『約束された場所で』村上春樹 | 閉店SALEがそんなに長いわけがない

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タイトルとは無関係の極私的読書感想文

日本の「社会」に対して公然と破壊行為を仕掛けた宗教団体が引き起こした「地下鉄サリン事件」。その事件を、被害者の視点から捉え直すため、徹底的に被害者たちから一次証言を集めたのが『アンダーグラウンド』でした。同じ事柄でも微妙に異なっている証言からは、現場に居合わせた人間が肌で感じたリアリティーが伝わってきました。

本著『約束された場所で』は、いわばその続編で、事件の首謀者たる宗教団体、つまりは加害者の側にいた信者たちのインタビュー集です。彼らは一連の事の成り行きをどのように見つめていたのか、彼らにとって「あの」宗教団体とは何だったのかを、またしても現場から聞き出そうという試みです。

当然ながら事件に直接関わった幹部に聞けるわけもないので、一般の信者(あるいは元信者)という事になるわけですが、彼らの会話のはしばしからは、団体へのある種のシンパシーというか、特別な体験を共有した者への眼差しの柔らかさを感じ、強い違和感を覚えた。

どことなく言葉が浅いところを上滑りしているような、論理と理屈で塗り固められたフィクションからまだまだ抜け出せていないのだと思った。

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)/村上 春樹