チャック・パラニュークさんの「インヴェンション・オブ・サウンド(The Invention of Sound)」(池田真紀子訳)を読みました
この方の作品を読むのは初めてなのですが、「ファイトクラブ」の作者なのですね
主人公の1人であるミッツイ・アイヴズは、映画制作に必要な「悲鳴」の効果音作成のスペシャリストである音響効果技師
映像の面ではCG技術などが日進月歩の進化を遂げているのに対して、音声の面では旧態依然という指摘は興味深かったですね
「波よ聞いてくれ」の音響制作エピソードや、「映像研に手を出すな」の音響マニアを思い出しました
ただ、ミッツイは、よりリアルな悲鳴を収集するために何人もの人間に激しい拷問を加えたうえに、最終的には死なせているとも思われる激烈サイコ女です
もう1人の主人公であるゲイツ・フォスターは、幼い娘を連れ去られてから17年も彼女を探し続ける父親
こちらもミッツイに負けないくらいのサイコ親父で、ダークウェブでみた子ども虐待犯に似た人間をみかけると暴走機関車のようになってしまうし、エスコートガールに成長した自分の娘の役をやってもらって精神の安定を図ったりしています
この2人の狂ったエピソードが交互に語られていく第1部と第2部は、ミッツイの作り出した悲鳴がとてつもないカタストロフィを生み出すこともあって、最高に面白かったですね
しかし、残念ながら最後の第3部で大失速
カタストロフィで終わらせたら「ファイトクラブ」と同じになってしまうからなのか(ただし小説は未読です)、様々な手を打ってくるのですが、個人的には好みの方向からどんどん外れていくばかりでした
やはり物語は膨らませるよりもたたむ方がはるかに難しいということを再認識しました