繭玉作成途中で取り出してしまった時の対処法

 

ケース飼育の場合、繭玉作成のサインを把握できていざ取り出そうと思ったらまだ作成中だったということがよくあります(画像1)。ほとんどの場合ケースの側面からその様子が確認できるのですが、中には見えない位置で作成する個体もおり、取り出してみたら幼虫が繭玉を作成している最中だったということがあります。

今回は幼虫が繭玉を作成している途中で取り出してしまった時の対処法を紹介します。

※繭玉作成のサインについてはこちらの記事をご覧ください。

 

 

画像1. 繭玉作成中のヤエマル.

 

 

画像1のような状態で取り出してしまった場合、まずケースの底に繭玉を横向きにそっと置きます(画像2)。幼虫が繭玉から出てしまっている場合は、幼虫を必ず繭玉の中に入れてから置いてください。新しい繭玉を作成しようと動き回って体力を消耗するのを防ぐためです。

 

画像2. ケース底に置いた繭玉.

 

 

繭玉の周りにマットを敷いて繭玉を固定します(画像3)。この時に繭玉の中にマットが入らないように注意してください。これも体力消耗の原因になります。

 

・画像3. マットを被せる様子.

 

 

繭玉が埋まる程度までマットを被せれば完成です(画像4)。この時に繭玉の穴が開いている方にマットを多めに詰めてください。マットは幼虫が繭玉を作成するための材料となるため、繭玉が完成までの時間短縮につながります。繭玉とマットの間隔は少し開けた方が作成途中の繭玉内にマットが入らず、かつ幼虫がスムーズに出入れでき、マットを引き込むことができます。

 

・画像4. 完成.

 

 

完成したケースは飼育棚の温度・湿度が安定した場所に置きます。温度が高めの場所に置くと幼虫の動きが活発になり、繭玉の完成が早まります。ただしあまり温度が高すぎても良くないため、28度以上にならないよう注意してください。

 

 

 繭玉作成の様子

 

今回偶然にも幼虫が繭玉を作成する様子を捉えることができました(画像4, 映像1)。運が良ければこのように繭玉を作成する過程を観察することができます。

画像5. 繭玉作成中の幼虫(画像1と同個体).

 

映像1. 繭玉作成の様子.

 

 

  完成後

 

セットから早くて数日で幼虫は繭玉の出入り口を完全に塞ぎます(画像6,7)。こうなれば取り出して別ケースで管理することができますが、このまま保管しても構いません。別ケースに移す場合は振動を極力与えず速やかに行うようにしてください。

 

画像7. 完全に塞がった繭玉(画像1と同個体).

 

 

  注意点

 

今回上記の個体を含む3頭の繭玉をこの方法で管理したところ、全てセットから3日後には繭玉を完成させていました。対処としては有効な方法の一つといえるでしょう。ただし中には繭玉を破壊して新しい繭玉を作成する個体もいるため、100%確実な対処法ではないことは留意してください。これらはあくまで私の経験と飼育棚の環境などによるものの結果です。そのため参考にする際は自己責任でお願いします。

 

  備考

 

以上が繭玉作成途中で取り出してしまった時の対処法です。長々と書いてきましたが、最も良いのは繭玉の作成を確信できたら極力触らず、羽化して出てくるまで待つことです。触る回数が減ればストレスも死亡リスクも減りますし、幼虫も快適に過ごすことができます。

 

  参考文献

 

・里由一 (2023) 「国産マルバネクワガタの飼育」『月刊むし・昆虫図説シリーズ 4 増補改訂版 日本のマルバネクワガタ』 pp. 118-129. むし社