推理小説には、いわゆる「社会派」というジャンルがあります
フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットを追求するストロングスタイルの推理小説を「本格」と呼ぶのに対して、事件の背景にある社会的事情を丁寧に扱おうとするような小説がそう呼ばれます
似鳥さんの作品には、もともと近年の社会的状況を巧みに切り取る側面がありましたが、本作はその方向性に思いっきり舵をきった感じです
作品としてのバランスを考えるとちょっと過剰ですらありましたが、現状に対する似鳥さんの苛立ちや怒りがよく伝わってきました
物質的・精神的貧困化が進む中で、ネットによって可視化されてしまった分断は今後ますます大きく深くなっていくでしょう
かつての「新本格」のように、そろそろ「新社会派」の潮流が生まれるのかもしれませんね
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