浄瑠璃寺にて
        かれわたるいけのおもての
         あしのまに
          かげうちひたしくるる
           たふかな

        毘沙門の
         ふりしころもの裾のうらに
          紅もゆる
          宝相華かな
「ただしこの歌を詠みし後、数年を経て、作者はふたたびこの寺に至りて堂の床に葡うやうにして窺ひ見るに、毘沙門像の裾の裏には、この歌にいへる如き鮮紅色の宝相華は見当たらざりき。見たる如く思ひ違ひて、帰り来りて後にかくは詠みなししものと見ゆ。」

      會津八一:南京新唱