あの煽るような挿入歌&効果音演出、一回ほっ……とさせてからの逆転登場、いいところまで逃げ切れてしまう主人公、笑えるくらいベタベタの展開でも、あのゾクゾク感と不快感をわざわざ味わおうとは思えないのです。
つまり、怖いものは怖い!
けれど、人生とは無情なもので、気がついたらホラー作品を観ている……ということがごく稀にあります。
なんとか努めて冷静に観ている風を装うために、自分との戦いが始まります。
手始めにツッコミ。心の中でツッコミの先制攻撃ラッシュ……といきたいところですが、いかんせん「事が始まらないことには」ツッコむ隙間がなく、ただの演出や役者さんへの悪態になってしまい、虚しくなることこの上なし。
かと言って「事が始まってしまう」と、もうツッコミどころではなく、自分の手首を握りしめて心拍数を数えるくらいしかできません。
けれど、その「心拍数を数える」という行為は、逆に画面で繰り広げられる虚構と自分の身体に起こる異変をシンクロさせる結果になり、ただただ怖さを増強させるだけだったりします。
そして最終的に辿り着くのは、主演女優さんの歯並びを凝視する戦法。
追い詰められて口を一文字に結ぶ方はいませんからね。
これが意外と、一番現実に戻りやすくていいのです。
歯並びの神秘に気持ちを落ち着かせた瞬間に、大体、ホラーサイドの主役のどアップがきて、その血走った目に全てを持っていかれるんですけどね……。
そういえば、ホラーサイドの主役が私服の女性の場合、高確率でワンピースな気がします。