InBanです。
母がおとといアメリカから帰ってきました。
太ってました![]()
『世界の終わりを、キミと…』
4.
『サチ。おはよう』
「?!」
翌朝、サチは驚いた表情で俺を見た。
無理もない。
サチは今日初めて俺を見るのだから。
もともと大きな目を最大まで開いてジッと俺を見ている。
「あなたが…」
恐る恐るサチは言う。
『そう。サチの専用の話し相手の織田です』
俺はかしこまって挨拶した。
サチは俺の姿が見れて安心した様子だった。
学校からの帰り道、俺たちはまたあの廃屋へ向かっていた。
改めて俺がどういう人物なのか分かって、安心したサチはもっと俺に色んな事を話すようになった。
内容自体はたわいもないことなのだが、サチはそれでも楽しそうに話す。
今日見た夢の話や、近所で生まれた子猫の話。
テストの点数。
『知ってるよ。俺も見てたから。サチって頭いいんだな』
「あなたは?あなたはどんな人なの?」
そういえば、サチは俺のことを何も知らないのpだ。
俺はサチの質問にはなるべく答えてやりたいのだが、なんで、俺は説明下手なので、きちんと答えてあげられない。
そして、なにより俺の記憶は曖昧で、思い出すことが困難になってしまっていた。
『名前は教えたけど、何が聞いたい?』
すると、サチはこう言った。
「あなたが亡くなる前のことを知りたいわ。そういうのはやっぱりしてはいけないかしら。私もあなたのことが知りたい」
サチは純粋に俺のことを知りたいようだ。
しかし、やはり、今の俺は子供の頃のことはもちろん、友達との事も思い出せない。
どうやら、俺の記憶は自殺したあの日から止まっているらしい。
覚えていることはカナのことだけ。
きっと、心に強く想っていたからなのだろう。
『サチ。ごめんな。あんまり思い出せないんだ』
せっかくサチが俺に興味を持ってくれたのに、申し訳なかった。
しかし、サチは首を横に振って言った。
「ううん。いいの。でもひとつだけいいかしら」
『なに?』
「あなたが私と一緒にいる理由が知りたいの。あなたと私は知り合いじゃないでしょう?なのに、私なんかと一緒に居てくれる」
サチは痛いところを付く。
正直に天使に無理やりサチを救うように言われて仕方なく一緒に居ることになった。とは、言えない。
『そうだな。きっとサチは俺が必要なんだ。だから一緒に居る』
俺はその場限りの嘘を付いた。
偽善者のような。
「ありがとう。いつか私もあなたに必要とされる存在になりたいわ」
そう言い、そして、
「なれるかな?こんな私が」
と、付け足した。
『ああ。なれるよ。サチ。でもそれは俺みたいにもうこの世にいない人に言うんじゃなくて、きちんと生きている人に言ってやれよ。人なんて、生きているだけで無駄じゃないぜ』
俺がそう言うと、サチは心配そうな目で俺を見た。
『大丈夫。この哲朗様がサチに勇気を分けてやる。サチが誰かの役に立てるまで』
そう言いながら、俺は内心ビクビクしていた。
それは、サチに「じゃあ、なぜあなたは死んでしまったの」と、聞かれるかと思ったからだ。
俺が言った言葉は生きている人間が言って初めて説得力を持つだろう。
俺なんかが言ったところできれいごとに過ぎない。
でも、サチは何も言わなかった。
夕日の明るさで浮かび上がった、誰も足を踏み入れたことのないこの廃屋で、サチは俺の話を聞いてくれている。
その姿を見ていると、生きているとき考えも付かなかった思いがこみ上げてくるのを感じた。
“サチを助けてやりたい!!”
これは本心なのだと、確信できる。
俺は生きていた頃、言いたかったことを言えずに、そのまま逃げた。
誰も信じなかったからなのかもしれない。
悩みや感情を共有することに怯えていたのだ。
夕日は完全に沈み、夜がやってきた。
はい。
今日はここまでです。
哲朗の姿が見えることで、サチとの距離がまた少し、縮まりました。
次回もお楽しみに。
バイバInBan。