「恋愛ジャンキー」(作詞作曲:AIKO)

 

 aikoは昔、自らを「恋愛ジャンキー」と自称していました。

 

 (「ジャンキー」とは…英語で「junkie」:マリファナ使用者、麻薬中毒者という意味。

そこから、何かに夢中になっている人・熱狂的なファン・何かに過度に執着している人などを指すようになった。ちなみに、aikoのファンはaikoジャンキーと呼ばれる。)

 

彼女は、デビューから一貫して恋愛の歌を約22年間作り続けている女です。

 

 2000年リリース、aiko2枚目のオリジナルアルバム「桜の木の下」(わたしの生後約3週間でリリース)。

今回の『恋愛ジャンキー』は、その中の隠しトラックとして収録されています。

好き!どうにかしてよ!と突っ走る、自己中アンド自己陶酔ソングです。

 

 

サンキューソーマッチ

今日もひたすら涙に溺れる

恋には「シスター!話を聞いて」

アイラブチャーリー

あなたは心の扉破ってあたしの欲望掴む

サンキュー、アイラブチャーリー!のノリの良さが好き。(ライブver.本当にかっこいい!)

いつかあなたが心変わりして、いなくなるのではないか?という不安や、今どこで何している?という心配、そしていつもそばにいることができない寂しさから、泣き暮らす毎日(『愛の病』)。

 

 抑えられない感情を誰かに聞いてほしい、というのを「シスター!」と言ってしまうのも宗教チック。

 

 「心の扉を破る」は、“通常心が求めていい上限”のようなものを超えてしまい、あなたにしてほしいこと・あなたとしたいことで溢れてしまっているイメージ。あなたに心をそのまま片手で鷲掴みにされているような。

 

 

でもたまにはお礼も言いたくなるよ

崖っぷちのピンチのピンチかわす力はあなたがくれた

最初に出てきた「サンキューソーマッチ」はあなたへのメッセージだったとわかる。

ここの「たまには」がよく効いていていい。いつも不安にさせられたり辛い思いをしたりすることが多いけど、まあでもたまには感謝もしているのよ、あなたのおかげよ、と。

きっと彼はのらりくらりとしていて、ピンチが起きてもひょいとかわしてしまうような人なのだろう。

 

aikoの「たまには」と言えば、『be master of life』

あたしもずっと意地も張ってられないから

たまにはそばにいて欲しい

という歌詞がある。これはaikoが友達を思って書いた歌だが、ここでの「たまには」では、素直になることへの照れくささと、また大切な人への深い愛情が感じ取れる。

 

 

気持ち悪いわ 酔いしれて

眠れないのよ うれしくて

失倒しそうよ あなたがいて

いつもそう あたしは恋愛ジャンキー

このサビは本当に天才です!

 あなたが隣にいる夜。“あなたとあたし”に心酔し、ひたすら二人の世界に浸る。その高揚感を倒置法で畳みかけるように歌い上げる。

「あたし」は、陶酔のあまり「気持ち悪い」とまで言ってしまう。

 

(音楽的なことは全然わからないのですが、ここの不安定ながらも段々と高まっていくようなコード進行がめちゃくちゃ気持ちいい!)

 

「失倒する」という言葉はaikoの造語だ。「失神する」と「卒倒する」を組み合わせた意味だと考えられる。(ちなみにaikoは「唇に息がかかるたび倒れてしまいそう」になる女です<『くちびる』より>。)

 

「あたしは恋愛ジャンキー」。そう言い切ってしまう潔さが突き抜けていてよい。フレッシュさに溢れ、ひたすら恋に没頭している。それのどこが悪い!という強気なメッセージ。

 

 

サンキュートゥマッチ!

ロマンチックな真夜中はそうよ

最後にいつも悲劇がいる

アイラブチェーリー

あなたの掌の上放し飼いされてるなんて寂しい...

「!」がつき、盛り上がりを見せる。

 

「最後にいつも悲劇」「掌の上放し飼い」など、彼女は彼にあまり大切にされていないことが窺える。

ロマンチックな夜を過ごしても、あなたの気持ちが完全に自分に向かないことへの悲しみが押し寄せる。彼に夢中になっている彼女と、それを俯瞰する彼。セフレか浮気相手だろうか。

 

 

でも仕方がない事たくさんあるよ

あたし好きなもんは好きだし強引に諦める術も知らない

わたしはこの歌詞が本当に本当に好き。

今までの人生の中で、何か勇気を要する時やつらい時はいつも、「あたし好きなもんは好きだし強引に諦める術も知らない、ってaikoが言ってる」と言い聞かせてきた(重症)。

恋愛は勿論、受験や普段の何気ない瞬間でも、この強気なaikoの言葉に勇気をもらった。この言葉がなかったらできなかったことが幾つもある。

 

あたしが好きなものは好き。好きなことは何も恥ずかしくないのだと、自らの気持ちを肯定し、そのままを認めていい。強引に諦める術を「知らない」。「諦められない」ではなく「諦める選択肢が無い」と豪語している。

 

 

気持ち悪いからすぐに来て

眠れないから抱きしめて

失倒しそうよ早くして

みんなそうあたしも妄想ジャンキー 

 二番のサビ。一番とは打って変わって、ここではあなたがそばにおらず、一人で夜を過ごしている。

 

 すぐに来て、抱きしめて、早くして。笑

あなたがいてもいなくても結局気持ち悪くなってしまう彼女。

 

そして最後の「みんなそうあたしも妄想ジャンキー」という歌詞。

そう、これらの要求は実際に彼にしているものではなく、彼女の中だけで完結している願望に過ぎないのだ。一人で寂しい夜には駆けつけて欲しいし、抱きしめて欲しいけれど、そんな我儘を言えるような関係性ではない。

しかし逆に彼女は、彼が寂しい時にはすぐに駆けつけてしまうのだろう。

 

 aikoという私を遥かに上回る妄想の激しい人に出逢って、実際みんな妄想するよね、別に人間なんだから当たり前だよね、と思えるようになった。妄想ジャンキーという言葉を作ってくれてありがとう。

 

 

でもたまにはお礼も言いたくなるよ

崖っぷちのピンチのピンチかわす力はあなたがくれた

 

気持ち悪いわ 酔いしれて

眠れないのよ  うれしくて

失倒しそうよ あなたがいて

いつもそう あたしは恋愛ジャンキー

 

ジャーーンキーの歌い方が好きです。

アウトロの悲鳴が愛おしいです。

 

 

まとめ

この歌は、人間の欲や恋愛においてのナルシシズムを肯定してくれる。というよりむしろ、「あたしはそれに胸張って堂々と生きていく!」という強いメッセージ性に溢れ、非常にエネルギッシュで清々しい。

 

「追いかけながらも叶わない悲劇のヒロイン」は、全人類が多かれ少なかれどこかで抱えたことのある役回り。それを高らかに歌い上げるaikoの歌唱にもご注目~

https://youtu.be/29irxwvNPL8