InBanです。



最近不眠症が治ったと思ったら、今後は寝不足になってしまいました。



時間を忘れて、どこかの無人島で音楽でも聴きながらまったりしてたいね。












『世界の終わりを、キミと…』



3.


『俺のことは哲朗でいいから、俺もサチって呼んでいいか?』


俺はサチに話し相手になることを約束した。



話し相手になるにあたって、俺は呼び方についてサチに提案した。



俺は神田さんと、堅苦しい呼び方で呼ぶのはイヤだったからだ。




サチは「うん」と、頷いた。



俺にとって、いや、ほとんどの人にとって話し相手を作ることなんて簡単なことなのに、サチはそんな相手がいるだけでこんなにも喜んだ。



俺は役に立てただろうか。



『そんなことじゃ役に立てたとは言えないわ。勘違いしてるでしょ』


またもや天使は俺の心の声を聞いていたのか話しかけてきた。


『(またお前か)』


俺はサチにこの会話が聞こえないように小声で天使に話した。



『(役に立ってるじゃねえか。少なくともあんたよりは)』


俺はついカッとなって天使に言ってしまってから、しまった!と思った。



それはいつも怖い顔をしているこの天使が悲しい表情をしたからだ。



一瞬だったが、俺は逃さなかった。



『確かに、アナタはアタシよりはあの子の役に立っている。でも、それだけじゃダメなの』


そう言うと、またどこかへ消えてしまった。



俺は疑問に思っていることがある。


それは、なぜ、天使が1人の人間にあんなに固執しているのかということだった。



俺を見張っているように、何かにつけて文句を言ったり、注文をしたりする。



いつか絶対に聞いてやると心に誓った。






ある日、夢を見た。



死んでいるのに不思議なもので、まるで生きている時のように夢を見た。



カナの夢だった。


場所は確か、最期にカナとデートをした海辺だと思う。



カナが最期に笑ったのはいつだったろう。




この世に完璧な人間なんていない。



大人になっても、子供でいても、間違いを犯す。



俺の犯した間違いはカナを連れ出した事。


そして“死”に逃げたこと。



死んで償えるなんてきれいごとを考えていた事。



俺はもしかしたらあの時、死んでいるべきだったのかもしれない。


カナじゃなく、俺が。



あの人に守られたこの体を俺は台無しにしてしまった。



本当は生きているべきだったのだ。


生きて、もう一度会いに行くべきだったのだ。



あの時、俺はカナも、両親も、親友も裏切ってあのビルから飛んだ。



自分に言い訳をして。



こんな俺にチャンスを与えた天使の気が知れなかった。



夢はカナの笑顔で終った。






いつの間にか、朝になった。



サチの嫌いな朝だ。



また、いつものようにサチは遅れて登校した。




『何やっているの?』


昼休み、サチが読書をしていると、また天使がやって来た。



天使はサチの隣で日向ぼっこをしていた俺に気付いて飛んできたらしい。


『アタシが何のためにたくさんの自殺者の中からアナタを選んだのか分からないじゃない』



呆れたように溜息を付いて天使は言った。


『(じゃあ、なんでそんなにたくさんの自殺者の中から敢えて俺を選んだんだ? 嫌がらせか?)』


俺は天使に嫌味を言った。


すると、天使は素直に応えてくれた。


『アタシはアナタだったら彼女を任せられると思ったからアナタにしたの。自殺者は皆アナタのような気持ちで死んだ者ばかりじゃない。この世に疲れて亡くなったり、自分の始末もろくにできないで亡くなった者もいる。そうした中途半端な人たちに彼女は任せられない』



天使はまっすぐな瞳で俺を見た。


赤ちゃんのような澄んだ目だった。



俺の心を見透かしているようで、俺は目を逸らした。



『(俺だって同じだ。逃げたんだから)』


俺は目を逸らしたまま言った。



『でも、アナタは優しい。それにあんな高いビルから飛び降りるくらいよ。その勇気をサチにも分けてあげて』



天使は俺の両手を持っておでこに当てながら言った。


長いまつげだなと思った。



『(あ!)』


その時、俺は天使のすがたを見ながらあることを思い付いた。



『(あんた、天使なら何でもできるか?)』


天使は驚いたように目をぱちくりさせた。



『あのね。天使だって万能じゃないの。できることとやってはいけないことだってあるのよ』


困ったように天使は言ったが、俺は試しに聞くだけ聞くことにした。



『(あのさ、サチに俺の姿見せることってできないかな?)』


『サチに?』


天使は聞き返した。


『(ああ。だって、俺はサチの顔とか見れるのに、サチは俺がどういう姿してるのか分からないんだぜ? なんか不安にならないかなって思うじゃん)』



俺の話を聞くと、天使は少し考えるような表情をして言った。



『そうね。このくらいの願い事なら叶えても差し支えないわ。明日、サチが起きたらアナタの姿が見えるようになっているわ』




天使はそう言った。







哲朗がサチに見えるようになったことで、彼らの中になにかまた新しい変化が起きると思います。


次回をお楽しみに。



バイバInBan。