こんにちわ。


InBanです。



今日も早速本題に入りたいと思います。










『19.    精霊』  ②





田舎の夏は都会と違ってさっぱりとした暑さで、けたたましく鳴いているセミの声だってこれだけ広い家にいれば気にならなかった。



俺たちはスイカを食べた後、健一の車であの夕日の見える丘へ行くことにした。



二十分車で走らせて行くと、海の見える街道に差し掛かる。


その近くに車を止め、そこからは歩いていかなければならない。



しばらく歩くと小高い丘に着く。


鎖も柵もなく、うっかり足を踏み外したら海に落っこちてしまいそうな危険があるが、それにも負けずにここへ来るのは、ここから見える夕日がすごくきれいだからだ。



今日は天気が良く、夕日が落ちて行くのをハッキリと見ることができる。



「最高だね。すごくきれい」


健一が夕日に見とれながら、感心したような声を出して言った。


俺は無言で健一の言葉に頷いて、応えながら夕日に見入っていた。



しばらく見とれていた俺はハッと、慌ててデジカメを取り出し、もう半分水平線に隠れた夕日を数枚撮った。


これは春姫のお土産だ。



「今日晴れてよかったな」



帰り、車に戻る途中、ハルカが林の中を散策したいと言い出したので、薄暗くなって雰囲気の出てきた林の中を少し歩く事にした。



夕日を見るためにこの林を歩いた事はあったが、改めて歩くのは初めてだった。



俺も少し興味があったので、ワクワクしていた。



いつまでも続く林の中を行くと、ひとつの祠と数対のお地蔵様を見つけた。


「あれなに?」


ハルカがそのお地蔵様を見て言った。



ハルカに促され、健一が嫌々健一がそのお地蔵様の方へ行くと、その近くに立て掛けてあった看板をライターの火で灯した。



「これ…水子地蔵?って書いてある」


「え?!水子?」


健一が水子地蔵と言い、俺はとっさに春姫のことを思い出した。



近くに行くと、風車や千羽鶴、おもちゃなどがもう枯れてしまっている花と共に供えられていた。



「水子地蔵ってさ、生まれることのできなかった子を弔うために作られてんだよね。なんでこんなところにあるんだろう?」



ハルカもそのお地蔵様を見ながら言った。


「帰ってママ達に聞いてみよう」



ちょうど母親からご飯ができたので帰って来いと言うメールが入ったので帰ることにした。



「ねえ、お母さん。あの林の中にお地蔵様があったんだけど、いつからあんの?」


俺たちの母親は料理が好きなので、ここぞとばかりに料理が出てくる。



何種類もの料理が並ぶなか、大好きなだし巻き卵を食べながらハルカが早速今日あったことを話した。



「お地蔵様?あったかしら?」


「知らないな」



この両親はここに何十年もいるのに知らないらしい…



「トヨばあちゃんなら知ってるかもね」


「ああ。トヨばあちゃんか。今いくつだっけ?」


「確か、今年で八十八歳じゃなかったかしら?」



トヨばあちゃんとは、家の近くに住んでいるおばあちゃんで、八十八歳である高齢にもかかわらず、今でも畑仕事や組合にも積極的に参加しているくらいの元気ばあちゃんだ。



「確かに、トヨばあちゃんなら知らないことはないかもしれない」



ハルカは少し大袈裟に言った。


俺も知りたかった。




次の日、ハルカと俺はトヨばあちゃんの家に昨日のことを聞きに言った。


トヨばあちゃんは昔から良くかわいがってくれていた。


怖い話やおまじないなどを教えてもらった。



夕日の場所もトヨばあちゃんに教えてもらった。



「トヨばあちゃん。あのさ、あの林の中にあるお地蔵様ってなに?」


「あの、お地蔵様かい?」


「何か知ってない?」



「なんで知りたいんだい?確かにあのお地蔵様についての話は色々あるけど」


トヨばあちゃんは自宅で漬けたなすびやキュウリの漬物を出してくれた。


味は昔と変らない。



トヨばあちゃんは二年前に京治おじちゃんを亡くし、今は一人でこの広い家に住んでいる。



しかし、いつもトヨばあちゃんの家には色んな人が遊びに来るので寂しくはないと言っている。



「あそこはね、防空壕だったんだよ。あそこに建てられているお地蔵様はね、その防空壕で不幸にも亡くなってしまった子達の霊を慰めるためにあるんだよ」



まさにトヨばあちゃんの話は、春姫が話していたことだった。


「霊はね、同じ所にしか居られないの。そこで亡くなった者は霊となってそこに留まり、さらには精霊となり、神さまになるんだよ。その地を守る神さまにね」


「道祖神?」



「あら。アツヤ詳しいのね。そう、道祖神って言うんだよ」


トヨばあちゃんの話していることは春姫を知っている俺としてはすごくリアルに聞こえる。



「ばあちゃん、そういう所ってどこにでもあるのも?」


俺がそう質問すると、トヨばあちゃんはそういう所は昔、防空壕だったと言った。


ただ、水子地蔵は今ではあまり知られていないので、置いてある場所はなく、留まる幽霊達は、そこに新しく出来た家などに住みつかzるをえないとも、付け足した。



「じゃあ、アツヤが部屋の中で見た幽霊ってもしかしたらその幽霊だったりして」


ハルカが言った。



俺の住んでいるマンションは、昔、防空壕だった。



だから春姫は俺のマンションに居ざるを得ないのだ。


「アツヤのマンションにはなにかあるのかい?」


「あのね、おばあちゃん。アツヤ最近一人暮らし始めたんだけど、そこに幽霊が出るって話でさ。どうも信じられなかったけど、今、おばあちゃんの話を聞いて信じる気になったよ」



「そうかい。アツヤ。あんたラッキーだよ。そこに住む幽霊は共に暮らす人を守ってくれると言うよ。アツヤは神様と一緒に住んでいるってことになるね」



春姫は神さまと言われるのが好きじゃない!とは言えず、俺は苦笑した。











はい。



今日のトヨばあちゃんの話はここまでです。



アツヤ君は春姫のことを知って、どう感じたでしょうか。



もしかしたらアナタの家にも春姫はいるかもしれませんね。



どこかでお札を探してみてはどうでしょう。




それでは次の章で会いましょう。



バイバInBan。