『世界の終わりを、キミと…』
13.
家に着き、扉を開けると、サチは不安になったのか急に大人しくなってしまった。
物音を立てないように気をつけているように見えた。
『サチ…?』
部屋に入り、サチはベッドに腰掛けた。
「(私、それでもやっぱりお母さんにまた話をすることに戸惑っているの。今後も話を聞いてくれないのではないかと思ったら怖くて…)」
サチの心はまだ葛藤していた。
話さないといけない心と、これ以上傷付きたくないという気持ちとが戦っているのだ。
サチは今までこういう風に両親に意見したことはない。
そういう気持ちに気持ちになったこともなかったらしい。
でも、残念なことにそれが原因でサチと両親の気持ちはすれ違ってしまった。
きっと、今両親はサチはきっと自分達を裏切らないと思っているのだろう。
「(それでも私は話をしないといけないのよね)」
サチはそのまま横に倒れ、呟いた。
そして、疲れてしまったのかそのまま寝てしまった。
『大変そうね』
隣を見ると、天使が同じベッドに座っていた。
『こんなに根気良く頑張ってくれるとは正直思っていなかったわ』
天使は眠っているサチを愛おしそうに眺めて言った。
『俺だって人の子だぜ?心配したり、助けてあげたいって気持ちくらいあるんだからな』
俺はサチが寝ているので少し声のトーンを落として天使と話したが、それでもサチを起こしてしまいそうなので、俺たちは外へ出た。
『今日も一人自殺者を天に送ったわ』
外はまだほんのり明るく、サチの家の近くの街灯は点いてはいなかった。
天使は相変わらず長い髪をなびかせて、俺の少し前を飛んでいる。
あまり高いビルはないのだが、一階にコンビニがあるマンションの屋上に俺たちは降り立った。
暗くなり始めた街を見ながら天使は言った。
この天使は自殺者を天に案内するのが仕事だと前に言っていたことを思い出した。
『今回の人はどんなヤツだったんだ?』
俺は俺以外の自殺者がどんなことを考えているのか興味があった。
天使は少し笑って空を見た。
『その人は自殺を選んだのに、まだこの世にたくさん未練があって、死にたくないと願ったの。生き返りたいと何度もアタシにすがったわ。もちろん、アタシには死んだものを生き返らせることはできない。断わったわ』
空を見た天使は静かに強く目を閉じた。
泣きそうなのかと冷や冷やした。
『そういう人は多いのか?俺みたいなヤツは珍しいって言ってたもんな』
天使は無言で頷いた。
『分かってもらえなくても強制的に連れて行くの。そうしないと、一生この世を彷徨うから』
天使は溜息のような息を吐いた。
辛そうな表情だった。
いつも強そうな天使のこんな表情は初めて見た。
いつもこの天使はこういう人たちを相手にしている。
辛くないわけがない。
慣れるわけがない。
『自殺を選ぶほとんどの人が実は、誰よりも生きたいと願うの。生きている時に気付けばいいのにね。だから、逆にアナタのような人は本当に珍しい』
天使は笑ったが、無理して笑っているようだった。
俺はずっと、自殺者はみんなこの世が嫌いになって死ぬのかを思ったいたが、どうやらそうとは限らない。
運良く人間に生まれ、頑張って生きていたら、きっと違うことに出会えたかもしれなかったのだ。
カナとは違う人に出会えたかも…
こんな気持ちなのに、不思議と後悔のような辛い気持ちにはならなかった。
その気持ちよりも、今、サチのために何かをしてやりたいという気持ちが勝っていた。
始めたの感情だったからだ。
『ありがとうな。俺はあんたと会わなかったら、貴志の気持ちにも気付けなかったし、人のために何かを全力でするっていう気持ちにもならなかった。気持ちいいもんだな。人のために何かをするのって』
素直に天使に礼を言ったが天使は聞いていなかった。
うっすらと出始めた月を見ていた。
はい。
短いですけど、キリがよかったのでここまでとします。
次回はとうとうサチが勝負に出ます。
果たして、上手く行くのでしょうか。
乞うご期待。
バイバInBan。