とうとう彼に会う日が来た

 

 

病室にどういう顔をして会おうかと、ずっと考えていた

 

なぜだか、その日の再会したと記録がメモ書きにも記憶にもない

 

おそらく、書く余裕がなかったのだろう

 

 

1番恐れていた拒否はされなかった

 

ただ、お互いに久しぶりなところもあり、距離があった

 

 

とても記憶に残っていることとして

 

「お母さんは会えなくなることを先生と決めて、知っていたんでしょ?」

 

と聞かれたことだった

 

 

絶対にそんなことはないと返事をした

 

信じてくれたかはわからなかったが…

 

 

少なくとも会わないことを、私が決めたことではないから

 

そこに関して答えているから嘘はついていないと自分に言い聞かせていた

 

この場で、そうだって言ったら不信感しか残らないだろうし

 

先生からも止められていた

 

 

裏切られたと思うかもしれない

 

とにかく彼の治療の邪魔はしたくなかった

 

 

「ごめんね。あの日の帰りに先生からの指示だったの

 

 あなたが、少しでも気持ちを吐き出してくれることが

 

 今は1番必要なんだって

 

 だからなんでも、いいんだよ。もちろん家族の不満とか

 

 そういうことでもなんでも。」

 

 

それに対する彼の答えは一つだった

 

「俺は、そう言うことは話さないよ

 

 だって、それがあなたの躾でしょ

 

 他人に迷惑をかけない

 

 逆の立場に立って考えてみなさい

 

 っていつも言ってたよね

 

 家族の言われた人は嫌だよね、だから文句を他人には言わないし

 

 他の人へ自分の意見を言って困らせたり、迷惑はかけないから」

 

と、真面目な顔をして彼に言われた

 

 

従順な、優しい子で育ってくれた

 

先生方にもよくそう言われた

 

だけど、その躾が彼を苦しめていたんだと

 

とっても苦しくなった言葉だったし

 

返す言葉がなかった