奈良が好きで、よく行っていたが、ある日雑誌を読んでいると、趣味の骨董が高じて、奈良でお店を始めたという人が紹介されていた。思い立って、お店を訪ねてみたのが「古美術山本」だった。当時は、ご自宅兼店舗でされていて、行くとご主人不在、奥さまがいつもお店の方の扉を開けてくださった。随分長く、お目にかかれないことが続くのである。気になる物の値段を尋ねても、奥さまは、とんとご存じなく、携帯電話でご主人に聞いて答えてくださる。いくつも聞くのが憚られ、ほぼ買うことを決めてから、訊ねるようになっていく。今思えば、迷惑な客だったなと、反省。ご主人不在で、閉まっているのに、開けてもらうのだから(笑)色白の綺麗な方でした。ある日、訪ねると、たまたまご主人がいらして、「(お見せするようなものは)何もありません」とか、おっしゃるのですが、さっぱりとしたお洒落な方。棚にあった蕎麦猪口に目がとまり、葡萄と蝶の描かれた柔らかな印象の小ぶりなもの。それが、僕が初めて買った磁器のものです。家に帰って嬉しがって、珈琲を飲んだり、お酒を注いでみたりしました。今でも、一番の気に入りです。山本さんは、その後、奈良博の北側に店を移されています。やあやあと、笑顔で迎えてくださる愉しい方です。奈良らしい品が、並びます。

 ある日、「奥さん、お元気ですか?」と、訊ねると、随分前に、鬼籍に入られたと聴き、何とも言えない気持ちになりました。

 奈良では、文珠庵さんも、親切なお店です。





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