大宮BL小説です。

閲覧ご注意ください。



12  




智『…超、海綺麗なんだよ』

『ほら』



大野さんはそう言うと…

真っ暗な画面を俺に見せた。



和「…なんも見えない…」



智『え、マジか』



和「マジかじゃないよ」


「…なんならアンタすら」
「闇に溶けて見えないし」



和「ホントにアンタ…」



「ちゃんといんの?」



まさか…
アンタが今いる場所は…


ガチで天国、なんてことないよね?



涙声の俺に多分気づいていない。
大野さんは少しも悪びれずこう言った。



智『わりぃわりぃ』

『ちょっと待ってろ』




携帯のライトをオンにしたのだろう。


フッと…
光がさして。


何かが画面を横切った。



一瞬だったけど、見間違えるはずもない。


それは、手。


大野さんの…
細い、長い、男らしい…


大好きな手。



それが見えただけで、何かが込み上げてくる。



智『ほら見えるか?』

『超綺麗な海だろ?』



ゴツゴツとした岩肌の隙間から…
キラッとコバルトブルーが見えた。




綺麗…
かも、しんないけど…



でも。
俺が見たいのは、そんなんじゃない。


俺が今すぐ見たいのは…



智『……かず?』

『見えてっか?』



呑気な大野さんの声が、波の音に溶ける。



不安が押し寄せる。


やだ…


俺の大野さんを…

俺だけの、大野さんを。


どこにも連れていかないで…





黙ったままの俺に…
『かず?』と不思議そうに大野さんが呼びかける。



その瞬間、俺は叫んだ。



和「…ばかっ!!!」



俺は携帯目掛けて、唾を飛ばしながら…
大声で怒鳴った。



和「ばか、ばか、ばかっ!!!」


「なんで俺のそばじゃなくて…」


「なんでそんなとこにいるんだよっ!!」



俺達の声で…
まるで魔法が解けたみたいに。


大野さんを闇から浮かび上がらせる。



携帯の中の大野さんは…
一瞬びっくりした顔をしたけれど。


泣いてる俺に、やっと気づいたのか…
呆れたように、笑っていた。