ちょっとせのびで、見えた夏



これは私がまだ小学生だった昭和60年のお話である。



あの夏、私は一人で新幹線に乗り、親戚の住む瀬戸内へと向かっていた。
夏休みの一か月間、瀬戸内の小さな島にある叔父さんの家で過ごすためだ。



駅には叔母さんが迎えに来てくれていた。



そこからはバスで移動。
バスはのどかな田舎道を走っていく。



叔父さんの家に着くと、叔父さんとおばあさんが出迎えてくれた。
私が幼いころに会ったことがあったようだが、まったく覚えていなかった。



叔父さんには二人の子どもがいる。
一人は大学生の長女。
非常に独特な口調で話す人だった。



本人が言うには、漫画ねえちゃんと呼ばれているらしい。
本名は教えてもらえなかったので私もそう呼ぶことにした。



もう一人は太陽という名の男の子だ。
私より一つ年上の小学5年生。
彼の部屋で一緒に過ごすことになった。



私はさっそくスケッチブックを取り出すと絵日記を描いた。
この夏の私の日課となる。



絵日記には採取した昆虫の記録もつけることにした。
虫取り網を片手に叔父さんの家の周りを駆け回った。



最初に捕まえたのはベニシジミ。
自然が豊富なこの島には多くの昆虫がいるようだ。



海岸にもたくさんの蝶が飛んでいる。



ここではウラナミシジミを捕まえた。



私は時間の経つのも忘れ、昆虫採集を楽しんだ。



そんな私を叔父さんが迎えに来てくれた。
いつの間にか夕食の時間になっていたようだ。



食卓には家族がそろっていた。
こんなににぎやかな食事は久しぶりだ。



しかし、漫画ねえちゃんの姿はない。
いつも一人で食べているらしい。



夕食を食べ終わると、叔父さんは水軍の話をしてくれた。
かつてこの島にそう呼ばれる人たちがいたというのだ。



海軍や海賊のようなものだと教えてくれた。
そして彼らは莫大な金品をどこかに隠したと叔父さんは言った。



水軍はこの地方の島々に財宝のありかを記した5枚の古地図を隠したそうだ。
私は胸が高鳴った。



この夏の目的が決まった。
古地図を探し出し、財宝を手に入れる。
私はそう意気込んだ。



そうして島に来た最初の一日は終わった。



次の朝、前日の遊び疲れが出たのか、私は寝坊をしてしまった。
早起きしてラジオ体操をするつもりだったのに。



朝食を食べ終わると、太陽がこの島を案内してくれることになった。



そうして連れていかれたのが精霊の木だった。

その大きな木の下に立って頭上に広がった緑の梢を見上げると、そこには夏の風とまぶしい陽光が静かに踊っている世界があった。



私はなぜこの木が精霊の木と呼ばれるのか気になったが、太陽にもその理由は分からないそうだ。



しかし、この島の他の木にはない大きな特徴が精霊の木にはあるらしい。



そう、クワガタやカブトムシが集まるのだ。
子どもだった私にとって、それは何よりも重要なことだった。



その後、島をぐるっと一周した私たちは、最後に海水浴場へとやってきた。
そこで太陽は、隣の島まで泳いでいくことができると自慢した。



私はそれを信じられなかった。
隣島までは結構な距離があるように見えたからだ。



しかし太陽は泳いでいけると強く言った。
我々のライバル心はどんどん高まっていった。
この時、太陽は私にとって最大のライバルとなったのだ。



太陽と別れた私は、一人で島中を探索した。
水軍の古地図を求めてである。
しかし見つかったのは子どもたちの間で大人気だったモンスター消しゴム「モン消し」だけだった。



誰かが置き忘れたものだろうか。
しかし見つけたからには私のものだ。
私はそっとズボンのポケットにしまったのだった。



あっという間に時間は過ぎ、太陽は水平線へと傾いていく。
私は家へと急いだ。



夕食を済ませたボクはお風呂に入ることにしたが、先に漫画ねえちゃんが入っているようだ。
私は断りもせず風呂場へと入っていく。
漫画ねえちゃんは何も言わなかったので、そのまま一緒にお風呂に入った。



風呂から上がった私は精霊の木へ向かった。
辺りは真っ暗だったが怖くはなかった。
それよりもクワガタやカブトムシの方が気になっていたからだ。
そして私は一匹のクワガタを捕まえることができたのだった。



オニクワガタだ。
オニという割には小さい気もするが……
それでも私は嬉しかったことを覚えている。



次の日、私はまた古地図の探索をしていた。
そして桟橋にとまっているボートの上で気になる物を見つけた。



それはガチャガチャのカプセルに入っていた。



取り出してみると、それは地図の切れ端だった。
これが古地図に違いない。



それから別の場所で二枚目の古地図を見つけることができた。
どうやらこの島の地図ようだ。
この島のどこかに財宝が隠されているのだろうか。



私は興奮していた。
もう2枚の古地図を見つけることができたのだ。
その夜は遅くまで古地図を眺めていた。



私の夏はまだ始まったばかりだった。


 


 

前作までは昭和50年が舞台でしたが、シリーズ4作目となる今作は昭和60年が舞台です。
私は年齢的には今作のボクくんの方が近いのですが、あまり感情移入することができませんでした。
今作のボクくんはやたらと生意気なんです。
子ども相手ならそれもいいんですが、大人に対してもそんな感じなんです。
しかし、キン消しならぬモン消し集めや、宝の地図探しや昆虫採集など、懐かしさは今作も健在です。
それだけに主人公の性格が残念でした。


 

【今回紹介したソフト】

 

 

 

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