おもひでボロボロ~悪しき風習の影~ | メロンパンブログ

おもひでボロボロ~悪しき風習の影~

世界には実に様々な風習がある。
俺も22年という短い歳月の中で、数多くの日本的文化・風習に触れてきた。
そしてその中でも特に俺を苦しめた風習がある。
そう、


小学校でうんこしちゃいけない


卒業し10年以上経った今でも、何故あのような習慣があるのか不思議でならない。
「うんこ」も生活習慣病である。
こんなぶっとんだテーゼがまかり通るなら納得出来ないわけでもない。
けれど、誰がどう考えたって「うんこ」は自然の営みだろう。

なのに“小学校”という特殊空間は、それを断固受け付けない。
仮に人に見つからないように個室に潜入出来たとしても、
「おーい、誰かうんこしてるぞ!!」
「マジで!? どこだどこだ!!」
なんて、ブルース・ウィルスも真っ青の超スペクタクルな展開が待ち受ける。

これぞまさしく『大ハード』

これから話すお話は、そんな悪しき風習に立ち向かう術も無く屈した男の子の物語。


あれは小学校4年生の頃だったろうか。
親の転勤に伴い、俺も転校することになった。
3学期からの転入ということで、元々人見知りする俺はいつになく緊張してたんです。

「早く友達出来るといいな。」
「上手くみんなと馴染めるかな。」

そんな思いを抱えていれば、幼い子供が朝のお通じを忘れるのも無理がない。

その日の朝食はスクランブルエッグ(マヨネーズ添え)
これは今でも俺が、というより俺の胃腸が苦手とするメニューだ。

それでも時は待ってはくれない。
一抹どころかジュウシマツくらいの不安を抱えたまま教室へと案内される。

「はい、みんな。今日から新しいお友達が加わります。これから自己紹介してもらうから注目~!!」

緊張MAX
同時に俺の肛門のリミッターが外れるのを感じた、その時



プスッ・・

やったか!?
俺はひどく焦った。しかしどうやら屁だけだ。実は出ていない。
だけどこれは使えるぞ。

「はじめまして、ケイです。よろしくおねがいします。」
屁でうんこをチラシながら、どうにか挨拶を終え、席へと向かう。

腹はとうに臨界点を超えている。
プルプルとした足取りを見て、隣の席の子が
「そんな緊張することねぇだろ~。俺○○ってんだ、よろしくな!」

そんな優しさはいらない。

頼むからほっといてくれ。そしてうんこをさせてくれ。
言いたくても言えない俺。
言ったら新しい小学校での生活が水に流れる。
流したいのは俺のうんこ。

そんな錯乱状態に陥りつつも次々と周りの子がさかんに話し掛けてくれることで、これからの小学校生活に安堵を覚える。
だが、その安堵が俺を狂わせた。



ブスッ・・

半濁音が濁音に変わった。ただそれだけのはずだった。
だけど俺はすぐにコトの変化の重大さに気付いたんだ。




「うんこ」出てる・・・


禁断の果実に手を出したアダムとイブは人間界へと落とされた。
禁断の果実を捻り出した俺は、一体どこへ落とされるのだろう。

(なんであの時気を緩めてしまったんだ…!)
(うんこしたら仲良くなれるものも台無しだって分かってたはずなのに!!)
(あぁ、俺のバカ!)
不安と、後悔と、自責の念が俺の頭を駆け巡る。

と、一人の男子が口を開いた。


「なんか臭くない??」

周りの子も、
「ほんとだ!なんか臭い!!」
と騒ぎ出す。


終わった・・・

大げさでなくそう思った。
そして努めて冷静に自分の採れる余地を考えた。


①さも他人事のように騒ぎに混じる
②無言で席を立ちトイレに向かう。
③高らかと自分がやったと宣言する。


①は自分の処遇とバレた時のリスクが高すぎる。②は論外。
俺の取りうる余地は③しかなかった。


言おう・・

武士は戦いの最中敵に背を向けて斬られるを恥とした。
幼き日本男児として誇りある死を選ぼう。

決意は固まった。
そして口を開いた。



「ごめんごめん、なんかさっきからずっと屁がとまんねぇんだ!」



ちっちゃな嘘ミーツケタ。

どうしても死んだままの残りの2年が幼子には重すぎた。
しかし、無駄に明るく言ったのが功を奏したのか。
みんないっぺんも疑うでもなく、

「なんだよ~、そうだったのかよ。」
「屁が止まらないって面白い奴だな~!」


転校初日にして『うんこマン』の汚名を着る惨事は逃れた。

けれど人として、誇り高き武士の末裔として、
大切なかけらをどこかに落としたあの日。


分かっているのは、その横に茶色いかけらも落ちているという事実。

いつか探しに旅に出よう。

自分探しの旅に出よう。





バキュームカーに乗って。


ケイ