やばい…
この目はやばいんだって…
どうしようもなく、惹かれる視線。
どうしても、抗えない視線。
俺は慌てて目を逸らし、胸に沈んだ。
和「そんな…」
「とれったってさ…」
ごにょごにょと…
硬い胸板に文句を投げる。
和「簡単に言ってくれるけどさ…」
そんな俺の背中をなぞる指。
道が決まってるみたいに手慣れた様子で背中を滑っていく…
いつもの指が心地良い。
てかこんな…
決定事項みたいな言われ方に、俺はめっぽう弱い。
それを知っててこの人は言ってるんだから。
人畜無害みたいな顔してるけどさ…
意外と策士なんだよな…
和「そもそも…」
「期間はどんくらい?」
智「そうだな…」
ちゅ、と…
俺のつむじを啄ばむ。
俺は首をすくめながら、大野さんの言葉を待った。
智「…よくわかんねぇけど…」
「…一週間くらい?」
予想よりはるかに長い時間に…
思わず素っ頓狂な声を上げた。
和「い、一週間?!」
「長すぎだし!」
和「一日二日ならまだしも…」
「一週間も休んだら…」
「仕事なくなっちゃうよ!」
智「…なくなんねーだろ」
「そんくらい休んだところで」
「そんないい加減な仕事、してねーだろ?」
まぁ…
それはさ?
そうなんだけどさ…
グッと言葉を飲み込んだ俺の、顎の黒子に手を伸ばして…
大野さんは囁いた。
智「なぁ」
「行きてーとこ、あっからさ、おまえと…」
黒子をなぞる、指。
何度も所在を確かめるみたいに、ゆっくり、ゆっくりと…。
智「休み、とれよ…」
その言葉を…
黒子に刻むように。
大野さんは唇を寄せた。
ちゅ…と優しい音が何度も響く。
まるで「これは俺の」と、印をつけるみたいに。