本格ミステリ作家クラブが編集したアンソロジー「本格王2022」を読みました
2021年に発表されたミステリの中から選りすぐりの短編として、以下の6編を収録したものです
道尾秀介「眠らない刑事と犬」
大山誠一郎「カラマーゾフの毒」
芦沢央「アイランドキッチン」
方丈貴恵「影を喰うもの」
浅倉秋成「糸の人を探して」
森河智喜「フーダニット・リセプション」
浅倉秋成「糸の人を探して」は、陰キャの大学生河瀬に思わぬ合コンの誘いが来ます
そこには、なんと学内で河瀬のことを気に入っていると話していた女性が参加しているというのです
オチが予想どおりでマンガチックすぎるところはいまいちでしたが、合コンの席で誰がその女性なのかを河瀬が推理していくという設定が面白かったです
個人的には、森河智喜「フーダニット・リセプション」が本書の中でのナンバーワン
高校生の男女コンビが、男子生徒の兄の部屋に入ったときに、作家である兄の手書原稿にコーヒーをこぼして汚損してしまいます
犯人当て企画の「解答編」だったと思われる原稿のうち、相当の部分が判読不明になってしまったので、男女コンビが知恵を絞って前後の文脈から文章を復元していくという設定です
原稿用紙に書かれた文章だったことから、マス目から文字の数が確定されますので、まるでクロスワードパスルのような作業になるのです
あーでもないこーでもないと試行錯誤しながらすべてのマスを埋め、論理的にこれ以外にはありえないし、指摘されている犯人もこの人物しかいないという結果を出すのですが、なんとそれでは前提条件の1つに明らかに矛盾してしまうのです
多重推理の見せ方としてこういう方法もあるのかというところが、すごく斬新でしたね
他の作品も十分のデキで、大変楽しめました