雨だよ❕あめ・・・
冷たい雨が降っている。
温かい雨な~んてあるのかなぁ~?
焚き火に手を翳し、ブルーシートを頭から被り暖を取っていた。
雨は止むことなく細い糸のような雨が降っていた。
公道を大きくそれた林道沿い。
獣が通っても、まさか、人は通ることは無いだろう・・・。
(゚△゚;・・・!! (゚△゚;・・・!! (゚△゚;・・・!!
そのまさかが出現した。し…然も中年の男女。雨に濡れた女の髪からは額に滴が流れ続けている。生気は微塵もない。
不機嫌そうな男の顔には惰性以外の何物も読み取れない。
焚き火に当たるように促し、熱いコーヒーを二人に勧めた。
何かを呟きかけた女性に、人差し指を口に当てて、コーヒーを飲むことを進めた。
私の独りごとだよ。聞きたくなかったら雨の中を先に行くも戻るも自由。
ブルーシートを二人に被るよう指で示した。
・・・
「独り言だよ。私は人生の最後に、火葬にされて知人たちに迷惑をかけるのが嫌で、ここに来た。この先に進むと、丁度ぶら下がり易そうな枝ぶりの木がある。
ぶら下がるのが嫌なら更に先に少し行くと、杉苔に生えたフワフワした窪みがある。
そこなら、独りでも二人でも気兼ねなく目的が達成できるだろう。
私は自分に出来る何かのお礼を考えている。そのお礼は人・‥人間にではなく、私は私の体内に共生する100兆個もあると言われる常在菌にだ。
私の遺体をその菌に提供しようと思ってここに来た。
躰が腐って色が青黒くなり体液が一カ所に集まり腐敗臭が漂う。体内では数万匹のウジ虫が腹腔に蠢きだす。
痛いも痒いも…何も感じないから大丈夫。
薬を飲めば、気が付かなければ、心配することも無い。木の枝にぶら下がってもほんの一瞬・・・。
どちらでも、一方が生き残る事もあるかも知れない。
まぁ~その時は残った一人が後を追えばいいだけの事。
最も、私のように初めから独りが気が楽でいいけど。
朝になって陽射しを浴びたら、生命力が蘇るかも?
本気で決行するなら別々の場所でするといい。相手に対して僅かでも、猜疑心が有ったら今回は中止するだけの事。
私は2~3日は此処で野宿だから、遠慮しないでご自由にどうぞ。」
「停めないのですか?」泣き声で私に聞いた。
「訊いて欲しいの?」
「・・・」
陽射しが出始めた頃、二人の後姿を見送った。
始発電車には間に合わないだろう・・・。
30年位昔の記憶の一部。