この頃、眠る時には二胡を聞きながら眠りについています。
最近のお気に入りは、果敢(グゥオガン)さん。
僕が北京の中央音楽学院に居た一年(1990.9-1991.7)、学校に居る時には毎晩学内のホールでコンサートやら発表会やらを聞く事ができたのですが、その中でも一番今でも印象に残っているのは、卒業時や期末に行われた試験の演奏です。
あの当時、多くの学生は出国を目指していました。
出国の為の条件は厳しく、優秀な成績で卒業することやコンクールで優勝する必要があったのです。
彼らにとっては、自分や家族の生活のすべてが掛かった、命がけのような演奏でした。
身震いするような緊張感の中で、ホールの片隅に隠れるように座って聞いていました。
中国の伝統楽器は数多いけれど、その中でもやはりもっとも優しく激しい表演はこの二胡だと思います。
一心一体となった、一瞬に狂おしくすべてを捧げた音色を忘れることはできません。
あの時、名前も知らずに耳にしていた彼らの響きは、今も胸の奥で鳴り響いています。
※果敢さんは、中央音楽学院の出身ではなく沈陽音楽学院の出身。現在はフランスパリ在住。