先週、珍しく風邪をひいて、喉が痛み声が出ず、熱まで出てしまった。
オーバーワークで免疫力が落ちて、多分、寝ゲロした園児の風邪を貰ってしまったのだ。
子供の風邪菌は強力なんだ。
散々頼んだのに、会社は休みをくれなくて、ヘロヘロになりながら働かされ、腹立たしい思いをした。
今日は、やっと休みになり、憂さ晴らしに出かけたいと、長男に運転を頼んだ。
どこか、心身共に、すっきりするところに行きたい。
この季節なら、紅葉狩りの香嵐渓か岐阜県の栗菓子と温泉か、それとも三重県の椿大神社か。
どこにしようと考えていると、長男は迷わず椿大社と言った。
彼は、そこの名物、鶏めしと茶そばセットが大好きなのだ。
名古屋南インターから伊勢湾岸自動車道に乗る。
ふと、「今日は猿に会いそうだなぁ」と呟いた。
秋晴れに木漏れ日が綺麗な椿大社。
願いが叶うと、某タレントが待ち受けにしているという、叶えの滝。
今日は水量が多い。
でも、うてなは、ここで邪気を払う。
今日は、瀬織津姫様を呼んだ。
お陰で心身ともすっきり。
「安定のおいしさだ。」
長男は、鶏めし茶そばセットを、満足そうに食べていた。
うてなが食べきれない分も食べてくれるので、助かる。
「これが、寿司の次に好きな食べ物」なのだそうだ。
安上がりで、これも助かるわ。
その後は、湯の山温泉に行くことにした。
かなり良くなったが、あとほんの少しだけ残っている風邪症状を、温泉に入って、完治させることにしたんだ。
椿大社を後にして、立ち寄り湯の客を受け入れているホテルに向かう。
数年前、その県道沿いにあった温泉が、新名神開通に伴い移転し、アクアイグニスという温泉複合施設ができた。
有名パティシエのケーキ屋や、イタリアンレストラン、苺ハウスや宿泊施設もあり、いつも人であふれかえっている。
でも、うてなは以前の温泉が好きだったし、そこのケーキも特に好きではない。
湯の山温泉に向かう坂道を上ると、目前に、いきなり黒い塊りが飛び出した。
一瞬、猿とは分からず、危うく轢いてしまうところだった。
スピードを落とすと、猿の群れはどんどん車道に出てきて道をふさいだ。
ゆっくりと通り抜けようとするも、こちらを睨み、口を尖らせ吠えながら威嚇してくる。
野生猿は危険だ。
新名神の開通で、彼らのテリトリーが少なからず奪われたのは想像できる。
冬に向けて、山から人里に降りてきたのかもしれない。
出がけに、予知した通りになってしまった。
こんな風に未来を見ることが、時々嫌になることがある。
例えば、先日同僚が流産するのも知っていた。
彼女は、結婚以来、すぐにでも子供が欲しいと言っていたが、一向に懐妊しなかった。
が、先月、結婚記念日にGoto旅行に行くと聞き、うてなはそれが子づくり旅行になると知っていた。
と同時に、それが彼女にとって良い時期でないことも案じていたんだ。
暫くすると、久しぶりに勤務が一緒になり、彼女の妊娠に気づいた。
数日後、彼女は病院で妊娠を確認したらしい。
ところが、祝福しているのに、胸騒ぎを消せなかった。
何かがおかしい。でも、言葉にならない。
とても嫌な気分で、狼狽えた。
こんな不吉な予知など、当たりはしない。
それなのに、こんなことを思うのは不謹慎だと、自分を責めて落ち込んだりもした。
その苦しみを、誰かに理解してもらうこともできないのだ。
うてなは上司に、彼女の勤務地と仕事内容を変更するよう進言した。
折角できた子供を、流産しないようにと心を配ったのだ。
が、残念なことに、「育たなかった」と聞いたのは、一昨日のことだった。
二度の流産を経験しているうてなには、それがどんなに辛いことかよく分かる。
こんな時、いつも思う。
人よりも先に何かを知られるのなら、何とか人の為に役立てたい。
でも、訊かれもしないのに話すことなどあってはならないし、相手だって訊きたくもないだろう。
最近は占いブームだが、占い師に何を言われても、結局は自分で選択するのだから。
人生は選択の連続だ。
流産も、母親と胎児の魂の選択によって起こる。
そして、何一つ無駄な体験はないからこそ、どんな選択をしても良い。
うてなの二度の流産にも意味があった。
母親になるには、そう思える強さと真の自信が不可欠だ。
気弱で、思いを口に出すことが出来なくて、少々依存的な彼女は、無意識に、まだ赤ちゃんを受け入れる準備ができていないと感じていたのかもしれない。
それとも、胎児の魂が、それを選択したのか。
三年後、胎児の魂がまた宿るような気がするなぁ・・・。
ま、確かめようもないけど。
多分、その頃には、彼女は退職していなくなると思うから。
これも予知かしらねぇ・・・・