持続的皮下注射はまだ導入しないことになった。
今はまだ薬が飲める。
飲んでいる麻薬の量と脈の薬の量を増やすことを先に試したい。
というのが、息子の意思だった。
息子がすぐに導入を希望すると思っていた。
正直、意外だった。
あんなに苦しそうなのに。
どうして。
緩和ケア認定看護師が、こんな話をしてくれた。
病院でチューブに囲まれた経験を持つ人は、
持続的皮下注射のポンプの導入を少し拒む場合があるという。
確かに今日、
息子は「動きづらくなるのは嫌だ」と言っていた。
実際の装置も見せて説明してくれたので、そこまで煩わしいものでないことは理解したようだったが、
拒んだ理由がそのあたりにもあるのかも知れない。
それから、
周りに苦しそうに見えていても、本人がそれをやり過ごせる方法を知っていたり、良くなる方法を持っていたりする場合があるという。
この姿勢で何分待てば改善する、とか、
この程度ならこうすればやり過ごせるとか。
その方法を選ぶのも、ひとつの答えだという。
緩和ケア認定看護師は、
昨夜の状況が怖かったと話すわたしに、
今日は、内服の選択をしたけれど、例えば今夜苦しくなって気持ちが変わって導入したいということなら、連絡をもらえればすぐ対応できるようにしておくから、いつでも言ってほしい。
周りがいいということを本人にやらせるのではなく、説明理解した上で、本人が選ぶことを全力でサポートする。それが緩和ケアなので。
そう言ってくれた。
すごく安心した。
すごくうれしかった。
息子の意思がとても大切にされていると感じた。
感謝の気持ちでいっぱいになった。
寄り添う力、を目の当たりにした。
苦境の中にいるのに、
心が満たされていくのがわかった。