僕の父は今では珍しい厳格で、亭主関白な人でした。
躾の範囲で殴るのは当たり前。さらに酒に酔うと暴れ出すので、
僕たち兄弟は自分たちの部屋に避難し、父が寝るのを待ってから、
テレビを見るのが習慣でした。もちろん、ギリギリまで音を小さくして。
子供たちの「恐怖の象徴」だったことは間違いありません。
そんな父との思い出で、
僕は小学生の頃、サッカーのスポーツ少年団に所属していました。
その日はたまたまサッカーの試合と父の誕生日が重なるタイミングで、
朝ごはんを食べている時に「誕生日プレゼントは何がいい?」と何の気なく、
父に聞きました。
少し考えてから父は「お前のゴールかな」との回答が。
その時の僕のポジションは中盤(今で言うボランチ)で
試合には出れても、ゴールを決めたことがありませんでした。
それでも父の喜ぶ顔が見たくて、僕は積極的にゴールを狙うロングシュートを
蹴りまくりました。何本も何本も・・・・
そしてなんと!!
前半の終了間際に僕が蹴ったボールがゴールネットを揺らしたんです!
父に約束通りのゴールをプレゼントできて、顔には出さない様にしていたけど、
かなり興奮していたことは覚えています。本当に嬉しかった!
途中、選手交代でベンチに戻った僕は、三角座りをして試合の応援をしていました。
その時、いつ間にか父が僕の後ろに立っていて、僕の頭を力強く撫でてくれました。
「誕生日プレゼント、ありがとう。感動したわ」
恥ずかしがり屋の父としては、背一杯の言葉で僕のゴールを労ってくれました。
僕は顔を伏せて、嬉し涙が流れる顔をまわりに見られないようにしていました。
普段の生活ではかなり厳しい父だったからこそ、たまにこういう優しい言葉を
かけられると、こっちは泣いちゃうんですよ。ずるいお方やで!!
後から母に聞いた話ですが、
その日の夜、父は泣きながらお酒を飲んで僕のゴールを称賛していたそうです。
まったく、泣き虫なのは親子で一緒だったんですね。

