ヘンテコ音楽人生(その3)
どこまで書いたっけ?
そうそう、小学校時代まで、でしたね。
その後、中学時代は比較的平穏というか、大した思い出が何もない時代。。。
今から思えば私にとっては潜伏期というか、外面的な自分と内面的な自分を分離
していた時代なのかもしれない。
人前では、一応他人に合わせるふりをしておく。
自分の好きなことは、あくまで自分一人になったときにやる、という感じ。
もっともこの頃、一番好きだったもの(時間をかけて探究したもの)といえば
競馬であったから、音楽とは直接関係はない。
ただ、「自分の好きなことは自分だけの楽しみにとっておけるのだ」ということ、
自分一人にさえなれば他人の目を気にせずに「自分の世界」に入れるのだ、
ということをこの時期に学んだことは、私の人生にとっては案外大きかったの
かもしれない。
幸いなことに、小学校時代と違って、音楽に関して学校で特別に何かを「させられる」
ということはなかった(クラブは卓球部だった)。
本格的に音楽にのめり込んだのは高校に入ってからだとは言え、やがて自分から
音楽に手を伸ばすようになるきっかけは中学時代にはぐくまれていたとも言える。
一つはピアノに関して。
前に書いたように(同じ誕生日の人たち )、中学2年になった時にピアノの先生が
替わった。たいへん美人で褒め上手の先生だったので、レッスンが苦痛でなくなり、
家でピアノを練習する時間が増えた。
この時期にテクニック上の一つの壁を越えていなかったら、その後独学でピアノを
続けるのは、難しかっただろうと思う。
もう一つは、それと関係するが、
この時期から(少しずつではあるが)クラシック音楽のレコードを聴いたり、
テレビのクラシック番組を見るようになったことである。
小学校時代に作曲のまね事を試みた時にも、少しはレコードを聴いたが、
ピアノでソナチネアルバムのような曲を弾いている時期には、いわゆる
「クラシックの名曲」と言われるような曲は、「作曲をする人のもの」で、
「演奏をする自分のもの」とは思えなかった、というようなところがある。
なので、私は魅力的な向こうの世界に行くために、
いきなり「作曲をする人」になろうとしたのだ!
(下の写真は、モーツァルトが6歳の時に作曲したと言われていた
「メヌエット ト長調 K.1」。その後の研究によると、この作品は
もう少し後の1764年(モーツァルト8歳)の作曲らしいと言われて
ところが、ピアノのテクニックの習得がある段階を越えると、
いわゆる大作曲家の作曲した名曲(実際にプロのピアニストが演奏会で弾く
ような、音楽的に十分な内容のある曲)の一部は、自分でも実際に弾ける
ようになってくる。
そうすると、今まで「向こう側のもの」だったクラシックの名曲や作曲家の
世界が、ぐーんとこっちに近づいてくるわけだ。
そんなわけで、
・たとえばモーツァルトやベートーヴェン、シューベルト、ショパンといった
自分でも少しは弾けるようになった作曲家が作った他の曲を聴いてみたい。
とか、その中で気に入った曲が見つかれば、
・自分でも弾いてみたい。
・今は弾けないが、どういう練習をしたらこの曲が弾けるようになるのか?
などと考えるようになってくるのである。
私の場合、レコードを聴いて一番好きだったのは、モーツァルトのいくつかの
ピアノ協奏曲であった(実際、モーツァルトの作曲したあらゆるジャンルの音楽
の中で、最もすばらしい曲が揃っているのは、ピアノ協奏曲だと思う)。
クララ・ハスキルが弾いたニ短調のピアノ協奏曲(20番)、
ロベール・カサドシュが弾いたイ長調のピアノ協奏曲(23番)
ウィルヘルム・バックハウスが弾いた変ロ長調のピアノ協奏曲(27番)
などが私の大のお気に入りであった。
そうすると、こういった協奏曲も自分で弾いてみたくなるのは言うまでもない。
もちろんオーケストラはないので、「オーケストラの部分をピアノに編曲して
2台のピアノで弾けるようにした楽譜」を買ってきて、そのオーケストラの部分と
ピアノ独奏の部分を両方自分で弾いてみたりするわけだ。
(ロマン派のピアノ協奏曲などは、ピアノの名人芸を最大限に駆使しているため
素人にはまず弾けないが、モーツァルトのピアノ協奏曲の独奏部分ぐらいなら、
モーツァルトのソナタをいくつか弾けるぐらいのテクニックを持った人であれば、
ある程度は弾ける)。
やってみると、まあ、ピアノ独奏の部分については、うまくは弾けないけれど、
ある程度その曲の「感じ」は出せるのだが、困るのはオーケストラの部分・・・・・
それをピアノに直した譜面を弾いたところで、オーケストラのあの分厚さや
個々の楽器の音色は出ないので、全然曲の雰囲気が出せないのである・・・・・
こうして、私はピアノでは表現できない「オーケストラの音楽」というものに
少しずつ興味を持ち出すことになる。
とりわけ、モーツァルトの後期のピアノ協奏曲というのは管楽器、特に
木管楽器がかなり活躍し、ピアノといろんな掛け合いを行う。
そんなわけで、私は、ピアノ以外の楽器(特にオーケストラでソロの
あるような管楽器)をやってみたい、と思うようになっていくのである。
高校に入ったのは、ちょうどそんな時だった。
(つづく)