主人公の気持ちの表現が面白く、
共感するところもあって、
元気になれる一冊でした![]()
~あらすじ~
古倉恵子は三十半ばだが、大学時代に始めたコンビニのアルバイトを続けている。
子供の頃から変わり者で、人間関係は希薄、恋愛経験も皆無。という半生をすごす。
大学時代、コンビニで仕事を始めたことをきっかけに「周囲の人たちの真似」をしたり、妹の助言を聞くことで、普通の人らしく振る舞う方法をようやく身につけた。
古倉はそのような経験を、これまで世間一般の人間の規格から外れていた自分が、初めて人間として誕生した瞬間と位置づけていた。
以来古倉は私生活でもそのほとんどを「コンビニでの仕事を円滑に行うため」という基準に従って過ごしつつ、
なんとか常人を演じ続けてきた。
しかし、自身の加齢、及びそれによる新たな世代の人間との干渉が増えたことにより、
そのような生き方は徐々に限界に達しつつあった。
そんな時、古倉はかつての元バイト仲間の白羽という男と再会する。 白羽は、就労の動機を婚活だとうそぶき、常連の女性客につきまとい、挙げ句ストーカーまがいの行為を働いて店を解雇された過去を持っている。
ひょんなことから白羽と奇妙な同居生活を始めることになった古倉は、 その状況を周囲の人たちに同棲と勝手に解釈され、囃し立てられ、若干の戸惑いを感じるも、 冷静にそんな彼らを観察し、白羽との関係を「便利なもの」と判断する。
やがて古倉は白羽の要求によりコンビニを辞め、就活を始めることになる。 しかし、面接に向かう途中でたまたま立ち寄ったコンビニで、自身の経験から図らずも店の窮地を救った彼女は、コンビニ店員こそが自分の唯一の生きる道であることを強く再認識し、就職との天秤にかけていた、白羽との関係を解消してコンビニに復職することを心に誓うのであった。
~感想~
芥川賞を受賞されて、マスコミで取り上げられていましたが
読みたいような読みたくないような・・・
私も、コンビニに関わって、13年目・・・夫がオーナー、私が店長として働いています。
8年前に病気になって、5年くらい仕事から離れていましたが、
1人で運営するのは大変そうだったので、復職。
始めたころに比べると、コンビニの仕事も、従業員も変化していて
ときどき、辞めたいと思うことも・・・
この本を読み始めて、衝撃を受けたのは、
主人公が18年間も同じコンビニで働いていること。
オープン時の研修をちゃんと守って、
朝礼を行い、本日のおすすめの目標を持ち、お客様に声かけをしたり、
新しく入ったバイトに教えたり、周りのリサーチや情報収集も怠らない。
「体調管理も大事な仕事です」2番目の店長に言われた言葉を守り、
仕事を最優先に考え、前日は、早く寝るようにしている、
スーパーコンビニ店員なのです。
特に、心に残ったところは、
新しくバイトに入った白羽さんの言った(コンビニや働く人たちに対して蔑むような)言葉に対して
主人公が感じていること
・・・
コンビニで働いていると、そこで働いているということを見下されることが、よくある。
興味深いのでわたしは、見下しているいる人の顔を見るのが、わりと好きだった。
あ、人間だという感じがするのだ。
自分が働いているのに、その職業を差別している人も、ちらほらいる。
・・・・
何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。
そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けて立ってやるぞという
好戦的な光が宿っている場合もあれば、
優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。
・・・・
私もシフトに入ったときに、一日に一人くらい、
嫌な感じのお客様に応対することがあって、気持ちが凹むことも・・・・
でも、彼女の感じ方、見習いたいなと思いました。
そう、そういう時は、観察すればいいのだ(笑)
古倉さんのように、火曜日の新商品を楽しみにしたり、
フェイスアップをして、気持ちよくなったり、
あともう少しがんばろうと
元気づけてくれる一冊でした。
