ミルチャ・エリアーデさんの「ムントゥリャサ通りで」(直野敦訳)を読みました
米澤屋書店銘柄です
作者は1907年にルーマニアで生まれた宗教学・宗教史学者だそうですが、その博覧強記ぶりを生かし切った大怪作です
本作は、ムントゥリャサ通りにあった小学校で校長をしていたと自称するみすぼらしい老人が、内務省のボルザ少佐を訪ねてくるところから始まります
ファルマという老人は、少佐のことを元教え子だというのですが、少佐には全く覚えがありません
あまりの怪しさに連行されたファルマは、供述調書という形で、長い長い豊かで不思議な物語をつむいでいきます
取調官があるエピソードを確認しようとすると、必ずそれを知るためには200年前に起きた出来事から語り始めなければなりませんと言い出して、饒舌なれども相手が聞きたいことは全然話さないファルマに爆笑
しびれを切らした相手が、「だ~か~ら~私が聞きたいのは!」と言い出すと、ちょうどその話にさしかかろうとしていたところなのですと返すのですが、結局いつも時間切れになってしまいます
幻想的・神話的な物語に加えて、戦後のルーマニアにおける政治的な闇への風刺的な要素もあり、小説という表現方法を極めたような作品ですね
本作は、作者がシカゴ大学神学部で教えていた1967年に発表され、1977年に日本語に翻訳出版されていますが、これまで作者のお名前を含めて全く知りませんでした
早速米澤さんに大感謝です