大宮BL小説です。

閲覧ご注意ください。


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マンションの呼び鈴を連打する。


反応はない。

いつもは決して使わない合鍵を取り出す。


俺は転がるようにして、大野さんの家に入った。




その瞬間にわかる。

主はいない。
大野さんの空気のない部屋。




大野さんの所有物達が、一斉に俺を見て…

「智じゃない」

そう声を上げたみたいに…

そこはよそよそしかった。





釣り…?
釣りに出たの?


急いで釣り道具を確認しに行く。


俺がプレゼントしたお気に入りの竿が、俺を恨めしそうに見た。


クーラーボックスも、タモも…
ライフジャケットも置きっぱなしだった。


…釣りじゃない。



じゃ、どこ…?
宮古島…?


リゾートホテルの建設に伴う書類なんかが置かれている部屋も覗く。

でも…
そもそもノートパソコンが置きっぱなしだった。


宮古島でもなさそうだ。




唯一ないのはいつものポーチ。
携帯やら財布しか入んない、小さなポーチ。


あとお気に入りのキャップと…
俺とお揃いのサンダル。


ただそれだけ。



和「…一体どこ行ったのよ…」



俺はそのままヘナヘナと…
ソファに座り込んだ。



観念して携帯にもコールしてみたけど…
「電波の届かないところにいる」の一点張りで。


電波は俺の思いを大野さんには届けてくれそうになかった。







あの時素直に
「空けられそうなら空ける」
くらいのことを言っておけば…


今頃俺は大野さんと、一緒に時を過ごせていたのかもしれない。



なんならそれこそ今日の休みが取れた時点で…そのことだけでも伝えていれば。


鳴らない携帯と睨めっこするようなことは、なかったかもしれない。



なんで俺はいつもいつも…
後から後悔することばっかり…

そんな自分が情けなくて…
ただただ一人が寂しい。



俺の身体も心も…
大野さんの匂いのするソファに、沈み込んでいくようだった。






*お誕生日なのになんつー寂しい場面…えーん
にのちゃん、ごめんーー泣くうさぎ
必ず幸せにするから、もうちょい頑張ってー💛

お付き合いくださる皆様も…
どうかめげずについてきてくださいー照れ