇い入れる事に。彼が選んだのは旧知のガンマン・ウェストラム(ランドルフ・スコット)で…。

 

 TVドラマで実績を積んだサム・ペキンパーが『荒野のガンマン』(61)で劇場映画監督デビューしたのは61年。その翌年に製作されたのが本作。年老いた元保安官が昔馴染みと共に金塊運搬の仕事にありつくという西部劇。主役に扮したランドルフ・スコットは戦前から活躍した西部劇スターだが、本作が俳優引退作となった。保安官役のジョエル・マクリ―も同じく戦前から映画に出演していた西部劇スターで、往年の人気スターの共演作となった訳だ。ヒロインのマリエッド・ハートレイは本作が映画デビュー作で、10年前ぐらいまでB級映画を中心に女優活動を続けていたみたいだ。ペキンパー作品の常連ウォーレン・オーツも顔を出している。

 

 ウェストラムの紹介でヘックという若者も一行に加わる事に。三人は山に登る途中頼んで

 小さな牧場の納屋で寝るが、牧場の娘エルサ(マリエッド・ハーレイ)は山で金を掘っているビリーと結婚の約束をしていた。彼女に一目惚れしたホックだが婚約者がいるのでは手を出しかねる。エルサは一行に同行しビリーに会いに山に登る事を決行。山へ着いた一行。エルサは直ぐビリーに会うが彼は彼女が思っていた様な男ではなかった。戸惑うエルサを尻目に結婚式は強行され、エルサはビリーの兄弟たち共有の女にされかかる。ヘックの気持ちを知っていたジャッドとウェストラムはヘックに手助けしてエルサを結婚会場から脱出させて下山…。

 

 かつては西部で高名だった保安官とその友人のガンマンという関係性は、そのまんまかつてライバルとしてしのぎを削った往年のライバル西部劇スターへの挽歌という雰囲気がヒシヒシします。だがガンマンは、実は若者と組んで金塊を強奪する積りだった。元保安官はそれに薄々気づきながら同行を許していたのだ。華やかさからは遠いやや枯れた展開で、エルサを奪回しようとするビリー兄弟と戦うクライマックスシーンも迫真の銃撃戦からは程遠いが、一時保安官から追放されたガンマンが加勢した事で戦況は変化。でも最終的には侘しい死が待っている…というのがいかにもペキンパーらしくはあったな。人間誰しも老いたくはないけど…。

 

作品評価★★★

(興行としては大コケに終わったらしいが随所にペキンパーらしさを感じる事が出来る、彼にとっては出世作になった作品。結果的に若者の恋を実らせる為に命を張った事になる老保安官&ガンマン。ある意味日本の股旅物時代劇に近いテイストを感じたのは俺だけなのかな)

 

映画四方山話その410~ウォーレン・オーツ

 ペキンパー映画の常連ウォ―レン・オーツが本作でもビリーの兄弟役で出演していた。ペキンパーとは彼がTVドラマシリーズの監督をしていた頃からの知り会いだというから、役者としてはペキンパーとは最も古い付き合いだと言えるだろう。本作でもそうだけど当初はロクな事を考えていない小悪党的な役柄が多かったのだが『ワイルドバンチ』(69)でメキシコ政府軍と刺し違える五人組強盗団役を演じた頃からランクアップ。『鷲と鷹』(70)の正体不明の船頭(リー・ヴァン・クリーフ)と対峙する強盗団のボス役で初の大役を掴み、先ごろ亡くなったピーター・フォンダの相棒役で『さすらいのカーボーイ』(71)にも出演。そしてとうとう「デリンジャー』(73)で初の主演ゲット。

 後に強硬なタカ派になってしまったジョン・ミリアス監督だが、この作品はそんな雰囲気など一切無い、世間の枠組みからはずれざるを得なかったアウトローの悲哀を描いた傑作だった。そして遂に師匠であるペキンパーの『ガルシアの首』(74)主役もゲット。賞金首を巡る徒労に近い殺し合いに心身共に疲労困憊していく主人公を好演した。

 この時点でもう46才ぐらいだったから、本人としては華やかなスター街道には縁遠い事を自覚していたのかもしれず、その後はまた脇役に戻って82年に亡くなる直後までスクリーンで活躍した。

 映画では癖のある人物を演じた事が多かったウォーレン・オーツだが素は情に厚い人物だったらしく、ペキンパーのみならず『ブリンクス』(78)で共演したピーター・フォーク、『デリンジャー』で共演したハリー・ディーン・スタントンとの交流は晩年まで途絶える事はなかったという。こういう人間臭さを感じさせる俳優も少なくなったなあと。