今日、マックでガザ地区の話がVTRで流れてたんですけど、私の前に座っていた人がそのVTRを見て、涙してました。




いやいやいや…



しっかりして!



みんな気まずいから。










『世界の終わりを、キミと…』



13.


「サチ。おはよう」


サチと話をしなくても、天使が俺にサチを救えと言ったときから俺はサチと一緒にいる。



サチと離れることはできない。


だからこの気まずい雰囲気の中、俺はサチと一緒に登校しているわけだ。


エリが話しかけてきたのは、まさにそんなことを考えていた時だった。



「どうしたの?またまた元気ないじゃん」


サチの家のことについては俺がそれどころではなかったので、あまり様子は分からないが、まだ母親と話はしていないようだ。



サチが元気ないのはそれが原因ではない。


原因は俺にある。


「エリ…また相談していい?」


か細い声でサチが言う。


「うん。いいよう。何でも相談してよ」


エリは嬉しそうに頷いて見せた。


俺はその言葉を聞いて、正直驚いてしまった。


サチがエリに相談するということは当然俺もその会話が聞こえてしまうという事だ。



そんなことサチが忘れているわけはない。


なぜサチはそんなことを言うのだろう。


俺にはサチの真意が分からなかった。




授業中も俺達の会話はなかった。


俺が大人にならないといけないのに、なぜか、話を切り出せないでいた。



いや、頭では何から話せばいいのか考えていたが、いつものように話が出来ないでいた。


そうこうしているうちに授業は終わり、サチはエリと一緒に帰った。



「話って何?」


帰り道早速エリはサチに質問をした。


サチとエリは学校の最寄の駅に入っている喫茶店で話をすることにした。


セルフサービスのお店なので、二人はそれぞれ飲み物をトレーに置き、あらかじめ決めた席へと向かった。


エリはこれからバイトがあるので、長くはいられないとサチに言ったので、サチは早速本題に入ることにしたが、何から話せばいいのか考えているようだった。


「サチから言って来たんだからね」


エリがじれったそうに急かした。


「あのね、エリ」


サチが重い口を開いた。



俺もサチが何を言うのか気になり、耳を澄ませた。



「私ね、大切な人を傷つけてしまったの。私がいけないのよ。私がその人のことを何も考えていなかったから。その人は私の相談に親身になって乗ってくれていたし、いざというとき、力になってくれたの」


サチの言葉を聞いて、俺の心は痛んだ。


サチが悪いわけじゃない。



悪いのは俺だ。


なのに、サチは自分を責めている。


何を言わせているんだ、俺は。



「サチは何で傷つけたと思うの?」


エリが聞いた。


エリにしては珍しく落ち着いた雰囲気だった。


「私がその人のことを見ていなかったのよ。私のために今まで頑張ってくれたのに


「ふ~ん。でもさ、その人サチの相談に色々乗ってくれてたんなら、サチがどういう子か知ってるんでしょ?だったら多分、サチが傷つけてるって思ってるだけなんじゃん?その人は分かってると思うよ。サチのこと」


エリにそう言われ、思わずサチは俺を見た。


俺はサチに頷いて見せた。



サチは悪くないと伝えるために。


エリは「大丈夫」ち、いつものエリらしくポジティブにサチを励ました。


サチもエリにそう言われ安心したのか、初めて飲み物を口にした。




エリと別れ、家に帰る途中、サチは急に立ち止まった。


俺はどうかしたのかとサチを見た。



サチは俺をじっと見ていた。


俺はこれをチャンスと取り、サチに話しかけることにした。



『あのさ、サチ』


今後はサチが驚いた顔をした。


もしかしたらサチが話したかったのかもしれない。


だが、サチに話させてはいけないので、俺から話す事にした。


『サチ。ごめんな。俺、自分勝手だった』


いざ、自分の気持ちを話すと、恥ずかしいとか、そういう感情はなかった。



「そんなこと…」


『ううん。俺は意地を張ってたんだ。何も出来ない自分が嫌で』


俺は今ならはっきりと言える。



『サチは俺を傷つけたって自分を責めたけど、本当は俺のほうがサチを傷つけただろ。サチは素直に喜んでくれたのに俺は自分のエゴでその気持ちを台無しにしてしまった』



「いいえ。哲朗は悪くないわ。だって今私がいるのは哲朗のお陰よ。哲朗が友達を作る勇気をくれて、家族に諦めずに自分の気持ちを話すことの大事さを教えてくれたのよ。哲朗がいてくれたから今の私がいるの。なのに、哲朗がそんな悲しい思いをしていることにすら私は気付かなかった。自分が情けないわ」



なぜ、俺はここまでサチを追い詰めているのか。


『いや、俺のほうこそ。俺は苛立ってたと思う。何も出来ない自分に対して』


「そんなことないわ」


『いいんだよ、サチ。無理に慰めてくれなくても。だって実際サチが泣いている時も、苦しんでいる時も俺はただ側にいることしか出来なかった』



「いいえ、そんなこと…」


『サチの涙をぬぐってやることも、肩を抱いてやる事もできなかった。何も出来なかったんだ』


「そんなことないわよ!哲朗、私の話も聞いて」


サチが大声で言った。



「何でも決めつけるの良くないわ。私はそんなこと言ってないわよ。思ってもいないわ。哲朗はいつも決めつけるのが悪いクセね。気付いてないの?」


俺達は決して、長い時間いたわけではない。


なのに、サチは俺のことをよく見ていた。


サチにそう言われるまで、俺は正直気付かなかった。


きっと、自殺を決めたときも同じだったのだと思う。



自分が悪いことにすれば、自分ひとりで済む。


そう、思っていたのかもしれない。



「本当に私は哲朗が思っているようなことは考えてないわ。哲朗は側にいてくれたじゃない。いつでも、助けてくれたわ。一番感謝してるの」


サチは俺に向き合って言う。


まっすぐに俺を見て言う。



夕焼けで赤く染まったサチはまるで天使のようだった。


「私が自暴自棄になったとき、それでも、話し続けてくれたのは哲朗よ。そのお陰で私はお父さんにきちんと話が出来た。私一人だったらできなかった。哲朗は私の力だと言ったけれど、私一人じゃ出来ないことだったわ」



サチを染めていた夕日は姿を消し、街の雰囲気が変っていった。


『はぁ。サチにはかなわない。サチの前では強い人間でいたかったけど、サチのほうが強いな』


サチが照れたように笑った。


『俺はもう幽霊だけど、こういう感情もまだ持ってるんだな』


改めて思った。








はい。



今日は二人が仲直りをした話でした。



次回で長かった13章は終わり、最終章に突入していきます。




それではまた明日。



バイバInBan。