聞き分けられないほどの声が飛び交う
この世界で

私はいま
何もきこえない

すうっと通り過ぎていく
誰かの声

なにもかもスカスカで
私は透明人間になった

私の体を見つけてください
いや、
私の心を見つけてください

カラッポになった体だけが
歩く
笑う
食べる
寝る

それは生きているといわない


この耳はもっと
生きていた
あなたの声をとらえて
聞き分けていた

この手はもっと
生きていた
あなたの手を握り返す
温かみをもって

この唇はもっと
生きていた
あなたの耳にささやくために
やさしい色をしていた

この魂はもっと
生きていた
あなたのそばにいるだけで
あなたのそばにいるだけで

皮と骨と肉だけのわたし
あなたのまぶたに
私は映る
あの日のままの輝きで